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快傑ライオン丸(49) [ライオン丸・ドラマ5]

今回は、第53話《悲しきタイガージョーの最期・後編》を取りあげます。

【前回までの話は・・・大魔王ゴースンが京の都を襲うと言うウワサを聞き、都近くまでやって来た獅子丸たち三人と錠之介は、突然ドクロ忍者の集団に襲撃される。だが、それを逆手にとって一団に紛れ込んだ錠之介は、ひとりでゴースンを倒そうと秘密基地への潜入を試みるのだった。しかし、錠之介は潜入直前に発見され、ゴースン魔人最後の一人・ガンドドロの攻撃を受けてピンチに立たされていた・・・】

◆『タイガージョー、お前の命はもらった!』

ガンドドロの被っていた毛皮が生き物のように背後からタイガージョーを襲い、身動きが出来ない。四本足のその猛獣の毛皮は、前足で首を、後足で両脚を締め上げて、タイガージョーの動きを完全に封じた。地面に倒れ込んだタイガージョーの上に怪人はまたがり、二本の短剣の鋭い刃先をタイガージョーののど元へ突き刺そうとしていた。

『覚悟はいいか!』

もはやタイガージョーの命は、風前の灯である。だがその時、崖の上からヒカリ丸に乗った獅子丸が現れ、怪人に向かって叫んだ。

『待て、怪人!』
『うっ?・・・おのれ、獅子丸!』

振り向いたガンドドロは、そこに獅子丸の姿を見つけると、ライオン丸の急襲に備えてタイガージョーを締め上げていた生きた毛皮を吸い寄せるように自身の頭上に収めた。獅子丸は崖の上からムササビのように滑空して「忍法獅子変化」を遂げると、ライオン丸となってガンドドロの眼前に立った。

『ライオン丸、見参!』

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一方、毛皮の縛りから解放されて身体が自由になったタイガージョーは、素早く起き上がると、怪人をはさむようにしてライオン丸とは反対の位置に立った。そして、ふたりは宙高く跳び上がると、ライオン飛行斬りとタイガー隼(ハヤブサ)斬りでガンドドロにとどめを刺しに行った。

だが、ふたりの剣でもガンドドロを倒すまでには至らず、深傷を負った怪人は「今日は引き分けということにしておく」と言って、さりげなくライオン丸とタイガージョーのマントに触れて逃げ去ったのだ。

逃げる怪人の後を追おうとするタイガージョーの後ろ姿を見て、ライオン丸は付着しているモノに気付いた。マントに付いているのは、猛獣の爪型爆弾だ。互いに相手のマントにそれが付いていることに気づいた両雄は、自分のマントから爆弾を払い落として事なきを得るのだった。

ゴースンを倒すために力を合わせようと誓った四人は、昨夜の小屋にふたたび集まっていた。獅子丸は、1人で忍び活動をした錠之介を責めるようなことはしない。その成果を錠之介に訊ねた。

『ゴースンは?』
『いた・・・』
『お前ひとりで、やろうと思ったのか?』
『・・・ゴースンは、俺が倒す!』

錠之介の、ゴースンへのむき出しの敵意は解かる。だが、1人で倒せる相手ではないと、獅子丸は言いたかった。だが、そうは言わず、腹ごしらえをしたあとに、錠之介の情報を基に四人でゴースンを探す提案を獅子丸はするのだった。

食事の用意をするために、沙織と小助は小屋を出た。だが、二人はその途中で怪人のワナにかかり、仕掛けられた網に捕らえられてしまう。ワナにかかったのが沙織と小助のふたりだけだったことに怪人はガッカリしたが、仕方なく1人ずつ大木に縛り付けておいた。

しばらくして、ガンドドロは獅子丸をおびき寄せるために、小助の縄を解いて笛を吹かせることを思い着く。言うことを聞かない小助に、怪人は沙織の顔に刃物をちらつかせて、命との交換を迫るのだった。

そんなことになっているとは知らず、錠之介も小屋を出て行こうとする。それを見た獅子丸は、錠之介に「行くのはよせ」とは言わずに、「無理するなよ」と言って静観するのだった。止めても言うことを聞かないことを、獅子丸は知っているからだ。錠之介は微かにほほ笑みを残して、小屋を出て行った。

錠之介は、秘密基地の入口がある河原へと走った。だが、ゴースン基地は川の中にはもう無かった。都に程近い場所へ、それは移動をしていた。巨大な岩山のゴースン基地が、突如として都に近い場所に出現していた。遠くに見える岩山のようなゴースン基地まで錠之介はひた走ると、近くで止まって叫んだ。

『ゴースン、姿を現わせ!』

すると岩山が崩れ出して、中から巨大身変化を遂げたゴースンが錠之介の眼前に現れたのだ。錠之介はタイガージョーに変身すると、巨大ゴースンと対峙した。それはまるでアリがゾウと向き合っているがごとく、体格には大きな差があった。だが、タイガージョーはひるむことなく宙高く跳ぶと、銀砂地の太刀をゴースンの胸の紋様めがけて突き立てて、一直線に向かって飛んだ。

『ゴースン、勝負だ!』

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だが、巨大なゴースンの手に捕まれ、払いのけられて、タイガージョーは地面に叩きつけられてしまう。そして、必殺武器ゴースンサンダーが、タイガージョーの眼帯をしていない方の目に突き刺さった。

『目が・・・目が』

タイガージョーはこれで視力を失ってしまったが、その鋭い動物的な勘でゴースンの居場所を探り、もう一度ゴースンの弱点と言われる胸の紋様に銀砂地の太刀を突きたてようと飛びあがった。だが、ゴースンサンダーが再びタイガージョーを襲い、激しく弾き飛ばされて地面に叩きつけられてしまう。そして今度は、よりによって沙織と小助を捕えているガンドドロのいるあたりへ落下してしまったのだ。

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『ガンドドロよ。裏切り者タイガージョーを殺せ!』
『はっ!』

ゴースンの指令が、ガンドドロへ下った。ガンドドロの銃が、視力を失ったタイガージョーを狙う。ガンドドロは一発目の弾丸をわざと外して、倒れているタイガージョーのすぐ近くに撃った。死への恐怖をあおるためだ。

すると、沙織と目と目で合図した小助は、さっきまで抵抗して吹かなかった笛を吹いた。これによって、獅子丸を乗せた天馬ヒカリ丸がここ(つまり小助のもと)へやって来るのだ。ガンドドロは急いで小助の首を絞め上げたが、もう遅い。獅子丸がやって来る前に、怪人はタイガージョーにとどめを刺すつもりだ。

二発目の弾丸はタイガージョーの剣に当たり、弾かれた。だが、三発目がジョーの左太ももを貫通した。

『フフフフ。楽しみながら、あの世へ送ってやるぜ!』
『ゴースンを倒すまでは、死にたくない・・・』

太刀を杖のように使いながら必死に立ち上がるタイガージョーへ、四発目が右腕に、五発目が左腕に命中した。苦痛と出血でタイガージョーはもう立っていられないほどだったが、最後の力を振り絞ってジャンプすると、自分のマントを怪人にフワリとかぶせて視界を遮り、その上から銀砂地の太刀を怪人の頭部めがけて突き刺した。大木に縛られている沙織と小助がそれを見て、思わず「やった!」と大声をあげた。

フラフラになりながらもタイガージョーは太刀を抜いてからマントを拾って背に羽織ると、同時にうつ伏せに倒れていた怪人が勢いよく起き上がったのだ。怪人は無傷であった。カメが甲羅に首を引っ込めるように、頭部に太刀が突き刺さるより一瞬速く体を下へずらした怪人は、攻撃をかわしていた。立ち上がった怪人は、吠えた。

『ハハハハハ、しぶとい奴め。とどめは、額にくれてやるわ!』

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カシャッという弾丸を装填する音がして、バーンと発射音がすると、タイガージョーの額が血で赤く染まり、身体は反動で大きく後方へ反りかえって仰向けに倒れた。
(終わり)


★★★★★★★★★★★★
再び体調不良により、再開に時間がかかりました。
またよろしくお願いします。

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快傑ライオン丸(50) [ライオン丸・ドラマ5]

今回は、第54話《ライオン丸 最後の死闘・前編》を取りあげます。

原作;うしおそうじ
脚本;田村多津夫
企画;うしおそうじ 別所孝治
音楽;小林亜星
殺陣;渡辺高光
監督;大塚莞爾

【前回までの話は・・・無謀な錠之介の隠密行動のおかげで、ゴースンの本拠地をついに発見した獅子丸たち。しかし、力を合わせて戦うと誓った錠之介が、ここへきて個人行動に走る。1人でゴースン基地へと向かい、巨大ゴースンに挑んだタイガージョーは、ゴースンサンダーを左目に受けて盲目となってしまう。怪人ガンドドロの銃口のまえに盲目のタイガージョー最後の抵抗も及ばず、その額を撃ち抜かれてしまった・・・】

◆ゴースン命令でガンドドロがタイガージョーにとどめを刺し始めた頃、怪人のスキを突いて小助が呼んだ天馬ヒカリ丸は、獅子丸を乗せて小助の元へ激走していた。ヒカリ丸が向かっているその場所がタイガージョーとガンドドロの一騎打ちの場であることを、獅子丸は近づくにつれて次第に気付き始めた。

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だが、遠目に獅子丸の視界に入ったのは、大地に倒れているタイガージョーの姿だった。大の字に倒れたまま動かないタイガージョーの横にヒカリ丸を停めた獅子丸は、飛び降りるとタイガージョーの頭を右手でそっと持ち上げながら、額から出血している錠之介(静かに虎錠之介に戻っている)に向かって話しかけた。

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『しっかりしろ、錠之介!』
『獅子丸か・・・すまない。お前との勝負、預けっぱなしにして、俺だけ先に逝ってしまうなんて』
『これくらいの傷がなんだ!お前もタイガージョーと言われた男じゃないか!』
『いや・・・今度ばかりは応えたぜ。すまぬ、先に逝かせてくれ・・・』

そう言うと、支えていた錠之介の首の力がガクリと抜けて、虎錠之介は息絶えた。

『錠之介・・・錠之介!』

錠之介最期の様子は、離れた所で大木に縛られている沙織と小助にも解かった。二人とも、涙がとめども無く流れた。

『どうやらお別れも終わったようだな、獅子丸。お前もすぐに、あの世へ送ってやるぜ!』

そう言って、カシャッという音がして弾丸が装填され、ガンドドロの銃口は獅子丸を狙い始めた。急いでヒカリ丸の馬体の陰に隠れながら、獅子丸はその場から遠ざかるように逃げた。しかし、ここは荒地で、岩場のように隠れる所が無い。ヒカリ丸をいつまでも壁にするわけにもいかず、ヒカリ丸から離れた獅子丸は完全に無防備な状態になった。

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そのとき、不思議なことが起こった。タイガージョーのマントがひとりでにフワリと宙を飛び、獅子丸の前で大きく広がると壁のように怪人の銃弾から獅子丸を守った。獅子丸はこのマントの陰に隠れて、ライオン丸へ変身を遂げた。

『風よ光よ!・・・ライオン丸、見参!』

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(バックルを付けた太刀を怪人に投げつけるライオン丸)

しかし、ライオン丸になっても、ガンドドロの銃弾を受けてはひとたまりも無い。しかも周囲には、岩場のような隠れ場所が全く無い。相手から見て死角になるような窪地を探すと、ライオン丸はそこへ伏せて身を隠した。そして、ベルトからライオンバックルを外すと、それを太刀の握り部分へ取り付けて怪人の手元を狙って投げつけた。バックルを脳波で操るライオン丸。

投げられたバックル付きの太刀は、刃先の部分から突っ込むように怪人に向かって飛んで行き、そして正確に怪人の握っている銃を弾き飛ばすと、ブーメランのようにライオン丸の許へ戻って来た。バックルをベルトへ装着すると、ライオン丸は太刀を持って高く跳躍し、飛び道具を持たない怪人に斬りかかった。

だが、怪人はベルトに下げていた二本の短剣を取り出すと、ライオン丸に応戦した。怪力の怪人と二回三回と互いの剣を交えて戦ううち、ライオン丸は崖側に追い詰められ、数十メートル下へ転落してしまう。落下した衝撃で朽ちた大木に左足を突っ込み、足を挟まれたまま動けないでいるライオン丸を、崖上で銃を拾ったガンドドロの銃口が狙いを定めた。

ところが、ここでまた奇跡が起こる。錠之介の心が乗り移ったかのようにタイガージョーのマントがフワリと再び飛んで来て、視界を遮る様にガンドドロの上から覆いかぶさった。ガンドドロがそのマントを払いのけるまでのわずかの間にライオン丸は朽木から足を外すと、宙高く跳んで一回転し、ガンドドロのすぐ後ろへ回り込んだ。そして、「タイガージョーのかたき!」と叫びながら、マントを払いのけたガンドドロの背中から腹へ向けて太刀を突き刺した。

『ううう・・・』

ライオン丸が太刀を抜くと、致命傷を負ったガンドドロは低い唸り声を上げながら前方へ雪崩る様に倒れた。ところが、怪人の背からはがれるようにして影法師(真っ黒な人影)が分離し、生きた毛皮を背負ったまま逃走しようとした。

『正義の心、えいっ!』

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右手を自分の胸に当てたライオン丸は、走って逃げていく影法師に向けて右の手のひらをかざした。すると、赤い炎のようなライオン丸の「正義の心」が怪人の影法師に向かって飛んで行き、背中にピタリと貼り付いた。影法師は狂ったように数回回転してから倒れ、破裂した。タイガージョー(のマント)に二度助けられながら、ライオン丸はこの怪人をついに倒した。

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錠之介の仮の墓は、清流が流れる河原から少し離れた所に大小の石をたくさん積みあげ、その中央に銀砂地の太刀を立てて作った。獅子丸は無言で遠くの空を見上げ、沙織は涙を流しながら両手を合わせて墓を拝むと、こう言った。

『ゴースンを倒したら、錠之介さんも飛騨へ連れて帰りましょう』
『うん。小助、涙を拭くんだ』

沙織の言葉に振り返った獅子丸が、小助に元気を出すように促した。錠之介と一番馬が合っていたのは、小助だった。

『オイラ、泣いちゃいないさ。これ、形見にもらっていくからね』

そう言って、流れる涙を拭うこともせずに小助が懐から取り出したものは、眼帯だった。

(ナレーション;錠之介は死んだ。獅子丸たちとの間に生まれた不思議な友情の糸が、今ぷつんと切れた。だが三人に、いつまでも友の死を悲しんでいる時は無かった。なぜなら、ゴースンが再び立ち上がっていたからである)

三人は、都を目指して岩山を登っていた。ここを登り切れば、都が見えるはずだ。頂上へ着いた三人の眼前に、京の街並みが一望できた。感激の笑みが、三人の顔に浮かんでいた。だがこの感激に、いつまでも浸っている暇は無い。下り傾斜の続く道をひたすら早足で歩く三人の目に、巨大なゴースンが都の中心部へ向かって歩いていく姿が映った。

『沙織、小助、行くぞ!』
(つづく)


★★★★★★★★★★★★

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快傑ライオン丸(51・終) [ライオン丸・ドラマ5]

今回は、第54話《ライオン丸 最後の死闘・後編》を取りあげます。

【前回までの話は・・・タイガージョーの命を奪った怪人ガンドドロを、錠之介の心が乗り移ったマントに助けられながら倒した獅子丸。これで錠之介の仇は討った。三人は錠之介の仮の墓を作って弔いを済ますと、本当の敵ゴースンを倒すために、京の都へと急いだ。その途中で、三人は都へ向かう巨大ゴースンの姿を発見する・・・】

◆最後のゴースン魔人を倒し、残っているのはゴースンひとり。だが、この最大の敵をどのように倒せばいいのか、獅子丸はその手段を見つけ出せないでいた。だが、立ち止まって考えている時間は無い。獅子丸は、ゴースンの姿を見つけると走った。沙織と小助も、あとに続いた。

ゴースンは、寺院の横で何かをしようとしている様子である。獅子丸はその寺院の近くまで走ると、ゴースンに向かって叫んだ。

『ゴースン、正義の太刀を受けてみよ!』
『小童(こわっぱ)、邪魔立てすると容赦はせぬぞ!』

獅子丸は渾身の力を込めて、忍法獅子変化の呪文を唱えた。すると、ゴースンは口から火炎を吐いて、獅子丸に襲いかかった。だが、ゴースンを倒すという獅子丸の強い信念は、金砂地の太刀に乗り移った師匠・果心居士の力を導き、ゴースンの火炎をバリアのようにはね返してしまう。

『ライオン丸、見参!』

高く跳躍したライオン丸は、そのままグライダーのように滑空しながらゴースンに近づき、その右胸を金砂地の太刀で突き刺した。しかしゴースンは、その巨大な手のひらでライオン丸を簡単に払い落としてしまう。だが、まだ余力があるライオン丸は、もう一度態勢を立て直して、ゴースンめがけて飛び立った。

『くたばれ、ライオン丸!』

飛行してくるライオン丸の頭上へ、ゴースンはゴースンサンダーを見舞った。強烈な電流が身体を貫き、あっという間に落下していくライオン丸。為すすべもなくライオン丸は、ゴースンとの勝負に三度敗れた。

獅子丸の姿でフラフラと歩いているところを、あとから追いかけてきた沙織と小助が発見した。空き小屋を見つけて急いで獅子丸を運ぶと、ふたりは懸命に獅子丸を看病した。だが、なかなか意識が回復せず、獅子丸は時々うなされているようだった。

錠之介の死によってゴースンへの怒りがいっそう強まり、早くゴースンを倒してしまいたいという獅子丸の焦りは、沙織もよく理解していた。だが、その結果、無理な行動が獅子丸の命取りになることを、沙織は何よりも恐れた。

沙織と小助の心に、その時同じ考えが浮かんでいた。顔を見合わせた二人は、すぐに小屋を出て行こうとした。だがその前に、果心居士からもらった笛を小助は自分の胸の前に掲げて、獅子丸の為に祈った。

『お師匠様。どうか獅子丸兄ちゃんをお守りください』

その頃、巨大ゴースンは、ジャラモン教の教主・ゴーファ・ジャラモンへ誓いを立てる儀式を行っていた。寺院の横でゴースンは、両腕を胸の前で合わせて、大地に片膝をついたまま拝むような姿勢で、呪文を唱えていた。

沙織と小助の目的は、ゴースンを倒すこと。いや、倒せないまでも傷を負わせることが出来れば、と思っている。二人はゴースンを発見すると、予定通りの作業に取り掛かった。

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火薬の扱いが得意な小助が作った特製爆弾は、ボーリングのボール程の大きさだ。それを沙織が一つ、小助が二つ抱えて走りだすと、一心に呪文を唱える巨大ゴースンの足元付近まで密かに近づいて行く。そして、爆弾を三つ置いたあと導火線となる火薬を撒いておき、爆弾と導火線の接点に手裏剣を一つ刺しておく。自分達が爆発に巻き込まれないよう、安全な場所まで急いで退散したら準備完了だ。

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(呪文を唱えてジャラモンへ誓いの儀式をしているゴースン)
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(爆弾は爆発し、作戦は成功したか!?)

ゴースンは、この仕掛けに全く気付いていない様子だ。沙織は爆弾近くの手裏剣を狙って、手元の手裏剣を投げた。見事に当たった手裏剣から火花が散って火薬に引火し、三つの爆弾は大爆発を起こした。あれだけの量の火薬が爆発したため、ふたりが隠れていた寺の山門が地響きを立てて揺れた。沙織は慎重に周囲の様子をうかがい、ゴースンの姿が無いことを確認する。

『やったぜ!ゴースンをやっつけたんだ、お姉ちゃん!』

だが、喜ぶのは早急だった。山門の屋根の上から、覆うように巨大なゴースンの顔がふたりを覗き込んでいた。

『くたばれ、小童(こわっぱ)ども!』

いきなりゴースンサンダーが山門を直撃して、寺院は大破した。懸命に走って逃げるふたりの頭上に雨のように大小のガレキが降り注ぎ、小助の頭に何かが当たった。

その頃、空き小屋では、獅子丸が意識を回復していた。枕元に置いてあった小助の笛を見て、獅子丸はふたりの行動の見当がついていた。まだ完全には回復してない体で小屋の外へ出ると、怪我をした沙織が意識の無い小助を背負って歩いてくる姿が、獅子丸の目に映った。

沙織は獅子丸の姿を見ると安心したのか、気を失ってその場で倒れてしまった。夜になって沙織が回復すると、沙織はまず獅子丸に謝った。

『そりゃあ、ゴースンを倒せるとは思わなかったわ。でも、少しでも手傷を負わせることが出来ればと・・・ごめんなさい』

沙織の気持ちが痛い程解かる獅子丸は、ふたりが無事に戻って来ただけで良いと、怒ることはしなかった。すると、気を失っていた小助が、ようやく目を覚ました。

『気がついたか、小助』
『チクショウ!オイラ、気を失っていたのか!よし、今度こそ!』

刀を差して出て行こうとする小助に、獅子丸は声を掛けた。

『よせ、小助。お前、死んでしまうぞ!』
『オイラ、死ぬことなんかヘッチャラだい!』
『小助、今何て言った?!』
『死んだってヘッチャラだって、言ったのさ。ゴースンを倒して死ねるならね!』

突然カミナリに撃たれたような衝撃を、獅子丸は覚えた。小助が言った何気ないひと言に、ゴースンを倒す手段を見いだした獅子丸。そうとは知らずに、沙織は母親のように小助をいたわり、夜だから寝るように勧めるのだった。

翌早朝。二人がまだ寝ている時刻に密かに小屋を抜け出した獅子丸は、滝行(たきぎょう)をしながら精神統一をしていた。滝に打たれながら、心の中で師匠・果心居士と会話をする獅子丸。(お師匠さま。どうしたら勝てるのか、そればかり考えていた獅子丸をお笑いください。夕べ、小助に教えられました)

大岩の上で座禅を組んで大自然に触れ、自然体となって自分の心と向き合う獅子丸。(死のう。ゴースンを倒すために・・・私は死のう)

遥か彼方の山々を眺望できる崖の上に立って大空を見上げていると、空の高みから亡き果心居士が自分に語りかけているのを獅子丸は感じた。

《頼むぞ、獅子丸!》

獅子丸はそれにうなずくと、心は決まった。小屋へ戻って来た獅子丸の手には、一輪の花があった。それは、故郷・飛騨の山奥に咲いていたのと同じ黄色い花であった。

『沙織、小助、この花を見て、何か思い出さないか?』

問いの答えを聞いて三人の脳裏に浮かんだ光景は、黄色い花が一面に咲く飛騨で、在りし日の果心居士と過ごした平和な日々であった。

食事を終えた昼下がり。三人は昼寝をしている。だが、獅子丸は静かに立ち上がると、振り返って二人を見ながら心の中で思った。(小助、今のままでいい。強く生きるんだ。沙織、お師匠様の弔いを頼むよ。錠之介も、そばに置いてやってくれ)

小屋から出る時に持って来た小助の笛を吹いて、獅子丸は天馬ヒカリ丸を呼んだ。そして、背中の金砂地の太刀だけを持ち、腰の太刀と小助の笛を木に立てかけて置いておく。獅子丸はヒカリ丸に乗ると、ゴースンの元へ向かった。

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目を覚ました小助は、獅子丸がいないことに気づいて沙織を起こした。二人はすぐに小屋の外へ出ると、獅子丸を探した。そして、木に立てかけてある笛と太刀を見つける。

『獅子丸さん、死ぬ気だわ!』

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巨大ゴースンは自分の力を誇示するように足で家々を踏みつけ、時々口から火炎を吐いて町を焼き払いながら破壊を続けた。人々は家財道具を持って、ただ逃げ惑うだけであった。そこへ、ヒカリ丸に乗った獅子丸が現れた。

『来たな、獅子丸!今日こそあの世へ送ってやる!』
『行くぞ、ゴースン!』

ゴースンを前にして、獅子丸はヒカリ丸の鞍に立つと、宙高く跳び上がったまま素早く変身を遂げた。

『ライオン丸、見参!』

そして、そのまま真っ直ぐにゴースンの口の中めがけて飛行していく。ゴースンは向かって来るライオン丸に狙いを定め、ゴースンサンダーを撃ち込んだ。だが、金砂地の太刀でゴースンサンダーをはね返したライオン丸は、ゴースンの目がくらんだ瞬間に開いた口の中へ飛び込んだ。

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ゴースンの体内へ飛び込んだライオン丸は、滑り台を滑るように下へ転がり落ちていく。やがて、「ドクン、ドクン」と大きな音を立てて動いている赤い巨大な臓器を発見する。大きく揺れる不安定な足元で、この赤い臓器を左手でつかむと、右手でクルリと太刀の柄を回して刃先を下へ向けてから、両手を使って思いきり突き刺した。

『ゴースン、土に返れ!』
『うゎーっ!』

叫び声をあげて、激しく苦しむゴースン。胸の紋様がひび割れ、ゴースンの体は今にも破裂しそうであった。そして、「さらば」と告げたあと金砂地の太刀が三回四回とまばゆく発光して、大魔王ゴースンの体は大音響と共に砕け散った。ゴースンの体内で、ライオン丸は自爆したのだ。

大音響と共に起こった大爆発は、獅子丸を探す沙織と小助がいるこの丘からも見えた。たなびく黒煙と散乱している破片を、呆然として見つめる沙織と小助。それはゴースンの最期に間違いなく、同時に獅子丸の最期でもあった。獅子丸の名を叫ぶ、沙織と小助。小助は肩を落として、沙織の胸で泣き叫んだ。

『お姉ちゃん・・・獅子丸兄ちゃん、死んじゃった!』

涙がとめども無く流れる沙織の目に、ふと見上げた大空を天馬ヒカリ丸の形をした雲が空高く昇っていくのが見えた。

『小助ちゃん。獅子丸さん、空へ返って行ったのよ・・・』
『うん。お師匠様の所へ行ったんだね・・・』

(ナレーション;恐るべき悪の化身・大魔王ゴースンを完全に葬り、獅子丸はヒカリ丸と一緒に、今大空へ返っていく。沙織と小助は飛騨へ帰り、その胸にいつまでも獅子丸は生きていた)

(完)


★★★★★★★★★★★★
お読みいただき、ありがとうございました。

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