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快傑ライオン丸(1) [ライオン丸・ドラマ1]

快傑ライオン丸は、1972年(昭和47年)4月1日から全54回に渡って放送されたピー・プロダクション製作の特撮テレビ番組である。前年から放送されてきた同社製作による特撮番組「スペクトルマン」の後番組として始まった。初の主演となった潮哲也氏は、撮影中に骨折をしながらも吹き替え無しで獅子丸役のアクションを演じきった。又、同氏はこの時の共演がきっかけで、のちに沙織役の九条亜希子氏と結婚している。

今回は、第1話《魔王の使者オロチ・前編》を取りあげます。

原作;うしおそうじ
脚本;高久 進
企画;うしおそうじ 別所孝治
音楽;小林亜星
殺陣;渡辺高光
特撮監督;矢島信男
監督;石黒光一

◆群雄割拠の戦国時代。多くの人々は戦乱に巻き込まれて家を失い、子供たちは親を失った。ここ飛騨の山奥にも、三人の戦乱の孤児たちがいた。しかし、彼等はまだしも幸せである。なぜなら、彼等は日本最高の忍者・果心居士に拾われ、今日まで育てられてきたからである。

一番年上の獅子丸は、立派な青年忍者に成長していた。そして、女忍者・沙織は年の頃は、16~17歳。少年忍者・小助はまだまだ心も身体も未熟な7~8歳程。いま、師匠・果心居士の元で厳しい修行をしてきた彼等と果心居士に、危機が迫っていた。

飛騨の山奥の村に、突如襲ってきた忍者の集団がいた。村人を次々に切り殺していく黒い装束の集団。その様子を見かけた獅子丸と小助は、その忍者集団に向かって切りかかって行った。青年忍者獅子丸の腕は確かで、忍者集団の数人が切り殺されると、残りの者たちは逃げ去ってしまった。死んで伏せている忍者の顔を上に向けた小助は、大声で獅子丸を呼んだ。

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『獅子丸兄ちゃん、見て!ドクロの忍者だよ!』

獅子丸たち三人は、果心居士と共に山奥の小屋で生活をしていた。その山小屋へ向かう道を行く、ひとりの騎馬武者がいた。獅子丸は矢を射て馬を止めると、その武者に用向きを訊ねるのだった。

『果心居士殿に、話がある。案内されたい』

獅子丸は、その武者を果心居士に会わせるべく、小屋へと案内した。武者は織田家の家臣だと自己紹介して、敵の今川がドクロの忍者を暗躍させ、織田家の滅亡を謀っていると言った。果心居士と織田の家臣との会話を、真剣な表情で聞いている獅子丸、沙織、小助。

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『ドクロの忍者を倒せるのは、インドはジャラモンの妖術を会得された、果心居士をおいて他にはござらん』
『断る・・・』

『何と申される?・・・断る理由を申されい!』
『ぬしが織田家の使いとは、真っ赤なウソ。ぬしがここへ来た理由は、この果心居士の暗殺であろう!』

すると、織田家の家臣を名乗る武者は、いきなり果心居士に切りかかった。だが、それより一瞬早く、獅子丸の太刀が武者に切り込んでいた。武者を切った獅子丸の目は、天井付近を向いていた。

なんと果心居士は素早く飛び上がって、梁(はり)*の上に身を乗せて安全を確保していたのである。獅子丸と目が合った果心居士は、「よくやった」と言うように一つうなずいた。
*上部の重みを支えるための水平に架けた木材。天井板が無い家屋では、梁が丸見えである

小助が武者の姿を見て、大声をあげた。死んだ武者は、ドクロ面の忍者に変身していた。果心居士は、つぶやいた。

『ついに来たか・・・』
『ついに来た、とは?』

果心居士の言葉を受けて、沙織が不思議そうに訊ねた。

『大魔王ゴースンじゃ』
『ダイマオウ・ゴースン?』

『そうじゃ。ヒマラヤの山中に百年の間立てこもり、あらゆる悪の妖術を身に付けた大魔王ゴースン。ヤツが遂に、日本へ来たのじゃ』

初めて聞く大魔王ゴースンの話に獅子丸と沙織は驚き、果心居士の話ぶりから、ゴースンが恐ろしい敵であることを二人は察した。その頃、日本近海の断崖絶壁の島に、日本征服の本拠地を置いた大魔王ゴースンは、多くの手下たちをそこに集めて言った。

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『大魔王ゴースンは、この日本に暗黒の世界を造り上げるのだ。大魔王ゴースンに刃向かう者は、容赦なく命を断て!地獄の使者たちよ!人間どもの血を、すべて我が祭壇に備えるのだ!そのためには、まず果心居士を倒すのだ!ヤツがいては、我が野望もままならぬ!』

送りこんだ刺客が果心居士の暗殺に失敗したことを知り、大魔王ゴースンは手下のオロチに命令を下した。

『オロチよ、行け!必ず果心居士を倒して参れ!』
『デボ、ノバ!』(解かりましたという合言葉)

その日の夜、果心居士の山小屋では、果心居士が三人に形見分けをしていた。獅子丸に向かって、果心居士は言った。

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『思えば十数年。そなたはワシが教えた忍法をことごとくよく身に付け、大きく成長した。うれしく思うぞ・・・この太刀をそなたにやろう。今日からは、この太刀をワシと思うがよい』

「金砂地の太刀」と呼ばれる太刀を果心居士から授かった獅子丸。隣にいた小助がその太刀をじっと見て、不思議なことに気がついた。

『オッ師匠様。クサリで繋がっていては、抜けないじゃないか!』

穏やかな表情の果心居士は、質問に対する答えを小助にしながら、その実、獅子丸に言い聞かせていた。

『獅子丸がのう、忍法・獅子変化(ししへんげ)を開眼した時、初めてこのクサリが切れるのじゃ』

続けて果心居士は、沙織に小太刀を授けて言った。

『そなたには、これを与えよう。この刀は、そなたに男に負けぬ力を与えてくれよう。ただし、女としての心に優しさを、決して忘れてはならぬぞ』
『はい・・・』

ふたりのように、自分も太刀がほしいと思う小助は尋ねた。

『オッ師匠様、おいらには何をくれるんだい?』

『小助には、ワシの魂をやろう』
『魂?ヤダい、そんなもん。おいらも刀が欲しいや』
『そなたが危うくなった時、これを吹け。ワシの魂を呼ぶのじゃ!』

そう言って果心居士は、横笛を小助に授けた。果心居士の言う言葉の意味が、小助には解からない。だが、大切なものを頂いたことだけは、小助にも理解できた。獅子丸と沙織にも、この言葉の意味するところは解からなかった。

最後にこれだけは言っておかねばならないと思うことを、果心居士は三人に話そうとしている。

『今日からはワシを頼ることなく、大魔王ゴースンを倒すために生きるのじゃ。ワシも、いよいよ寿命が来たようじゃ・・・』

するとその時、トントンという音がして、山小屋に火矢(火の焚かれた矢)数本が突き刺さった。開けていた窓やトビラから手を出して火を消すと、すぐにそれらを閉めて臨戦態勢を取る獅子丸たち三人。果心居士は慌てること無く囲炉裏のそばに腰を据えると、叫ぶように言った。

『日ごろ鍛えた腕を、見せい!』

山小屋を襲撃したのは、オロチとドクロ忍者たちであった。火矢が次々と打ちこまれ、木材でできた小屋には火が回っていく。トビラを開けてドクロ忍者たちがなだれ込もうとしていた。狭い小屋から出て、懸命に太刀を振るって応戦する獅子丸と沙織。小助も持っている小太刀で応戦していると、果心居士からもらった笛が無いことに気付いた。

山小屋には、かなり火が回っていた。中へ入ろうとする小助を、獅子丸は制止した。だが、小助にとって、命の次に大事な笛だ。火の中へ飛び込み、笛を見つけてそれをつかんだ小助。そのすぐ先に、目を閉じたまま正座している果心居士がいた。

『オッ師匠様!』

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叫ぶ小助。だが、熱と煙のために、小助は気を失ってしまう。それを見た果心居士は、妖術を使って炎を一時的に消し去り、気を失ったままの小助を夢遊病者のように歩かせて、小屋の外へと連れ出すのだった。

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その様子を外で見ていたオロチは、自分の武器である三日月型のカマをブーメランのように飛ばして、果心居士に一撃を加えた。果心居士が死んだことを見届けたオロチとドクロ忍者たちは、土の中へ姿を消してしまうのだった。山小屋は炎に包まれ、やがて燃え堕ちた。(つづく)


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スペクトルマンの後番組として企画された当初は、時代劇ではなかったそうである。ライオンマン」という仮名であった。

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http://ztonbaltan.blog.so-net.ne.jp/archive/c2306139757-1


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快傑ライオン丸(2) [ライオン丸・ドラマ1]

今回は、第1話《魔王の使者オロチ・後編》を取りあげます。


【前回までの話は・・・ 戦国時代、戦争に巻き込まれて両親を亡くした子供たちがたくさんいた。獅子丸、沙織、小助の三人も、そんな戦争孤児だった。だが、果心居士に拾われた三人は十数年の厳しい修行に耐え、様々な忍術を身に付けて成長した。寿命を察した果心居士は自分の形見分けを三人にしたその直後、日本征服を狙う大魔王ゴースンの手下オロチによって命を奪われてしまうのだった・・・】

◆果心居士と獅子丸たちが住む山小屋に、大魔王ゴースンの手下オロチが襲撃して来た。山小屋は炎に包まれ、気を失っていた小助を助けようとした果心居士は妖術を使って小助を逃がすと、そのまま炎の中に倒れた。闇夜の中に、燃え盛る炎の色で照らしだされた獅子丸と沙織の顔に、涙がほおを伝って流れ落ちた。

翌朝。意識を回復した小助は、果心居士の死を獅子丸に聞かされ、大声で泣いた。幼い小助にとって、師であり父でもあった果心居士との突然の別れは、あまりに悲しすぎた。沙織と獅子丸は簡単な供養塔を作ると、それに向かって手を合わせた。獅子丸は小助に言った。

『これしきのことで泣いては、弱すぎる。我らが行く手には、想像を絶する苦難が待ち受けている。俺は大魔王ゴースンを倒すまでは、オッ師匠様の弔いは出さない!』

飛騨の山奥をあとにして、大魔王ゴースンを倒す旅に出発する獅子丸たち三人。それは、師匠・果心居士の命(言いつけ)でもあるのだ。その頃、孤島にある大魔王ゴースンのアジトでは、手下たちにゴースンが命令を出していた。

『果心居士を倒し、日本の征服はたやすくなった。皆の者!直ちに日本全国に散り、国中を戦乱と憎しみのルツボに叩き込め!そして、オロチよ。お前は果心居士の弟子たち三人を、叩き殺してくるのだ!』

一番年少の小助に、獅子丸は言い聞かせるように話す。

『いいか、小助。今日からこの三人は本当の兄妹となって、力を合わせて生きていくのだ!』
『そして、オッ師匠様の夢を果たすのよ』(沙織)


突然、黒煙を吐き出しながら、何かが空を飛んで獅子丸たち一行の目の前に降りてきた。

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『貴様は昨夜の!』(獅子丸)
『名をオロチという。ゴースン様のご命令により、お前達の命をもらい受ける!デボノバ!』

オロチの指示で隠れていたドクロ忍者たちが一斉に現れ、獅子丸たちを囲んだ。獅子丸はオロチに、小太刀を抜いた沙織は小助と共にドクロ忍者たちに、挑んでいった。

オロチは、果心居士の命を奪った三日月型のカマ(半月刀)を振り回して、獅子丸に襲いかかった。沙織の小太刀は、果心居士が言うように、男に負けない力を沙織に与えた。だが、ドクロ忍者は、一人倒せば三人増えるかのように、倒しても倒しても減らない。

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沙織がドクロ忍者に囲まれてしまったところを見た獅子丸に、一瞬の隙ができた。オロチはそこを見逃さず、半月刀を獅子丸目がけて投げ飛ばした。獅子丸はそれを避けたものの、うしろが崖であったため、崖下へ転落してしまうのだった。

その様子を見た小助は、自分が乗れるほどの大きさに木の枝を斬り落とすと、それを尻の下に敷いて崖を滑り降りて行った。気絶している獅子丸の元へ行き、揺り起こしたがまったく起きない。最大のピンチに立たされた小助は、オッ師匠様の言葉を思い出した。(この笛を吹いて、ワシの魂を呼ぶのじゃ)

『そうだ!』

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小助は、果心居士からもらった形見の笛を吹いた。すると、不思議な音色に誘われるように空の彼方から天馬が駈け下りてきて、小助の方に向かってやってくるではないか!驚いたオロチとドクロ忍者たちは、捕らえた沙織を連れて姿を消してしまった。

小助の笛の音で意識を取り戻した獅子丸は、目の前の白い天馬ヒカリ丸に小助を乗せ、自分はその後ろにまたがって、手綱を引いてオロチのあとを追った。獅子丸の掛け声に合わせてヒカリ丸は大きなツバサを広げると、二人を乗せたまま大空を滑空した。小助が思わず叫んだ。

『わぁーい、飛んだ!』

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岩場にある処刑場で磔柱(はりつけばしら)に縛られた沙織を、空から発見した二人。今まさに処刑されようとしている沙織の元へ、ヒカリ丸を獅子丸は急降下させた。急襲され驚くドクロ忍者たちの間隙を衝いて、獅子丸は沙織の両足を縛っていたヒモを切った。

ヒカリ丸から降りた小助が、沙織に小太刀を渡す。獅子丸たち三人に、次々と斬られていくドクロ忍者たち。沙織の処刑場は、一転してドクロ忍者の墓場に変わっていった。獅子丸の前に、オロチが立ちはだかった。獅子丸は、仇(かたき)であるオロチに向かって言った。

『オッ師匠様を、なぜ殺した!』
『ヤツが邪魔だからだ。これからも、邪魔なヤツは容赦なく殺す!』

オロチは、口から炎を吐いて反撃して来た。炎を避けるべく、獅子丸は巨岩の陰に身を隠すと、両手を顔の前で交差させるようにして、呪文を唱えた。

『風よ!光よ!・・・』

すると、背負っている金砂地の太刀のクサリが外れ、太刀が抜けるようになった。忍法・獅子変化(ししへんげ)開眼のときであった。太刀を抜き、顔の前で十字を切る様に太刀を動かして呪文を唱える獅子丸は、全身が発光して白獅子・ライオン丸へと姿を変えた。

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『忍法、獅子変化!・・・ライオン丸、見参!』

驚いたのは、沙織と小助であった。初めて見る獅子丸の変化(へんげ)の姿。オロチは半月刀を持ち直して身構え、ドクロ忍者たちも身構えるのであった。

ライオン丸の剣の動きは、ドクロ忍者たちが止まって見えるほどに速い。あっという間にドクロ忍者たちは斬り倒され、残るのはオロチただ一人となった。オロチは突然、土の中へ潜ってしまった。だが、逃げたわけではない。地面のどこから出てくるか分らないオロチに、ライオン丸は警戒した。

ライオン丸の立つ真後ろの地中から、飛び出すように現れたオロチを、ライオン丸は一瞬早く捉え、頭部に一撃を浴びせた。だが、斬ったオロチの頭部は、作りものであった。本体はもっと小さな真っ黒いヘビのような形をしており、体内に潜んでいた。

真っ黒いヘビは倒れた自分の体内から飛び出すと、ライオン丸の周囲を2回ほど飛び回り、地面に着地して爆発、その本性を現した。

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『デボノバ!』

オロチは、半月刀を持ってライオン丸に向かって来る。ライオン丸も金砂地の太刀を振りかざしながら、向かって行く。両者は飛び上がって空中で斬り合いとなったが、一瞬早くライオン丸の太刀がオロチを捉えていた。名付けて、ライオン飛行斬り。

ライオン丸の方を振り向いたオロチだが、そのままバタリと倒れて爆発した。勝負が付いたことを知ったのか、果心居士の魂・ヒカリ丸は天へ帰って行った。獅子丸は、沙織・小助と共に夕陽に向かって報告と誓いをした。

『オッ師匠様。遂に、忍法・獅子変化を会得しました。必ずや三人の手で、憎きゴースンを倒してお目にかけます・・・』 (終わり)


★★★★★★★★★★★★
ライオン丸が金砂地の太刀を鞘へ納め、獅子変化を解いてしまうと、金砂地の太刀のクサリは元通りに繋がれた状態になってしまう。不思議な太刀である。

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快傑ライオン丸(3) [ライオン丸・ドラマ1]

今回は、第3話《魔の森 わくらんば・前編》を取りあげます。

原作;うしおそうじ
脚本;田村多津夫
企画;うしおそうじ 別所孝治
音楽;小林亜星
殺陣;渡辺高光
監督;石黒光一


【前回までの話は・・・ 大魔王ゴースンは、日本征服の邪魔になる果心居士を、怪人オロチを使って暗殺した。だが、果心居士の三人の弟子たちは果敢に戦い、青年忍者獅子丸は忍法・獅子変化を開眼し、ライオン丸に変身してオロチを倒した。果心居士から与えられたゴースンを倒す使命を果たすため、三人は旅に出た・・・】

◆最近村人たちの間で、「魔の森」と呼ばれるようになった場所がある。そこへ入った者は二度と生きては帰れないと言うウワサが流れてから、半月が経っていた。獅子丸たち三人の大魔王ゴースンを倒す旅は、偶然にもこの森へ続く道を歩いていた。

獅子丸たちが歩いていると、山焼きをやる季節でもないのに、行く手を遮るように山焼きの炎が三人に迫ってきた。仕方なく他の道を探そうとする獅子丸たちに、突如牢人衆が現れて、襲いかかって来たのだ。

獅子丸は相手の一人から太刀を奪うと、峰打ち*の構えで牢人衆と戦った。どうやら、彼等はゴースンの手下では無いと判断したからである。
*刃の部分ではなく、太刀の背の部分で相手を叩くようにして戦うこと

果心居士の教えを受けた沙織と小助も、相手を斬ることなく戦うことなど、たやすいことであった。牢人衆の一人が、少し離れた場所でのんびりと身体を横たえて休んでいる男に向かって叫んだ。

『おい、何をのんびり構えているんだ!』
『オレは見物だ。そこまで、手当はもらってないからな』

だが、獅子丸たちと牢人衆との戦いは、この一人のんびり昼寝をしている牢人の付近にまで及んで来た。背中に「疾風」と書かれた陣羽織を着たこの牢人は、小助と戦っていた牢人の足に太刀をひっかけて転ばすと、言った。

『おい、相手は子供だぞ!』

陣羽織の牢人は、小助たちに味方するように戦いに加わってきた。陣羽織の牢人が加わったことで、戦いはあっという間に終結してしまった。獅子丸も剣の使い手だが、この陣羽織の牢人もなかなかの者であった。戦いが終わると、この陣羽織の牢人は大声で笑いながらこの場を去って行った。

『おかしなヤツだ・・・』

その男の後ろ姿を見送りながら、獅子丸はそうつぶやいた。夕方になり、誰も住んでいない小屋を見つけた獅子丸たち三人は、一晩をここで明かすことにした。小助が、昼間の戦いを振り返って言った。

『あの連中、何者だろう?それにあの一人、どうして仲間をやっつけて、オイラを助けたんだろう・・・』
『彼等は確かに忍者じゃなかったけれど、私達と知って、あそこで待ち伏せしていたんじゃないのかしら。と、すると・・・』

沙織が自分の考えを話していたその時、トビラを開けて小屋に入ってきたのは、あの陣羽織の牢人だった。

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『ごめんよ!なぁーんだ、お前たちだったのか!』

笑顔で豪快にそう言うと、勝手に獅子丸のとなりに座りこんで、男は言った。

『オレは牢人、蒲生城太郎。どうだい、今夜一緒に泊めてくれよ。仲間のところへ帰れなくなってしまったんだ!』

食事の支度が出来上がったところへやってきた蒲生城太郎は、誰とはなしに問いかけて、この場に酒が無いことを知ると、ふもとの村まで買いに行くと言い出した。蒲生城太郎は豪快に笑いながら、酒を買うために小屋を出て行った。

『金は、たんまりあるんだ!アハハハハ!』
『小助ちゃんを助けたのは、私達に近づくための企みじゃないのかしら・・・』

当然のことながら、沙織はこの牢人を信用してはいない。だが獅子丸には、昼間の戦いの様子や今の話の具合から、そんなに悪い人物には思えなかったのだ。

月明かりの闇の中で、ふもとの村へ酒を買いに行く途中の蒲生城太郎を、仲間の牢人たち十人ほどが取り囲んだ。昼間の行動を謝った城太郎だが、そこへ割って入ってきたのはドクロの仮面の男だった。

『お前は、俺が雇ったのだ。俺の命令に従わなければ、それは裏切りだ』(ドクロの仮面)
『子供を斬れと、命令された覚えはない』(蒲生城太郎)

『銭は、十分に渡してあるはずだ!』(ドクロの仮面)
『殺しをやるほどは、もらって無い!』(蒲生城太郎)

蒲生城太郎は、かなりの剣の使い手であった。剣の使い手は、たとえ太刀がなくても敵をさばくことが上手い。城太郎は持っていた酒を入れる大きなヒョウタンを使って、相手をうまくさばきながら、その場を逃げ去ってしまうのだった。

何も無かったかのように小屋へ戻ってきた蒲生城太郎は、酒だけでなく干物も買ってきて、みんなで食おうと言い出した。

『あの山焼きでもらった金だ』
『金が欲しくて、百姓の手伝いをしたのか?』

獅子丸の問いに、金が欲しかったのは確かだと答えた城太郎だが、そのあとの言葉に獅子丸は驚く。

『俺たち牢人を雇ってくれたのは、ドクロの仮面の男だ。三方に火を放ち、森の中にお前達を追いやる手筈だったんだ。何か恐ろしいワナがあるに違いない。村の者のウワサだと、あの森へ入った者は、二度と生きて帰って来ないそうだ』

そう言って、蒲生城太郎は獅子丸たちにワナがあるからあの森へは行くな、と警告するのだった。翌早朝。獅子丸たち三人は、魔の森へ行く道を歩いていた。蒲生城太郎は置いてきた。

城太郎たちを雇ったのがドクロの仮面と聞いて、それがゴースン一味であることはほぼ間違いあるまい。獅子丸たちの使命は、ゴースンを倒して師匠・果心居士の仇を討つことであった。

雪の残る森へ入ってすぐに、緑色の装束のドクロ忍者たちが獅子丸たちを襲撃してきた。そして、怪人がその姿を現した。

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『ゴースンの手下だな!』(獅子丸)
『そのとおり。お前たち邪魔者を殺し、日本に暗黒の世界を作るようゴースン様の命を受けた「わくらんば」だ!』

変身する前に獅子丸を倒してしまおうと、わくらんばは果敢に攻めてくる。獅子丸も手裏剣を投げ、剣を抜いて果敢に攻め立てた。だが、忍法・獅子変化無くして、怪人を倒すことはできない。獅子丸は顔の前で手を組みながら、忍法・獅子変化の呪文を唱えた。

『風よ!光よ!・・・』

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だが、金砂地の太刀のクサリが切れない。クサリが切れなければ、太刀を抜いてライオン丸に変身することはできないのだ。変身出来ない獅子丸など、赤子の手をひねるようなモノと、わくらんばの逆襲が始まった。

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大量の木の葉を、獅子丸に向かって吹き付けるわくらんば。木の葉は獅子丸の全身に貼り付き、口や目・鼻に貼り付いて取れない。獅子丸は呼吸困難に陥り、気を失ってしまった。(つづく)


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この回の蒲生城太郎は、ご存じスペクトルマンの蒲生譲二こと成川哲夫氏である。この回と第5話にゲスト出演している。残念なことに、2010年に他界してしまった。生きていれば、スペクトルマンの撮影秘話などいろいろ聞けたと思うと、特撮ファンとして残念でならない。(合掌)

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