ダイヤモンド◇アイ(20) [ダイヤモンドアイ・ドラマ2]
今回は、第10話《モージンガー大反撃/ 後編》を取りあげます。
【前回までの話は・・・500億円を積んだ現金輸送車を狙う源海龍は、ライコウの動きを封じるため、殺し屋ホークに子供のモンちゃんを誘拐させた。脅されてライコウは動けず、モンちゃんの居場所が分からないためアイも手の打ちようが無い。モンちゃんは縛られて、北見が運転する車のトランクの中に・・・】
◆その頃、エルドニア領事館へ経済支援用の現金500億円を輸送するため、海藤警部は部下の石田刑事と共に現金輸送車護衛の任に就いていた。前を走る囮(おとり)の輸送車の後ろから、運送会社の運転手に変装した警部と石田刑事がトラックを運転して付いて行く計画だ。だが、出発前から標的を見張っている朱玉によってそのことは報告され、警備態勢は筒抜けだった。
一方、運転中の北見は、車の後方で異音がすることに気づいていた。山道の途中で車を止め、トランクを開けてみて驚いた。子供が縛られて、トランクの中に横たわっているではないか!
『おい、どうしたんだ?!』
口に貼られたテープをはがし、子供に事情を聴こうとする北見。だが、彼の背後から殺し屋ホークが静かに近づいていた。そして、首筋を強打され、北見はその場で失神してしまう。ホークは縛られたままのモンちゃんを右肩に担いで、逃げて行く。モンちゃんは担がれた状態で、大声を出した。
『兄貴、助けてぇ~!』
宙から警戒していたダイヤモンド・アイが、このモンちゃんの叫び声を拾った。じっとスナックで待つライコウのアイリングが、キラキラと輝いた。モンちゃんの居場所が判ったことを、アイが知らせてきたのだ。
『頼んだぞ、アイ!』
モンちゃんを背負って山道を走って逃げるホークは、トンネル内へ逃げ込んでいく。モンちゃんの居場所をつかんだアイは、光となってトンネル内のホークの前に姿を現した。だがホークには、予定の行動である。
『来たな、アイ!』
ホークはモージンガーに姿を変えると、用意していた特殊な壁でトンネルの入口と出口を閉じた。これによりトンネルは、完全に光を遮断した「地獄トンネル」になった。
『ワナにかかったな!地獄トンネルに踏み込めば、正義の光は射さん!貴様の超能力もゼロだ!』
アイが投げたダイヤつぶては、モージンガーの皮膚にぶつかって爆発しなかった。モージンガーの言うとおり、アイの超能力は封じられてしまった。自分の鼻に付けているリング(鼻輪)をモージンガーはつかみ取り、アイに向かって投げつけた。それは一瞬にして巨大化し、アイの身体にキッチリとハマった。
(モージンガー一族の恨みを込めた呪いの輪!)
『呪いの輪だ。光が無ければ、誰も外せん。ジワジワと絞めつけて、1時間後には貴様の胴体は真っ二つだ!苦しんであの世に行け!ワッハハハハ』
自分の勝利を信じたモージンガーは、アイにとどめを刺すこと無くその場から去って行った。苦しそうにうめくアイを見て、モンちゃんは詫びた。
『アイ!僕の為にこんな目に・・・』
『予は正しい者のために・・・汚れ(けがれ)を知らぬ子供の為なら・・・死を恐れはしない。それが・・・予の使命なのだ。うぅぅ』
リングが刻々とアイの身体を締め上げていき、アイはうめき声を発した。後ろ手に縛られたモンちゃんも、暗闇から脱出するために肩からぶつかってみるが、何かに阻まれて弾き返されてしまう。そこには、見えない壁が存在しているのだ。
一方、警部と会えずに警察から戻って来たカボ子たちは、ダイヤモンド・アイがモンちゃんを発見したことをライコウから聞き、ひと安心した。だがライコウは、自分が動けぬ歯がゆさで声には力が無い。
アイがモンちゃんと一緒なら安心だから行動してくださいと、モンちゃんの姉が言った。ライコウは考えた末に、行動することにした。カボ子によれば、海藤警部は汚い作業服姿で出て行ったらしい。それは、現金輸送車護衛の任務で変装したに違いない。現金輸送車を追って、ライコウはバイクを飛ばした。
『予定通りだ。これなら大丈夫だな。何しろ500億だからな、肩が凝るよ』
トラックを運転している石田刑事に腕時計を見ながら警部はそう話すと、前方の囮の現金輸送車が急停車した。何かあったようだ。警部はトラックを停車させる。囮の車から刑事が一人出てきて、ひき逃げらしいと告げた。
そのままにしてはおけないと、警部が出した指示は病院へ回り道するコースの変更だった。輸送コースの変更に石田刑事が心配な気配を見せたが、警部の指示どおりにコースを変更して車は走り出した。
囮の車内では異変が起きていた。ひき逃げされた男が蘇生して、車内で催涙スプレーを撒いたのだ。囮の輸送車は路肩に突っ込んで脱輪し、催涙ガスにやられた刑事たちが車内から出て来たところを、赤覆面の男達に拳銃で狙撃されて全滅した。
赤覆面の男達は、トラックを囲んだ。警部はとぼけて誤魔化そうとするが、後ろの積み荷が500億円の現金であることは知られ、しかも警部と石田刑事は素性がバレている。もはや、万事休すであった。拳銃を突きつけられ、トラックから降ろされた二人。だがそこへ、ライコウがバイクで突っ込んできた。
バイクから飛び降り、無人のバイクを赤覆面達へ突っ込ませて散り散りになっている間に、ライコウは警部と石田刑事を救出した。
だが、殺し屋ホークの銃がライコウの右足を撃ち抜き、倒れたライコウにホークは近づいて言った。
『今度こそ、心臓をぶち抜いてやる!』
『待ってくれ!コイツを殺すのだけは、やめてくれ。オレが身代りになる。俺にとっては息子同様な男なんだ!頼む!』
ライコウの身体に覆いかぶさりながら海藤警部がそう言うと、ホークは「二人とも地獄へ送ってやる」と冷たく告げた。ライコウはアイリングを空へかざして、叫んだ。
『アイよーっ!・・・アイよーっ、アイよーっ!』
何度叫んでも現れない。どうしたんだ?アイ!
『アイは来ない。闇の中に閉じ込めたのだ!フフフフ』
あざ笑うように、ホークは言った。そして、ライコウの胸めがけて一発、弾丸を撃ち込んだ。二発三発と撃ち込んで、倒れるライコウ、叫ぶ海藤警部。
『ライコウ!しっかりしろ、ライコウ!』
呪いの輪に締め付けられ身動きできないアイは、甲太郎の声に応えられない。甲太郎の危機に、飛んで行けない自分の無力さに泣いた。アイの目から、涙が流れ出た。
『光が欲しい・・・甲太郎が危ない・・・』
ライコウの元へ飛んで行けないアイを横で見ていたモンちゃんも、悲しくなった。モンちゃんは、泣いて謝った。
『ごめんよ、アイ。僕にはどうにもならないんだ・・・』
モンちゃんの涙がアイの涙の上に落ちた時、暗闇の中でその部分がきらきらと輝いた。モンちゃんが叫ぶ。
『あっ、光だ!』
『あぁ、汚れ(けがれ)を知らない子供の涙が光を呼んでくれた』
そのわずかに輝く光によってアイは力を得ると、縛られていたリングを破り、自由になった。そして、後ろ手に縛られたモンちゃんを自由にすると、二人は光になってライコウが待つその場所へ一瞬で移動した。
(ダイヤモンド・アイ、登場!)
だが、ライコウはすでに力尽き、意識が無かった。警部と石田刑事が倒れたライコウに寄り添っているのを見て、足を引きずりながらモンちゃんは駆け寄った。
『アニキ!』
驚いたのは殺し屋ホークだ。アイはステッキを使って、片っ端から敵を倒していく。
(バ~レ~タ~カ~!)
『卑劣な怨霊どもめ!外道照身、霊波光線!正体見たり!前世魔人モージンガー!』
『バ~レ~タ~カ~!』
アイの光線を浴びたホークは、一つ目の魔人モージンガーに変わった。それを見ていた警部と石田刑事は、そのおぞましい姿に仰天してしまう。次々と姿を暴かれていく馬頭人・牛頭人たちを、アイは怒りを込めたステッキで倒していく。そして、ロイヤルパンチを頭部に受けたモージンガーは、白い泡を吹きながら消滅した。
(甲太郎、ワシのためにこんな傷を・・・)
アイは白色の蘇生光線を左手から出して、倒れている甲太郎に当てた。甲太郎は目を開けると、アイに声を掛けた。
『アイ・・・』
『甲太郎。お前を愛するモンちゃんの涙で、私は救われた。そして、お前も救われたのだ。さぁ、立ってみろ』
(さぁ、立ってみろ)
アイに促され、傷が癒えた甲太郎は立ち上がることができた。
『そして、もんちゃん。お前の足は治った。いつまでも美しい心を!』
モンちゃんの足は、治っていたのだ。アイに言われて、自分の心に負けていたことにモンちゃんは気づくのだった。空へ消えて行くアイを、四人は見送った。
(終わり)
★★★★★★★★★★★★
【前回までの話は・・・500億円を積んだ現金輸送車を狙う源海龍は、ライコウの動きを封じるため、殺し屋ホークに子供のモンちゃんを誘拐させた。脅されてライコウは動けず、モンちゃんの居場所が分からないためアイも手の打ちようが無い。モンちゃんは縛られて、北見が運転する車のトランクの中に・・・】
◆その頃、エルドニア領事館へ経済支援用の現金500億円を輸送するため、海藤警部は部下の石田刑事と共に現金輸送車護衛の任に就いていた。前を走る囮(おとり)の輸送車の後ろから、運送会社の運転手に変装した警部と石田刑事がトラックを運転して付いて行く計画だ。だが、出発前から標的を見張っている朱玉によってそのことは報告され、警備態勢は筒抜けだった。
一方、運転中の北見は、車の後方で異音がすることに気づいていた。山道の途中で車を止め、トランクを開けてみて驚いた。子供が縛られて、トランクの中に横たわっているではないか!
『おい、どうしたんだ?!』
口に貼られたテープをはがし、子供に事情を聴こうとする北見。だが、彼の背後から殺し屋ホークが静かに近づいていた。そして、首筋を強打され、北見はその場で失神してしまう。ホークは縛られたままのモンちゃんを右肩に担いで、逃げて行く。モンちゃんは担がれた状態で、大声を出した。
『兄貴、助けてぇ~!』
宙から警戒していたダイヤモンド・アイが、このモンちゃんの叫び声を拾った。じっとスナックで待つライコウのアイリングが、キラキラと輝いた。モンちゃんの居場所が判ったことを、アイが知らせてきたのだ。
『頼んだぞ、アイ!』
モンちゃんを背負って山道を走って逃げるホークは、トンネル内へ逃げ込んでいく。モンちゃんの居場所をつかんだアイは、光となってトンネル内のホークの前に姿を現した。だがホークには、予定の行動である。
『来たな、アイ!』
ホークはモージンガーに姿を変えると、用意していた特殊な壁でトンネルの入口と出口を閉じた。これによりトンネルは、完全に光を遮断した「地獄トンネル」になった。
『ワナにかかったな!地獄トンネルに踏み込めば、正義の光は射さん!貴様の超能力もゼロだ!』
アイが投げたダイヤつぶては、モージンガーの皮膚にぶつかって爆発しなかった。モージンガーの言うとおり、アイの超能力は封じられてしまった。自分の鼻に付けているリング(鼻輪)をモージンガーはつかみ取り、アイに向かって投げつけた。それは一瞬にして巨大化し、アイの身体にキッチリとハマった。
(モージンガー一族の恨みを込めた呪いの輪!)
『呪いの輪だ。光が無ければ、誰も外せん。ジワジワと絞めつけて、1時間後には貴様の胴体は真っ二つだ!苦しんであの世に行け!ワッハハハハ』
自分の勝利を信じたモージンガーは、アイにとどめを刺すこと無くその場から去って行った。苦しそうにうめくアイを見て、モンちゃんは詫びた。
『アイ!僕の為にこんな目に・・・』
『予は正しい者のために・・・汚れ(けがれ)を知らぬ子供の為なら・・・死を恐れはしない。それが・・・予の使命なのだ。うぅぅ』
リングが刻々とアイの身体を締め上げていき、アイはうめき声を発した。後ろ手に縛られたモンちゃんも、暗闇から脱出するために肩からぶつかってみるが、何かに阻まれて弾き返されてしまう。そこには、見えない壁が存在しているのだ。
一方、警部と会えずに警察から戻って来たカボ子たちは、ダイヤモンド・アイがモンちゃんを発見したことをライコウから聞き、ひと安心した。だがライコウは、自分が動けぬ歯がゆさで声には力が無い。
アイがモンちゃんと一緒なら安心だから行動してくださいと、モンちゃんの姉が言った。ライコウは考えた末に、行動することにした。カボ子によれば、海藤警部は汚い作業服姿で出て行ったらしい。それは、現金輸送車護衛の任務で変装したに違いない。現金輸送車を追って、ライコウはバイクを飛ばした。
『予定通りだ。これなら大丈夫だな。何しろ500億だからな、肩が凝るよ』
トラックを運転している石田刑事に腕時計を見ながら警部はそう話すと、前方の囮の現金輸送車が急停車した。何かあったようだ。警部はトラックを停車させる。囮の車から刑事が一人出てきて、ひき逃げらしいと告げた。
そのままにしてはおけないと、警部が出した指示は病院へ回り道するコースの変更だった。輸送コースの変更に石田刑事が心配な気配を見せたが、警部の指示どおりにコースを変更して車は走り出した。
囮の車内では異変が起きていた。ひき逃げされた男が蘇生して、車内で催涙スプレーを撒いたのだ。囮の輸送車は路肩に突っ込んで脱輪し、催涙ガスにやられた刑事たちが車内から出て来たところを、赤覆面の男達に拳銃で狙撃されて全滅した。
赤覆面の男達は、トラックを囲んだ。警部はとぼけて誤魔化そうとするが、後ろの積み荷が500億円の現金であることは知られ、しかも警部と石田刑事は素性がバレている。もはや、万事休すであった。拳銃を突きつけられ、トラックから降ろされた二人。だがそこへ、ライコウがバイクで突っ込んできた。
バイクから飛び降り、無人のバイクを赤覆面達へ突っ込ませて散り散りになっている間に、ライコウは警部と石田刑事を救出した。
だが、殺し屋ホークの銃がライコウの右足を撃ち抜き、倒れたライコウにホークは近づいて言った。
『今度こそ、心臓をぶち抜いてやる!』
『待ってくれ!コイツを殺すのだけは、やめてくれ。オレが身代りになる。俺にとっては息子同様な男なんだ!頼む!』
ライコウの身体に覆いかぶさりながら海藤警部がそう言うと、ホークは「二人とも地獄へ送ってやる」と冷たく告げた。ライコウはアイリングを空へかざして、叫んだ。
『アイよーっ!・・・アイよーっ、アイよーっ!』
何度叫んでも現れない。どうしたんだ?アイ!
『アイは来ない。闇の中に閉じ込めたのだ!フフフフ』
あざ笑うように、ホークは言った。そして、ライコウの胸めがけて一発、弾丸を撃ち込んだ。二発三発と撃ち込んで、倒れるライコウ、叫ぶ海藤警部。
『ライコウ!しっかりしろ、ライコウ!』
呪いの輪に締め付けられ身動きできないアイは、甲太郎の声に応えられない。甲太郎の危機に、飛んで行けない自分の無力さに泣いた。アイの目から、涙が流れ出た。
『光が欲しい・・・甲太郎が危ない・・・』
ライコウの元へ飛んで行けないアイを横で見ていたモンちゃんも、悲しくなった。モンちゃんは、泣いて謝った。
『ごめんよ、アイ。僕にはどうにもならないんだ・・・』
モンちゃんの涙がアイの涙の上に落ちた時、暗闇の中でその部分がきらきらと輝いた。モンちゃんが叫ぶ。
『あっ、光だ!』
『あぁ、汚れ(けがれ)を知らない子供の涙が光を呼んでくれた』
そのわずかに輝く光によってアイは力を得ると、縛られていたリングを破り、自由になった。そして、後ろ手に縛られたモンちゃんを自由にすると、二人は光になってライコウが待つその場所へ一瞬で移動した。
(ダイヤモンド・アイ、登場!)
だが、ライコウはすでに力尽き、意識が無かった。警部と石田刑事が倒れたライコウに寄り添っているのを見て、足を引きずりながらモンちゃんは駆け寄った。
『アニキ!』
驚いたのは殺し屋ホークだ。アイはステッキを使って、片っ端から敵を倒していく。
(バ~レ~タ~カ~!)
『卑劣な怨霊どもめ!外道照身、霊波光線!正体見たり!前世魔人モージンガー!』
『バ~レ~タ~カ~!』
アイの光線を浴びたホークは、一つ目の魔人モージンガーに変わった。それを見ていた警部と石田刑事は、そのおぞましい姿に仰天してしまう。次々と姿を暴かれていく馬頭人・牛頭人たちを、アイは怒りを込めたステッキで倒していく。そして、ロイヤルパンチを頭部に受けたモージンガーは、白い泡を吹きながら消滅した。
(甲太郎、ワシのためにこんな傷を・・・)
アイは白色の蘇生光線を左手から出して、倒れている甲太郎に当てた。甲太郎は目を開けると、アイに声を掛けた。
『アイ・・・』
『甲太郎。お前を愛するモンちゃんの涙で、私は救われた。そして、お前も救われたのだ。さぁ、立ってみろ』
(さぁ、立ってみろ)
アイに促され、傷が癒えた甲太郎は立ち上がることができた。
『そして、もんちゃん。お前の足は治った。いつまでも美しい心を!』
モンちゃんの足は、治っていたのだ。アイに言われて、自分の心に負けていたことにモンちゃんは気づくのだった。空へ消えて行くアイを、四人は見送った。
(終わり)
★★★★★★★★★★★★