ダイヤモンド◇アイ(19) [ダイヤモンドアイ・ドラマ2]
今回は、第10話《モージンガ―大反撃/ 前編》を取りあげます。
企画;衛藤公彦
原作;川内康範
脚本;伊東恒久
音楽;池多孝春
殺陣;渡辺高光
特技監督;真野田陽一
監督;高瀬昌弘
【前回までの話は・・・「アジアの子供が手をつなぐ会」という慈善団体の存在を知ったライコウは、総裁との面会の場で北見に会う。彼が会の総裁秘書をしていることを、この時に知る。更に、この慈善団体がダイヤの展示会を開催することを知り、怪しいと睨んだライコウは展示会潜入の途中で大沢山京子に会う。京子は慈善団体が主催する保育園で保母として働き、会場へは手伝いのため来ていた。潜入に失敗して会場を見張っていたライコウは殺し屋バイパーに襲撃され、捕まってしまう。ライコウを囮(おとり)にしてダイヤモンド・アイを抹殺しようと企てる源海龍だが、アイの超能力によって窮地を逆転し、バイパーの正体・ワレアタマを倒すも、源海龍には逃げられてしまう・・・】
◆『おのれ、ダイヤモンド・アイめ!よくもこの俺様を苦しめたな!』
暗黒の怨霊世界に立てこもり、キングコブラは考えあぐねていた。今までにダイヤモンド・アイに倒された数々の前世魔人たちや馬頭人・牛頭人ら戦闘員の屍骸が、その世界には散乱していた。その中を歩きながら、ダイヤモンド・アイを倒す算段を考えているキングコブラに、手を上げる前世魔人がいた。モージンガーであった。
『キングコブラさま、このわたくしめにおまかせください!』
『おー、モージンガー!お前こそが、ダイヤモンド・アイを倒す地獄の使者なのだ!』
アジトに戻ったキングコブラとモージンガーは、人間態の源海龍と殺し屋ホークの姿になると、作戦を練るのだった。ダイヤモンド・アイの強さは、並の魔力では勝てないことを源海龍は知っている。殺し屋ホークにそのことを問いかけた源海龍に、自信を持ってホークは答えた。
『この呪いの輪で、ヤツを呪いの暗闇へ閉じ込めます。光が無ければ、呪いの輪は切れません』
殺し屋ホークの作戦を気に入った源海龍は、直ちに次のハリケーン作戦の立案を朱玉に命じた。朱玉が持って来た新聞記事には、日本がエルドニア国へ経済援助用に貸し出す2億ドルの現金輸送とある。この現金を強奪する作戦である。
『ざっと500億円。この金を一挙にいただく。その前に、まずライコウを始末しろ!』
冷たい表情で、朱玉はホークに命じた。黒い詰襟服を着た神父姿の殺し屋ホークは、胸の前で十字架を切るとニヤリと笑った。
その頃ライコウは、スナック「サンダー」で食事をしながら何かを待っていた。そこへカボ子がガッカリした顔で帰ってきたのを見て、成果が上がっていないことを察するのだった。ダイヤの展示会を主催した「宝輸入協会」を調査しに行ったカボ子だが、この会社は机一つ電話1本を一週間借りただけの幽霊会社であり、その契約書に書かれた宝田という女性の存在を突き止めたものの、住所はデタラメであった。これにより、ダイヤ展示会事件の背後にいると思われる源海龍一味の足跡は、糸が切れた凧のように途切れてしまった。
(モンちゃんが店にやって来た)
『兄貴!たいへんだよ、たいへん!』
今度はモンちゃんが店に入って来るなり、ライコウに告げた。モンちゃんの話では、ライコウの下宿が数人の男達に荒らされているらしい。ライコウの下宿で飼っているハトにエサを与えようとして行ってみたら、その光景を見たとモンちゃんは言う。モンちゃんの報告を聞いたライコウは、カボ子と五郎の協力を得て、その人物の身なりや語り口の様子から、どうやら海藤警部が下宿を家宅捜査したらしいことを知った。
海藤警部がどうして自分の下宿を家宅捜査しているのか?疑問に思ったライコウは、すぐに下宿へと向かった。だが、そのあとを尾行してくる人物に、ライコウは気がつかない。その人物は持っていた分厚い聖書を開くと、ページを型抜きして隠しておいた拳銃を手にして懐へ入れると、再び歩き出した。そして、ライコウが下宿の前で止まると、ライコウの背後を狙える位置で店舗の陰に身を隠した。
ライコウの下宿から少し離れた場所にいた海藤警部は、むこうから歩いてくるライコウを見つけると同時に、ライコウを狙う怪しい人物の姿も視界に入れていた。
(男は消音装置付の銃でライコウを狙う)
(海藤警部に文句を言うが、警部の目線はライコウの背後に・・・)
『警部!どうして家宅捜査なんか、やったんです?!』
ライコウが警部に向かって話しかけた時、その人物が拳銃でライコウを狙うのが見えた警部は、とっさに右の拳でライコウの左頬を殴った。バタンと倒れたライコウをよそに、警部は逃げていく男を急いで追いかけた。
弾丸がライコウの顔があった空間をかすめて、店の品物に当たった。だが、拳銃の発射音がしなかったためにライコウはそれに気づかず、いきなり自分を殴った警部をライコウは追いかけるのだった。若いライコウはすぐに海藤警部に追いつき、警部の足元をすくって地面に転がすと、自分を殴った理由を警部に訊ねた。
『警部!それ(殴ったこと)が答えですか!』
『痛てぇ~』
『人の話を聞かずに逃げるからですよ!それが、民主警察の取る態度ですか?』
痛みをこらえながら海藤警部は、ライコウの家の捜索理由を「親心」だと言った。だが、ライコウには、とてもそうは思えない。警部は詳しいことは言わず、立ち去って行った。
アジトでは源海龍が朱玉ら部下たちを集めて、ハリケーン作戦の実行計画について指示していた。
『襲撃の場所は、ここだ』
『時間は、明日の正午に東京を出発します』
作戦の段取りを、朱玉が説明する。その言葉にうなずいた源海龍は、ライコウを殺り損なったホークに、改めてライコウの始末を命じた。殺し屋ホークはモンちゃんを誘拐して人質とし、作戦にライコウが手を出せぬよう脅す作戦に出た。学校帰りのモンちゃんを誘拐したホークは、ライコウ達の集まるスナックに電話し、電話口に出たライコウに告げた。
(子供の命が大切なら、そこを動かないことだ!)
『何!モンちゃんを!汚いぞ、子供を巻き込むなんて!』
ライコウの口ぶりに、その場にいたカボ子や五郎、そしてモンちゃんの姉は不安になった。すぐに海藤警部に連絡するよう、カボ子が提案した。自分が動けず歯がゆいライコウだが、今はそうする他に手が無いと思う。ところが、しばらくしてカボ子から電話があり、海藤警部と連絡が取れないと言う。警部は、昨日から姿を見せていないというのだ。
『こんな大事な時に何をしてるんだ、あのオヤジ!』
苛立つライコウ。だが、今は警察に任せるより他に手段が無い。自分が動いたことが源海龍に知れれば、モンちゃんの命が危ない。
『アイ!俺は、どうすればいいんだ!』
何度も何度も、左手のアイリングに向かってライコウは呼びかけた。すると、アイが現れて、ライコウをなだめるように言うのだ。
『甲太郎。モンちゃんは、予に任せろ』
『だが、どこにいるのか分からない』
『モンちゃんが声を出してくれたら、私には場所が分かるのだが・・・』
『モンちゃん!一声でいい、俺を呼んでくれ!』
『甲太郎。私は空の上から、モンちゃんの声を待とう。モンちゃんを見つけたら、合図をする。アイリングのサインを待て』
「必ず助け出す」と言って、アイは空へ消えて行った。その頃、モンちゃんは手足を縛られ、口を塞がれて、北見が運転する車のトランクの中にいた。総裁に頼まれ、ある場所へダイヤを届けるために北見は車を運転していた。もちろん、トランクの中にモンちゃんがいることなど、知るはずも無かった。
(つづく)
★★★★★★★★★★★★
モンちゃんとライコウの関係・・・第一話で、大沢山剛造を追跡中のライコウが銃で狙撃された際に、その流れ弾に当たって足に大怪我をした小学生のこと。ライコウは、モンちゃんが大怪我をしたのは、自分の責任だと思っている。怪我が治るまで、モンちゃんの世話をするつもりでいる。モンちゃんは、ライコウが悪をすべて倒した時に自分の足の怪我も治ると信じている。
企画;衛藤公彦
原作;川内康範
脚本;伊東恒久
音楽;池多孝春
殺陣;渡辺高光
特技監督;真野田陽一
監督;高瀬昌弘
【前回までの話は・・・「アジアの子供が手をつなぐ会」という慈善団体の存在を知ったライコウは、総裁との面会の場で北見に会う。彼が会の総裁秘書をしていることを、この時に知る。更に、この慈善団体がダイヤの展示会を開催することを知り、怪しいと睨んだライコウは展示会潜入の途中で大沢山京子に会う。京子は慈善団体が主催する保育園で保母として働き、会場へは手伝いのため来ていた。潜入に失敗して会場を見張っていたライコウは殺し屋バイパーに襲撃され、捕まってしまう。ライコウを囮(おとり)にしてダイヤモンド・アイを抹殺しようと企てる源海龍だが、アイの超能力によって窮地を逆転し、バイパーの正体・ワレアタマを倒すも、源海龍には逃げられてしまう・・・】
◆『おのれ、ダイヤモンド・アイめ!よくもこの俺様を苦しめたな!』
暗黒の怨霊世界に立てこもり、キングコブラは考えあぐねていた。今までにダイヤモンド・アイに倒された数々の前世魔人たちや馬頭人・牛頭人ら戦闘員の屍骸が、その世界には散乱していた。その中を歩きながら、ダイヤモンド・アイを倒す算段を考えているキングコブラに、手を上げる前世魔人がいた。モージンガーであった。
『キングコブラさま、このわたくしめにおまかせください!』
『おー、モージンガー!お前こそが、ダイヤモンド・アイを倒す地獄の使者なのだ!』
アジトに戻ったキングコブラとモージンガーは、人間態の源海龍と殺し屋ホークの姿になると、作戦を練るのだった。ダイヤモンド・アイの強さは、並の魔力では勝てないことを源海龍は知っている。殺し屋ホークにそのことを問いかけた源海龍に、自信を持ってホークは答えた。
『この呪いの輪で、ヤツを呪いの暗闇へ閉じ込めます。光が無ければ、呪いの輪は切れません』
殺し屋ホークの作戦を気に入った源海龍は、直ちに次のハリケーン作戦の立案を朱玉に命じた。朱玉が持って来た新聞記事には、日本がエルドニア国へ経済援助用に貸し出す2億ドルの現金輸送とある。この現金を強奪する作戦である。
『ざっと500億円。この金を一挙にいただく。その前に、まずライコウを始末しろ!』
冷たい表情で、朱玉はホークに命じた。黒い詰襟服を着た神父姿の殺し屋ホークは、胸の前で十字架を切るとニヤリと笑った。
その頃ライコウは、スナック「サンダー」で食事をしながら何かを待っていた。そこへカボ子がガッカリした顔で帰ってきたのを見て、成果が上がっていないことを察するのだった。ダイヤの展示会を主催した「宝輸入協会」を調査しに行ったカボ子だが、この会社は机一つ電話1本を一週間借りただけの幽霊会社であり、その契約書に書かれた宝田という女性の存在を突き止めたものの、住所はデタラメであった。これにより、ダイヤ展示会事件の背後にいると思われる源海龍一味の足跡は、糸が切れた凧のように途切れてしまった。
(モンちゃんが店にやって来た)
『兄貴!たいへんだよ、たいへん!』
今度はモンちゃんが店に入って来るなり、ライコウに告げた。モンちゃんの話では、ライコウの下宿が数人の男達に荒らされているらしい。ライコウの下宿で飼っているハトにエサを与えようとして行ってみたら、その光景を見たとモンちゃんは言う。モンちゃんの報告を聞いたライコウは、カボ子と五郎の協力を得て、その人物の身なりや語り口の様子から、どうやら海藤警部が下宿を家宅捜査したらしいことを知った。
海藤警部がどうして自分の下宿を家宅捜査しているのか?疑問に思ったライコウは、すぐに下宿へと向かった。だが、そのあとを尾行してくる人物に、ライコウは気がつかない。その人物は持っていた分厚い聖書を開くと、ページを型抜きして隠しておいた拳銃を手にして懐へ入れると、再び歩き出した。そして、ライコウが下宿の前で止まると、ライコウの背後を狙える位置で店舗の陰に身を隠した。
ライコウの下宿から少し離れた場所にいた海藤警部は、むこうから歩いてくるライコウを見つけると同時に、ライコウを狙う怪しい人物の姿も視界に入れていた。
(男は消音装置付の銃でライコウを狙う)
(海藤警部に文句を言うが、警部の目線はライコウの背後に・・・)
『警部!どうして家宅捜査なんか、やったんです?!』
ライコウが警部に向かって話しかけた時、その人物が拳銃でライコウを狙うのが見えた警部は、とっさに右の拳でライコウの左頬を殴った。バタンと倒れたライコウをよそに、警部は逃げていく男を急いで追いかけた。
弾丸がライコウの顔があった空間をかすめて、店の品物に当たった。だが、拳銃の発射音がしなかったためにライコウはそれに気づかず、いきなり自分を殴った警部をライコウは追いかけるのだった。若いライコウはすぐに海藤警部に追いつき、警部の足元をすくって地面に転がすと、自分を殴った理由を警部に訊ねた。
『警部!それ(殴ったこと)が答えですか!』
『痛てぇ~』
『人の話を聞かずに逃げるからですよ!それが、民主警察の取る態度ですか?』
痛みをこらえながら海藤警部は、ライコウの家の捜索理由を「親心」だと言った。だが、ライコウには、とてもそうは思えない。警部は詳しいことは言わず、立ち去って行った。
アジトでは源海龍が朱玉ら部下たちを集めて、ハリケーン作戦の実行計画について指示していた。
『襲撃の場所は、ここだ』
『時間は、明日の正午に東京を出発します』
作戦の段取りを、朱玉が説明する。その言葉にうなずいた源海龍は、ライコウを殺り損なったホークに、改めてライコウの始末を命じた。殺し屋ホークはモンちゃんを誘拐して人質とし、作戦にライコウが手を出せぬよう脅す作戦に出た。学校帰りのモンちゃんを誘拐したホークは、ライコウ達の集まるスナックに電話し、電話口に出たライコウに告げた。
(子供の命が大切なら、そこを動かないことだ!)
『何!モンちゃんを!汚いぞ、子供を巻き込むなんて!』
ライコウの口ぶりに、その場にいたカボ子や五郎、そしてモンちゃんの姉は不安になった。すぐに海藤警部に連絡するよう、カボ子が提案した。自分が動けず歯がゆいライコウだが、今はそうする他に手が無いと思う。ところが、しばらくしてカボ子から電話があり、海藤警部と連絡が取れないと言う。警部は、昨日から姿を見せていないというのだ。
『こんな大事な時に何をしてるんだ、あのオヤジ!』
苛立つライコウ。だが、今は警察に任せるより他に手段が無い。自分が動いたことが源海龍に知れれば、モンちゃんの命が危ない。
『アイ!俺は、どうすればいいんだ!』
何度も何度も、左手のアイリングに向かってライコウは呼びかけた。すると、アイが現れて、ライコウをなだめるように言うのだ。
『甲太郎。モンちゃんは、予に任せろ』
『だが、どこにいるのか分からない』
『モンちゃんが声を出してくれたら、私には場所が分かるのだが・・・』
『モンちゃん!一声でいい、俺を呼んでくれ!』
『甲太郎。私は空の上から、モンちゃんの声を待とう。モンちゃんを見つけたら、合図をする。アイリングのサインを待て』
「必ず助け出す」と言って、アイは空へ消えて行った。その頃、モンちゃんは手足を縛られ、口を塞がれて、北見が運転する車のトランクの中にいた。総裁に頼まれ、ある場所へダイヤを届けるために北見は車を運転していた。もちろん、トランクの中にモンちゃんがいることなど、知るはずも無かった。
(つづく)
★★★★★★★★★★★★
モンちゃんとライコウの関係・・・第一話で、大沢山剛造を追跡中のライコウが銃で狙撃された際に、その流れ弾に当たって足に大怪我をした小学生のこと。ライコウは、モンちゃんが大怪我をしたのは、自分の責任だと思っている。怪我が治るまで、モンちゃんの世話をするつもりでいる。モンちゃんは、ライコウが悪をすべて倒した時に自分の足の怪我も治ると信じている。
ダイヤモンド◇アイ(20) [ダイヤモンドアイ・ドラマ2]
今回は、第10話《モージンガー大反撃/ 後編》を取りあげます。
【前回までの話は・・・500億円を積んだ現金輸送車を狙う源海龍は、ライコウの動きを封じるため、殺し屋ホークに子供のモンちゃんを誘拐させた。脅されてライコウは動けず、モンちゃんの居場所が分からないためアイも手の打ちようが無い。モンちゃんは縛られて、北見が運転する車のトランクの中に・・・】
◆その頃、エルドニア領事館へ経済支援用の現金500億円を輸送するため、海藤警部は部下の石田刑事と共に現金輸送車護衛の任に就いていた。前を走る囮(おとり)の輸送車の後ろから、運送会社の運転手に変装した警部と石田刑事がトラックを運転して付いて行く計画だ。だが、出発前から標的を見張っている朱玉によってそのことは報告され、警備態勢は筒抜けだった。
一方、運転中の北見は、車の後方で異音がすることに気づいていた。山道の途中で車を止め、トランクを開けてみて驚いた。子供が縛られて、トランクの中に横たわっているではないか!
『おい、どうしたんだ?!』
口に貼られたテープをはがし、子供に事情を聴こうとする北見。だが、彼の背後から殺し屋ホークが静かに近づいていた。そして、首筋を強打され、北見はその場で失神してしまう。ホークは縛られたままのモンちゃんを右肩に担いで、逃げて行く。モンちゃんは担がれた状態で、大声を出した。
『兄貴、助けてぇ~!』
宙から警戒していたダイヤモンド・アイが、このモンちゃんの叫び声を拾った。じっとスナックで待つライコウのアイリングが、キラキラと輝いた。モンちゃんの居場所が判ったことを、アイが知らせてきたのだ。
『頼んだぞ、アイ!』
モンちゃんを背負って山道を走って逃げるホークは、トンネル内へ逃げ込んでいく。モンちゃんの居場所をつかんだアイは、光となってトンネル内のホークの前に姿を現した。だがホークには、予定の行動である。
『来たな、アイ!』
ホークはモージンガーに姿を変えると、用意していた特殊な壁でトンネルの入口と出口を閉じた。これによりトンネルは、完全に光を遮断した「地獄トンネル」になった。
『ワナにかかったな!地獄トンネルに踏み込めば、正義の光は射さん!貴様の超能力もゼロだ!』
アイが投げたダイヤつぶては、モージンガーの皮膚にぶつかって爆発しなかった。モージンガーの言うとおり、アイの超能力は封じられてしまった。自分の鼻に付けているリング(鼻輪)をモージンガーはつかみ取り、アイに向かって投げつけた。それは一瞬にして巨大化し、アイの身体にキッチリとハマった。
(モージンガー一族の恨みを込めた呪いの輪!)
『呪いの輪だ。光が無ければ、誰も外せん。ジワジワと絞めつけて、1時間後には貴様の胴体は真っ二つだ!苦しんであの世に行け!ワッハハハハ』
自分の勝利を信じたモージンガーは、アイにとどめを刺すこと無くその場から去って行った。苦しそうにうめくアイを見て、モンちゃんは詫びた。
『アイ!僕の為にこんな目に・・・』
『予は正しい者のために・・・汚れ(けがれ)を知らぬ子供の為なら・・・死を恐れはしない。それが・・・予の使命なのだ。うぅぅ』
リングが刻々とアイの身体を締め上げていき、アイはうめき声を発した。後ろ手に縛られたモンちゃんも、暗闇から脱出するために肩からぶつかってみるが、何かに阻まれて弾き返されてしまう。そこには、見えない壁が存在しているのだ。
一方、警部と会えずに警察から戻って来たカボ子たちは、ダイヤモンド・アイがモンちゃんを発見したことをライコウから聞き、ひと安心した。だがライコウは、自分が動けぬ歯がゆさで声には力が無い。
アイがモンちゃんと一緒なら安心だから行動してくださいと、モンちゃんの姉が言った。ライコウは考えた末に、行動することにした。カボ子によれば、海藤警部は汚い作業服姿で出て行ったらしい。それは、現金輸送車護衛の任務で変装したに違いない。現金輸送車を追って、ライコウはバイクを飛ばした。
『予定通りだ。これなら大丈夫だな。何しろ500億だからな、肩が凝るよ』
トラックを運転している石田刑事に腕時計を見ながら警部はそう話すと、前方の囮の現金輸送車が急停車した。何かあったようだ。警部はトラックを停車させる。囮の車から刑事が一人出てきて、ひき逃げらしいと告げた。
そのままにしてはおけないと、警部が出した指示は病院へ回り道するコースの変更だった。輸送コースの変更に石田刑事が心配な気配を見せたが、警部の指示どおりにコースを変更して車は走り出した。
囮の車内では異変が起きていた。ひき逃げされた男が蘇生して、車内で催涙スプレーを撒いたのだ。囮の輸送車は路肩に突っ込んで脱輪し、催涙ガスにやられた刑事たちが車内から出て来たところを、赤覆面の男達に拳銃で狙撃されて全滅した。
赤覆面の男達は、トラックを囲んだ。警部はとぼけて誤魔化そうとするが、後ろの積み荷が500億円の現金であることは知られ、しかも警部と石田刑事は素性がバレている。もはや、万事休すであった。拳銃を突きつけられ、トラックから降ろされた二人。だがそこへ、ライコウがバイクで突っ込んできた。
バイクから飛び降り、無人のバイクを赤覆面達へ突っ込ませて散り散りになっている間に、ライコウは警部と石田刑事を救出した。
だが、殺し屋ホークの銃がライコウの右足を撃ち抜き、倒れたライコウにホークは近づいて言った。
『今度こそ、心臓をぶち抜いてやる!』
『待ってくれ!コイツを殺すのだけは、やめてくれ。オレが身代りになる。俺にとっては息子同様な男なんだ!頼む!』
ライコウの身体に覆いかぶさりながら海藤警部がそう言うと、ホークは「二人とも地獄へ送ってやる」と冷たく告げた。ライコウはアイリングを空へかざして、叫んだ。
『アイよーっ!・・・アイよーっ、アイよーっ!』
何度叫んでも現れない。どうしたんだ?アイ!
『アイは来ない。闇の中に閉じ込めたのだ!フフフフ』
あざ笑うように、ホークは言った。そして、ライコウの胸めがけて一発、弾丸を撃ち込んだ。二発三発と撃ち込んで、倒れるライコウ、叫ぶ海藤警部。
『ライコウ!しっかりしろ、ライコウ!』
呪いの輪に締め付けられ身動きできないアイは、甲太郎の声に応えられない。甲太郎の危機に、飛んで行けない自分の無力さに泣いた。アイの目から、涙が流れ出た。
『光が欲しい・・・甲太郎が危ない・・・』
ライコウの元へ飛んで行けないアイを横で見ていたモンちゃんも、悲しくなった。モンちゃんは、泣いて謝った。
『ごめんよ、アイ。僕にはどうにもならないんだ・・・』
モンちゃんの涙がアイの涙の上に落ちた時、暗闇の中でその部分がきらきらと輝いた。モンちゃんが叫ぶ。
『あっ、光だ!』
『あぁ、汚れ(けがれ)を知らない子供の涙が光を呼んでくれた』
そのわずかに輝く光によってアイは力を得ると、縛られていたリングを破り、自由になった。そして、後ろ手に縛られたモンちゃんを自由にすると、二人は光になってライコウが待つその場所へ一瞬で移動した。
(ダイヤモンド・アイ、登場!)
だが、ライコウはすでに力尽き、意識が無かった。警部と石田刑事が倒れたライコウに寄り添っているのを見て、足を引きずりながらモンちゃんは駆け寄った。
『アニキ!』
驚いたのは殺し屋ホークだ。アイはステッキを使って、片っ端から敵を倒していく。
(バ~レ~タ~カ~!)
『卑劣な怨霊どもめ!外道照身、霊波光線!正体見たり!前世魔人モージンガー!』
『バ~レ~タ~カ~!』
アイの光線を浴びたホークは、一つ目の魔人モージンガーに変わった。それを見ていた警部と石田刑事は、そのおぞましい姿に仰天してしまう。次々と姿を暴かれていく馬頭人・牛頭人たちを、アイは怒りを込めたステッキで倒していく。そして、ロイヤルパンチを頭部に受けたモージンガーは、白い泡を吹きながら消滅した。
(甲太郎、ワシのためにこんな傷を・・・)
アイは白色の蘇生光線を左手から出して、倒れている甲太郎に当てた。甲太郎は目を開けると、アイに声を掛けた。
『アイ・・・』
『甲太郎。お前を愛するモンちゃんの涙で、私は救われた。そして、お前も救われたのだ。さぁ、立ってみろ』
(さぁ、立ってみろ)
アイに促され、傷が癒えた甲太郎は立ち上がることができた。
『そして、もんちゃん。お前の足は治った。いつまでも美しい心を!』
モンちゃんの足は、治っていたのだ。アイに言われて、自分の心に負けていたことにモンちゃんは気づくのだった。空へ消えて行くアイを、四人は見送った。
(終わり)
★★★★★★★★★★★★
【前回までの話は・・・500億円を積んだ現金輸送車を狙う源海龍は、ライコウの動きを封じるため、殺し屋ホークに子供のモンちゃんを誘拐させた。脅されてライコウは動けず、モンちゃんの居場所が分からないためアイも手の打ちようが無い。モンちゃんは縛られて、北見が運転する車のトランクの中に・・・】
◆その頃、エルドニア領事館へ経済支援用の現金500億円を輸送するため、海藤警部は部下の石田刑事と共に現金輸送車護衛の任に就いていた。前を走る囮(おとり)の輸送車の後ろから、運送会社の運転手に変装した警部と石田刑事がトラックを運転して付いて行く計画だ。だが、出発前から標的を見張っている朱玉によってそのことは報告され、警備態勢は筒抜けだった。
一方、運転中の北見は、車の後方で異音がすることに気づいていた。山道の途中で車を止め、トランクを開けてみて驚いた。子供が縛られて、トランクの中に横たわっているではないか!
『おい、どうしたんだ?!』
口に貼られたテープをはがし、子供に事情を聴こうとする北見。だが、彼の背後から殺し屋ホークが静かに近づいていた。そして、首筋を強打され、北見はその場で失神してしまう。ホークは縛られたままのモンちゃんを右肩に担いで、逃げて行く。モンちゃんは担がれた状態で、大声を出した。
『兄貴、助けてぇ~!』
宙から警戒していたダイヤモンド・アイが、このモンちゃんの叫び声を拾った。じっとスナックで待つライコウのアイリングが、キラキラと輝いた。モンちゃんの居場所が判ったことを、アイが知らせてきたのだ。
『頼んだぞ、アイ!』
モンちゃんを背負って山道を走って逃げるホークは、トンネル内へ逃げ込んでいく。モンちゃんの居場所をつかんだアイは、光となってトンネル内のホークの前に姿を現した。だがホークには、予定の行動である。
『来たな、アイ!』
ホークはモージンガーに姿を変えると、用意していた特殊な壁でトンネルの入口と出口を閉じた。これによりトンネルは、完全に光を遮断した「地獄トンネル」になった。
『ワナにかかったな!地獄トンネルに踏み込めば、正義の光は射さん!貴様の超能力もゼロだ!』
アイが投げたダイヤつぶては、モージンガーの皮膚にぶつかって爆発しなかった。モージンガーの言うとおり、アイの超能力は封じられてしまった。自分の鼻に付けているリング(鼻輪)をモージンガーはつかみ取り、アイに向かって投げつけた。それは一瞬にして巨大化し、アイの身体にキッチリとハマった。
(モージンガー一族の恨みを込めた呪いの輪!)
『呪いの輪だ。光が無ければ、誰も外せん。ジワジワと絞めつけて、1時間後には貴様の胴体は真っ二つだ!苦しんであの世に行け!ワッハハハハ』
自分の勝利を信じたモージンガーは、アイにとどめを刺すこと無くその場から去って行った。苦しそうにうめくアイを見て、モンちゃんは詫びた。
『アイ!僕の為にこんな目に・・・』
『予は正しい者のために・・・汚れ(けがれ)を知らぬ子供の為なら・・・死を恐れはしない。それが・・・予の使命なのだ。うぅぅ』
リングが刻々とアイの身体を締め上げていき、アイはうめき声を発した。後ろ手に縛られたモンちゃんも、暗闇から脱出するために肩からぶつかってみるが、何かに阻まれて弾き返されてしまう。そこには、見えない壁が存在しているのだ。
一方、警部と会えずに警察から戻って来たカボ子たちは、ダイヤモンド・アイがモンちゃんを発見したことをライコウから聞き、ひと安心した。だがライコウは、自分が動けぬ歯がゆさで声には力が無い。
アイがモンちゃんと一緒なら安心だから行動してくださいと、モンちゃんの姉が言った。ライコウは考えた末に、行動することにした。カボ子によれば、海藤警部は汚い作業服姿で出て行ったらしい。それは、現金輸送車護衛の任務で変装したに違いない。現金輸送車を追って、ライコウはバイクを飛ばした。
『予定通りだ。これなら大丈夫だな。何しろ500億だからな、肩が凝るよ』
トラックを運転している石田刑事に腕時計を見ながら警部はそう話すと、前方の囮の現金輸送車が急停車した。何かあったようだ。警部はトラックを停車させる。囮の車から刑事が一人出てきて、ひき逃げらしいと告げた。
そのままにしてはおけないと、警部が出した指示は病院へ回り道するコースの変更だった。輸送コースの変更に石田刑事が心配な気配を見せたが、警部の指示どおりにコースを変更して車は走り出した。
囮の車内では異変が起きていた。ひき逃げされた男が蘇生して、車内で催涙スプレーを撒いたのだ。囮の輸送車は路肩に突っ込んで脱輪し、催涙ガスにやられた刑事たちが車内から出て来たところを、赤覆面の男達に拳銃で狙撃されて全滅した。
赤覆面の男達は、トラックを囲んだ。警部はとぼけて誤魔化そうとするが、後ろの積み荷が500億円の現金であることは知られ、しかも警部と石田刑事は素性がバレている。もはや、万事休すであった。拳銃を突きつけられ、トラックから降ろされた二人。だがそこへ、ライコウがバイクで突っ込んできた。
バイクから飛び降り、無人のバイクを赤覆面達へ突っ込ませて散り散りになっている間に、ライコウは警部と石田刑事を救出した。
だが、殺し屋ホークの銃がライコウの右足を撃ち抜き、倒れたライコウにホークは近づいて言った。
『今度こそ、心臓をぶち抜いてやる!』
『待ってくれ!コイツを殺すのだけは、やめてくれ。オレが身代りになる。俺にとっては息子同様な男なんだ!頼む!』
ライコウの身体に覆いかぶさりながら海藤警部がそう言うと、ホークは「二人とも地獄へ送ってやる」と冷たく告げた。ライコウはアイリングを空へかざして、叫んだ。
『アイよーっ!・・・アイよーっ、アイよーっ!』
何度叫んでも現れない。どうしたんだ?アイ!
『アイは来ない。闇の中に閉じ込めたのだ!フフフフ』
あざ笑うように、ホークは言った。そして、ライコウの胸めがけて一発、弾丸を撃ち込んだ。二発三発と撃ち込んで、倒れるライコウ、叫ぶ海藤警部。
『ライコウ!しっかりしろ、ライコウ!』
呪いの輪に締め付けられ身動きできないアイは、甲太郎の声に応えられない。甲太郎の危機に、飛んで行けない自分の無力さに泣いた。アイの目から、涙が流れ出た。
『光が欲しい・・・甲太郎が危ない・・・』
ライコウの元へ飛んで行けないアイを横で見ていたモンちゃんも、悲しくなった。モンちゃんは、泣いて謝った。
『ごめんよ、アイ。僕にはどうにもならないんだ・・・』
モンちゃんの涙がアイの涙の上に落ちた時、暗闇の中でその部分がきらきらと輝いた。モンちゃんが叫ぶ。
『あっ、光だ!』
『あぁ、汚れ(けがれ)を知らない子供の涙が光を呼んでくれた』
そのわずかに輝く光によってアイは力を得ると、縛られていたリングを破り、自由になった。そして、後ろ手に縛られたモンちゃんを自由にすると、二人は光になってライコウが待つその場所へ一瞬で移動した。
(ダイヤモンド・アイ、登場!)
だが、ライコウはすでに力尽き、意識が無かった。警部と石田刑事が倒れたライコウに寄り添っているのを見て、足を引きずりながらモンちゃんは駆け寄った。
『アニキ!』
驚いたのは殺し屋ホークだ。アイはステッキを使って、片っ端から敵を倒していく。
(バ~レ~タ~カ~!)
『卑劣な怨霊どもめ!外道照身、霊波光線!正体見たり!前世魔人モージンガー!』
『バ~レ~タ~カ~!』
アイの光線を浴びたホークは、一つ目の魔人モージンガーに変わった。それを見ていた警部と石田刑事は、そのおぞましい姿に仰天してしまう。次々と姿を暴かれていく馬頭人・牛頭人たちを、アイは怒りを込めたステッキで倒していく。そして、ロイヤルパンチを頭部に受けたモージンガーは、白い泡を吹きながら消滅した。
(甲太郎、ワシのためにこんな傷を・・・)
アイは白色の蘇生光線を左手から出して、倒れている甲太郎に当てた。甲太郎は目を開けると、アイに声を掛けた。
『アイ・・・』
『甲太郎。お前を愛するモンちゃんの涙で、私は救われた。そして、お前も救われたのだ。さぁ、立ってみろ』
(さぁ、立ってみろ)
アイに促され、傷が癒えた甲太郎は立ち上がることができた。
『そして、もんちゃん。お前の足は治った。いつまでも美しい心を!』
モンちゃんの足は、治っていたのだ。アイに言われて、自分の心に負けていたことにモンちゃんは気づくのだった。空へ消えて行くアイを、四人は見送った。
(終わり)
★★★★★★★★★★★★
ダイヤモンド◇アイ(21) [ダイヤモンドアイ・ドラマ3]
今回は、第11話《ケラリン族の大挑戦/ 前編》を取りあげます。
企画;衛藤公彦
原作;川内康範
脚本;田村多津夫
音楽;池多孝春
殺陣;渡辺高光
特技監督;真野田陽一
監督;高瀬昌弘
【前回までの話は・・・モージンガーのワナにはまり暗黒世界に閉じ込められたアイは、モンちゃんの汚れなき心が生んだ奇跡によって暗闇から脱出して、現金輸送車を襲うモージンガーを倒した。撃たれて瀕死のライコウはアイの蘇生光線で蘇り、海藤警部が運転する現金輸送車をライコウが先導しながら、エルドニア領事館まで現金を無事に送り届けるのだった・・・】
◆エルドニア領事館へ運ばれた現金500億円は金塊に変えられ、明日エルドニア本国へ船で運ばれることになっていた。領事館前では厳重な警戒網が敷かれ、複数の警察官が行き来していた。襲撃に失敗したぐらいであきらめるような源海龍とも思えないと、領事館の見える場所からカボ子はライコウと五郎に言った。だが、腕を組んでライコウが考えていることは、そのことでは無い。カボ子がライコウに話しかけると、ライコウは言った。
『気になるんだよ、北見のことが』
『先輩!アイツは源海龍の陰謀の片棒を担ぎ、モンちゃんを誘拐したんですよ!』
五郎は怒ったようにそう言うが、北見の正義感をよく知るライコウには、北見が源海龍に利用されたに違いないと思うのだ。「先輩を仇のように思っている北見なんか・・・」と五郎が言いかけた時、ライコウはバイクにまたがり走り去っていた。北見八郎のような男を放っておけない性分のライコウであった。
『アイに立ち向かう、次の地獄の使者はいないのか!』
魔王キングコブラが悪霊界に戻り思案をしていると、名乗りを挙げる者がいた。
『このケラリンに、おまかせください!』
『おお、よーし。頼もしそうなヤツ!よし行こう』
(ケラリンを連れてアジトへ戻ったキングコブラ)
キングコブラはケラリンを連れてアジトへ戻って来ると、人間態に姿を変えた。殺し屋サターンに姿を変えたケラリンに、源海龍は命令した。
『北見も、我々の行動をうすうす気づいているだろう。生かしておくわけにはいかん。総裁室にいる北見を、消せ!』
『了解しました』
得意のナイフ投げで、殺し屋サターンは北見を狙う。その頃、北見は総裁室で昨日の出来事を思い返していた。
『トランクに子供が入っていたことを、総裁は知っていたのか・・・いや、そんなはずは。一体誰が、何のために子供を』
(サターンのナイフが北見を狙う)
そんなことを考えている時、突然総裁室の扉が開き、赤覆面の男数名が入ってきた。あとから殺し屋サターンが現れ、驚いた北見をナイフで狙いながらサターンは言った。
『北見、死んでもらう!』
『何?お前達は何者だ?』
『これから死ぬ者に、名乗っても仕方がないだろう。死ね!』
サターンが北見の心臓めがけて投げたナイフを、北見は机の上にあったアタッシュケースで素早く受けた。そして、ナイフが刺さったままのアタッシュケースをサターンに投げ返すと、フタが開いてケースの中のダイヤが散乱した。総裁室は一階にあった。開いていた窓から素早く外へ飛びだすと、北見は走って逃げた。そこへ、ライコウの乗ったバイクが通りかかった。
右腕を押さえながら逃げてくる北見を、ライコウは見つけた。赤覆面の男達と頭髪の無い大男が、北見の後を追いかけてくる。ライコウは一度赤覆面達にバイクで突っ込み、反転してまた突っ込んでいく。連中が隊列を乱している間にライコウは北見をタンデムシート(後ろの席)に乗せると、すぐにその場を去って行った。
逃げおおせたとみて、ライコウは近くの公園で休むことにした。ベンチに座った北見は、すぐにライコウに謝罪した。
(モンちゃんを・・・謝る北見(右))
『すまん。知らなかったとはいえ、モンちゃんをあんな目に合わせたことを謝る』
『すべて、源海龍の企みだ。総裁もお前も、奴に利用されたんだ。なぁ、北見。源海龍の正体を突き止めることだ。それが、死んだ大沢山さんのためにも・・・』
『オヤジさんを殺した源海龍は、俺の手で倒す!オレは、ひとりでやりたいんだ!』
北見はそう言って、ライコウの前から去って行った。一方、北見を逃がしたサターンから連絡が入り、朱玉は怒りを露わにした。二度と失敗は許さないと、最後通告するのだった。
源海龍は、エルドニア領事館内にある金塊をどうしても手に入れるつもりでいる。夜になれば、警戒はより厳重になるだろう。だから、明るいうちに堂々と金塊をいただくと言って、源海龍はニヤリと笑った。
『間も無く、エルドニアの経済大臣の記者会見が始まる』
源海龍はそう言うと、朱玉に策を授けた。
(朱玉は記者を装いエレベータに・・・)
記者会見の後、2人のSPに守られてエレベータに乗ろうとするエルドニア経済相に、女性週刊誌の記者を装って近づいた朱玉は、「女性読者のために奥様のことを記事にしたい」と言って、強引に経済相に同乗の許可を得た。トビラが閉まりエレベータが下がって行くと、質問をするふりをして万年筆型の毒ガス発射装置で三人を毒殺した。途中4階のボタンを押すと、ドアが開いてそこに待っていたのは源海龍であった。
北見と別れたライコウは、エルドニア領事館へバイクで戻る途中、赤覆面達の襲撃に遭う。北見殺害命令を受けた殺し屋サターンは、ライコウに邪魔されて北見を逃がした。そこでライコウを襲って、北見の居場所を知ろうとしたのだ。バイクを下りて赤覆面達と戦うライコウにナイフが1本飛んで来て、顔のすぐ横の壁に刺さった。
『動くな!お前がいくら素早く動けても、このナイフには敵うまい!北見はどこだ、言え!』
サターンはそう言うと、2本目のナイフをライコウの左脇の下に投げ刺した。バイク用のグローブをハメているので、アイを呼べない。百発百中のサターンのナイフでは、グローブを外す時間が無い。ライコウはピンチに陥る。
『動くな!』
グローブを脱ごうとライコウが右手を動かした時、サターンのナイフがライコウの右頬をかすめて5センチほどの切り傷ができた。不敵な笑いを浮かべて次のナイフを懐から取ろうとサターンが一瞬下を向いた時、ライコウは左の脇下に刺さっているナイフを素早く抜いて、サターンへ向けて投げた。悲鳴をあげて倒れるサターンの左目には、ナイフが突き刺さっていた。
ピンチを脱出したライコウは、エルドニア領事館を見張っているカボ子と五郎の元へ戻って来た。
『変わったことは?』
『異常無し。奴らが襲って来るのは夜ですよ』
菓子パンを食べながら、五郎が言った。領事館に車が入って行くのを見たライコウは尋ねた。
『あれは?』
『経済大臣のパーティがあるのよ』
菓子パンを食べながら、カボ子が言った。経済大臣のほかに20組程が領事館へ入って行くのを見たという。こんな時にパーティを開くなんて、とライコウは不審に思うのだった。
(つづく)
★★★★★★★★★★★★
企画;衛藤公彦
原作;川内康範
脚本;田村多津夫
音楽;池多孝春
殺陣;渡辺高光
特技監督;真野田陽一
監督;高瀬昌弘
【前回までの話は・・・モージンガーのワナにはまり暗黒世界に閉じ込められたアイは、モンちゃんの汚れなき心が生んだ奇跡によって暗闇から脱出して、現金輸送車を襲うモージンガーを倒した。撃たれて瀕死のライコウはアイの蘇生光線で蘇り、海藤警部が運転する現金輸送車をライコウが先導しながら、エルドニア領事館まで現金を無事に送り届けるのだった・・・】
◆エルドニア領事館へ運ばれた現金500億円は金塊に変えられ、明日エルドニア本国へ船で運ばれることになっていた。領事館前では厳重な警戒網が敷かれ、複数の警察官が行き来していた。襲撃に失敗したぐらいであきらめるような源海龍とも思えないと、領事館の見える場所からカボ子はライコウと五郎に言った。だが、腕を組んでライコウが考えていることは、そのことでは無い。カボ子がライコウに話しかけると、ライコウは言った。
『気になるんだよ、北見のことが』
『先輩!アイツは源海龍の陰謀の片棒を担ぎ、モンちゃんを誘拐したんですよ!』
五郎は怒ったようにそう言うが、北見の正義感をよく知るライコウには、北見が源海龍に利用されたに違いないと思うのだ。「先輩を仇のように思っている北見なんか・・・」と五郎が言いかけた時、ライコウはバイクにまたがり走り去っていた。北見八郎のような男を放っておけない性分のライコウであった。
『アイに立ち向かう、次の地獄の使者はいないのか!』
魔王キングコブラが悪霊界に戻り思案をしていると、名乗りを挙げる者がいた。
『このケラリンに、おまかせください!』
『おお、よーし。頼もしそうなヤツ!よし行こう』
(ケラリンを連れてアジトへ戻ったキングコブラ)
キングコブラはケラリンを連れてアジトへ戻って来ると、人間態に姿を変えた。殺し屋サターンに姿を変えたケラリンに、源海龍は命令した。
『北見も、我々の行動をうすうす気づいているだろう。生かしておくわけにはいかん。総裁室にいる北見を、消せ!』
『了解しました』
得意のナイフ投げで、殺し屋サターンは北見を狙う。その頃、北見は総裁室で昨日の出来事を思い返していた。
『トランクに子供が入っていたことを、総裁は知っていたのか・・・いや、そんなはずは。一体誰が、何のために子供を』
(サターンのナイフが北見を狙う)
そんなことを考えている時、突然総裁室の扉が開き、赤覆面の男数名が入ってきた。あとから殺し屋サターンが現れ、驚いた北見をナイフで狙いながらサターンは言った。
『北見、死んでもらう!』
『何?お前達は何者だ?』
『これから死ぬ者に、名乗っても仕方がないだろう。死ね!』
サターンが北見の心臓めがけて投げたナイフを、北見は机の上にあったアタッシュケースで素早く受けた。そして、ナイフが刺さったままのアタッシュケースをサターンに投げ返すと、フタが開いてケースの中のダイヤが散乱した。総裁室は一階にあった。開いていた窓から素早く外へ飛びだすと、北見は走って逃げた。そこへ、ライコウの乗ったバイクが通りかかった。
右腕を押さえながら逃げてくる北見を、ライコウは見つけた。赤覆面の男達と頭髪の無い大男が、北見の後を追いかけてくる。ライコウは一度赤覆面達にバイクで突っ込み、反転してまた突っ込んでいく。連中が隊列を乱している間にライコウは北見をタンデムシート(後ろの席)に乗せると、すぐにその場を去って行った。
逃げおおせたとみて、ライコウは近くの公園で休むことにした。ベンチに座った北見は、すぐにライコウに謝罪した。
(モンちゃんを・・・謝る北見(右))
『すまん。知らなかったとはいえ、モンちゃんをあんな目に合わせたことを謝る』
『すべて、源海龍の企みだ。総裁もお前も、奴に利用されたんだ。なぁ、北見。源海龍の正体を突き止めることだ。それが、死んだ大沢山さんのためにも・・・』
『オヤジさんを殺した源海龍は、俺の手で倒す!オレは、ひとりでやりたいんだ!』
北見はそう言って、ライコウの前から去って行った。一方、北見を逃がしたサターンから連絡が入り、朱玉は怒りを露わにした。二度と失敗は許さないと、最後通告するのだった。
源海龍は、エルドニア領事館内にある金塊をどうしても手に入れるつもりでいる。夜になれば、警戒はより厳重になるだろう。だから、明るいうちに堂々と金塊をいただくと言って、源海龍はニヤリと笑った。
『間も無く、エルドニアの経済大臣の記者会見が始まる』
源海龍はそう言うと、朱玉に策を授けた。
(朱玉は記者を装いエレベータに・・・)
記者会見の後、2人のSPに守られてエレベータに乗ろうとするエルドニア経済相に、女性週刊誌の記者を装って近づいた朱玉は、「女性読者のために奥様のことを記事にしたい」と言って、強引に経済相に同乗の許可を得た。トビラが閉まりエレベータが下がって行くと、質問をするふりをして万年筆型の毒ガス発射装置で三人を毒殺した。途中4階のボタンを押すと、ドアが開いてそこに待っていたのは源海龍であった。
北見と別れたライコウは、エルドニア領事館へバイクで戻る途中、赤覆面達の襲撃に遭う。北見殺害命令を受けた殺し屋サターンは、ライコウに邪魔されて北見を逃がした。そこでライコウを襲って、北見の居場所を知ろうとしたのだ。バイクを下りて赤覆面達と戦うライコウにナイフが1本飛んで来て、顔のすぐ横の壁に刺さった。
『動くな!お前がいくら素早く動けても、このナイフには敵うまい!北見はどこだ、言え!』
サターンはそう言うと、2本目のナイフをライコウの左脇の下に投げ刺した。バイク用のグローブをハメているので、アイを呼べない。百発百中のサターンのナイフでは、グローブを外す時間が無い。ライコウはピンチに陥る。
『動くな!』
グローブを脱ごうとライコウが右手を動かした時、サターンのナイフがライコウの右頬をかすめて5センチほどの切り傷ができた。不敵な笑いを浮かべて次のナイフを懐から取ろうとサターンが一瞬下を向いた時、ライコウは左の脇下に刺さっているナイフを素早く抜いて、サターンへ向けて投げた。悲鳴をあげて倒れるサターンの左目には、ナイフが突き刺さっていた。
ピンチを脱出したライコウは、エルドニア領事館を見張っているカボ子と五郎の元へ戻って来た。
『変わったことは?』
『異常無し。奴らが襲って来るのは夜ですよ』
菓子パンを食べながら、五郎が言った。領事館に車が入って行くのを見たライコウは尋ねた。
『あれは?』
『経済大臣のパーティがあるのよ』
菓子パンを食べながら、カボ子が言った。経済大臣のほかに20組程が領事館へ入って行くのを見たという。こんな時にパーティを開くなんて、とライコウは不審に思うのだった。
(つづく)
★★★★★★★★★★★★
ダイヤモンド◇アイ(22) [ダイヤモンドアイ・ドラマ3]
今回は、第11話《ケラリン族の大挑戦/ 後編》を取りあげます。
【前回までの話は・・・いろいろなことを知って北見が総裁に疑いを持ち始める前に、源海龍は北見を消しにかかった。総裁室にいるところを殺し屋サターンに襲撃された北見は、危うい場面でライコウに助けられる。源海龍の正体を二人で暴こうとライコウは北見に協力を求めるが、北見は自分ひとりでやると言ってその申し出を断るのだった・・・】
◆エルドニア領事館でこれからパーティがあることを知ったライコウは、疑問を感じていた。
『こんな時に、パーティを開くなんて・・・エルドニアの人は、この横浜には何人もいないが』
カボ子たちが見張りを始めてから、領事館に入った車の数は20台を超えていた。最初はただのパーティだと思っていたカボ子も五郎も、疑問を持ち始めた。ライコウは、横浜界隈に住むエルドニア人の人数をすぐに調査するよう五郎に依頼した。
その頃、ライコウと別れた北見八郎は、大沢山京子が勤務する保育園「みどりの園」の総裁室にいた。怪我の手当てを京子にしてもらいながら、北見は源海龍こそが悪人であり、自分も総裁も源海龍に騙されている可能性を京子に語った。
京子にも、北見に話があった。「みどりの園」が資金難で閉園することになったのだ。総裁から連絡があり、それ以降総裁の行方が分からないのだ。総裁は源海龍一味に捕まってしまったのかもしれないと、北見は考えた。そう思いながら、北見が何気なく総裁の机の上にある置物をつかんで持ち上げた時、置物の下に無線通信機を見つけたのだ。ボリュームを上げると、会話が聞こえてきた。
ハラダテッコウジョとか、エルドニアリョウジカンという言葉が聞こえている。この通信内容は源海龍一味の悪だくみと関係があるのではないか、と北見は思うのだった。このことを警察に知らせるよう京子に指示すると、北見はひとりで鉄工所へ行ってみることにした。ふたりは一緒に事務所を出ると、京子が話し出した。
『あの無線機が総裁室にあったということは・・・』
『総裁も悪事に加わっているかもしれない。そうじゃないかもしれない。それを、これから確かめに行くんだ』
北見のことを密かに慕う京子は、ふたり一緒に警察へ行こうと北見に言うのだった。一人で危険なことに首を突っ込む必要は無いと、京子は反対した。だが、正義感の強い北見は、どうしても自分の目で確かめたかった。
夕方になり、エルドニア領事館のパーティは終わった。領事館から、次々と車が出てくる。自転車に乗って調査に出かけた五郎が、息を切らしてやっと戻って来た。五郎の話では、入国管理局に聞いたところ、横浜に住むエルドニア人は3人、東京にも2人しかいないと言うのだ。
『パーティには、20人以上が来ていたわよ!』
『五郎は、すぐ警察に連絡しろ!領事館内の現金が無くなっているかもしれない!』
五郎にそう言った時、エルドニア経済相を乗せた車が領事館を出て行くのが、ライコウには見えた。すぐにバイクに乗り、そのあとをライコウは追っていく。一方、ハラダテッコウジョを探し出した北見は、その敷地内の鉄柱や鉄パイプなどたくさんの鉄材が積まれた場所に隠れながら、何が起こるのか見極めようとしていた。
しばらくすると、一台の車が鉄工所の敷地内に到着した。北見は高く積まれた鉄柱の陰から、その様子をジッと見ている。車から降りてきたのは、エルドニア経済相とその妻と思われる女性だった。だが、経済相はその場であごヒゲを取り、鼻下のヒゲを取り、眉毛を取った。すべてが変装用具だ。かぶっていた帽子を取ると、まったく別の顔の男になった。
(経済相に化けていた源海龍)
『アイツが、源海龍か』
北見は小声でそう言いながら、ジッと様子を見ている。妻らしき女性も変装を解くと、車の周りに集まっている赤い覆面の男達に指示を出していた。赤覆面の一人が車のトランクを開け、中から銀色のトランクケースを取り出した時、もう1台、車がやって来た。ドアを開け、運転手は、源海龍らしき男に緊急事態を告げているようであった。
『たいへんです!警察が動いて、仲間が捕まりました!』
『何!作戦は完全なはずなのに、なぜ?』
『うろたえるな!まだ、ここを突き止められたわけでは無い!予定通り、行動すればいいんだ。落ちついてやればいい』
運転手の報告に女は焦りをみせたが、男は余裕がある。一味は、エルドニア領事館から盗んできた500億円相当の金塊をこの鉄工所内で溶かし、ドラム缶に流し込んでアジトへ運ぶつもりであった。たとえ警察でも、この場所を突き止めるにはしばらく時間がかかると、男は考えたのだ。
そう言って源海龍は、余裕のある声で笑った。北見は、奴らが何を話しているのかを聞こうとして、少しずつ場所を動いて近づいていく。そして、その男の笑い声を聞いていて、自分が知っているある人物の顔が浮かぶのだった。
(慈善団体の総裁はもう1つの顔)
『総裁が、源海龍だったのか!』
北見の心の中に、悔しい気持ちが湧いてきた。その時、北見の口を後ろからふさぎながら肩を引っ張り、小声で話しかける者がいた。
『待て!北見』
『・・・ライコウ!』
『もうすぐ警察が来る!』
『もし間に合わなかったら?』
『その時は、一緒に戦おう!』
北見は少し間を置いて、右手を出した。ライコウは、それを合意の握手だと思った。だが、次の瞬間、ライコウは不意を突かれて腹部を殴られてしまった。ライコウは意識を失った。
『オヤジさんの仇の源海龍は、俺の手で倒す。そう言ったはずだ』
戦うために、源海龍に少しずつ近づいて行く北見。だが、鉄クズに足を取られ、存在を知られてしまった。
『北見!仕事の邪魔だ、殺せ!』
北見は、武器を持つ十数名の赤覆面の男達に囲まれてしまった。多勢に無勢。最初は勢いよく動けても、やがて疲れがくる。拳銃を撃ちかけられ、急いで隠れようとする北見は左胸に一発食らってしまった。拳銃の音で目が覚めたライコウの目には、隠れている場所から真っ直ぐ先に胸を撃たれた北見が見えていた。彼を救おうと参戦するために、積まれた鉄パイプの上にライコウは姿を現した。ライコウの姿を見て、またしても作戦の邪魔をされた源海龍の怒りは爆発した。
『作戦の失敗は、やはりヤツだったのか!殺せ!』
『奴の始末は、このサターンにお任せを!』
そこへナイフを見せながら、左目に眼帯を付けた殺し屋サターンが現れた。逃げようとする源海龍に、力を振り絞って立ち向かう北見。だが、サターンのナイフが北見の心臓付近を貫いた。ライコウに群がる赤覆面達、源海龍は朱玉に付き添われて現場から逃げて行く。
赤覆面に囲まれて、ライコウは北見に近づけない。倒れている北見にサターンは近づき、北見の息の根を止めようとしている。ライコウは叫んだ。
『アイよーっ!』
(外道照身、霊波光線!)
(正体見たり!)
『外道照身、霊波光線!正体見たり!前世魔人ケラリン!』
『あぁ、バレタカァ~!』
姿を自在に消すことが出来るケラリンに、アイは手を焼いていた。アイのステッキ光線を、ケラリンは自慢のナイフではねかえしてしまう。倒れている北見のすぐ横に、アイと対峙するケラリンの右足がある。北見はアイを援護するために、右足をつかんだまま離さずにいた。ケラリンは脱出するために、ナイフで北見にとどめを刺したのだ。
アイはこの一瞬を逃さず、必殺ロイヤルパンチをケラリンの頭部へ撃ち込むのだった。北見は自分の命と引き換えに、ケラリンを倒したのだ。源海龍は悪霊界へ逃げてしまい、赤覆面達は全員ライコウが倒した。アイは北見の亡き骸に敬意を払い、ライコウに言った。
『愛と正義に献身して命を捧げた北見八郎。手厚く葬ってくれ』
『北見、見ていてくれ。源海龍は必ず倒す!』
北見の亡き骸を両手で抱えながら、ライコウは夕陽に向かって誓うのだった。
(終わり)
★★★★★★★★★★★★
テレビ放映では、「ケラリンにお任せください!」というべきところを、
「ケろリンに」と言っている部分がある。ケロリンとは、有名な頭痛薬の名前だ。
あんな魔人が出てきたら、ショックでどんな頭痛も治るだろうが(笑)
【前回までの話は・・・いろいろなことを知って北見が総裁に疑いを持ち始める前に、源海龍は北見を消しにかかった。総裁室にいるところを殺し屋サターンに襲撃された北見は、危うい場面でライコウに助けられる。源海龍の正体を二人で暴こうとライコウは北見に協力を求めるが、北見は自分ひとりでやると言ってその申し出を断るのだった・・・】
◆エルドニア領事館でこれからパーティがあることを知ったライコウは、疑問を感じていた。
『こんな時に、パーティを開くなんて・・・エルドニアの人は、この横浜には何人もいないが』
カボ子たちが見張りを始めてから、領事館に入った車の数は20台を超えていた。最初はただのパーティだと思っていたカボ子も五郎も、疑問を持ち始めた。ライコウは、横浜界隈に住むエルドニア人の人数をすぐに調査するよう五郎に依頼した。
その頃、ライコウと別れた北見八郎は、大沢山京子が勤務する保育園「みどりの園」の総裁室にいた。怪我の手当てを京子にしてもらいながら、北見は源海龍こそが悪人であり、自分も総裁も源海龍に騙されている可能性を京子に語った。
京子にも、北見に話があった。「みどりの園」が資金難で閉園することになったのだ。総裁から連絡があり、それ以降総裁の行方が分からないのだ。総裁は源海龍一味に捕まってしまったのかもしれないと、北見は考えた。そう思いながら、北見が何気なく総裁の机の上にある置物をつかんで持ち上げた時、置物の下に無線通信機を見つけたのだ。ボリュームを上げると、会話が聞こえてきた。
ハラダテッコウジョとか、エルドニアリョウジカンという言葉が聞こえている。この通信内容は源海龍一味の悪だくみと関係があるのではないか、と北見は思うのだった。このことを警察に知らせるよう京子に指示すると、北見はひとりで鉄工所へ行ってみることにした。ふたりは一緒に事務所を出ると、京子が話し出した。
『あの無線機が総裁室にあったということは・・・』
『総裁も悪事に加わっているかもしれない。そうじゃないかもしれない。それを、これから確かめに行くんだ』
北見のことを密かに慕う京子は、ふたり一緒に警察へ行こうと北見に言うのだった。一人で危険なことに首を突っ込む必要は無いと、京子は反対した。だが、正義感の強い北見は、どうしても自分の目で確かめたかった。
夕方になり、エルドニア領事館のパーティは終わった。領事館から、次々と車が出てくる。自転車に乗って調査に出かけた五郎が、息を切らしてやっと戻って来た。五郎の話では、入国管理局に聞いたところ、横浜に住むエルドニア人は3人、東京にも2人しかいないと言うのだ。
『パーティには、20人以上が来ていたわよ!』
『五郎は、すぐ警察に連絡しろ!領事館内の現金が無くなっているかもしれない!』
五郎にそう言った時、エルドニア経済相を乗せた車が領事館を出て行くのが、ライコウには見えた。すぐにバイクに乗り、そのあとをライコウは追っていく。一方、ハラダテッコウジョを探し出した北見は、その敷地内の鉄柱や鉄パイプなどたくさんの鉄材が積まれた場所に隠れながら、何が起こるのか見極めようとしていた。
しばらくすると、一台の車が鉄工所の敷地内に到着した。北見は高く積まれた鉄柱の陰から、その様子をジッと見ている。車から降りてきたのは、エルドニア経済相とその妻と思われる女性だった。だが、経済相はその場であごヒゲを取り、鼻下のヒゲを取り、眉毛を取った。すべてが変装用具だ。かぶっていた帽子を取ると、まったく別の顔の男になった。
(経済相に化けていた源海龍)
『アイツが、源海龍か』
北見は小声でそう言いながら、ジッと様子を見ている。妻らしき女性も変装を解くと、車の周りに集まっている赤い覆面の男達に指示を出していた。赤覆面の一人が車のトランクを開け、中から銀色のトランクケースを取り出した時、もう1台、車がやって来た。ドアを開け、運転手は、源海龍らしき男に緊急事態を告げているようであった。
『たいへんです!警察が動いて、仲間が捕まりました!』
『何!作戦は完全なはずなのに、なぜ?』
『うろたえるな!まだ、ここを突き止められたわけでは無い!予定通り、行動すればいいんだ。落ちついてやればいい』
運転手の報告に女は焦りをみせたが、男は余裕がある。一味は、エルドニア領事館から盗んできた500億円相当の金塊をこの鉄工所内で溶かし、ドラム缶に流し込んでアジトへ運ぶつもりであった。たとえ警察でも、この場所を突き止めるにはしばらく時間がかかると、男は考えたのだ。
そう言って源海龍は、余裕のある声で笑った。北見は、奴らが何を話しているのかを聞こうとして、少しずつ場所を動いて近づいていく。そして、その男の笑い声を聞いていて、自分が知っているある人物の顔が浮かぶのだった。
(慈善団体の総裁はもう1つの顔)
『総裁が、源海龍だったのか!』
北見の心の中に、悔しい気持ちが湧いてきた。その時、北見の口を後ろからふさぎながら肩を引っ張り、小声で話しかける者がいた。
『待て!北見』
『・・・ライコウ!』
『もうすぐ警察が来る!』
『もし間に合わなかったら?』
『その時は、一緒に戦おう!』
北見は少し間を置いて、右手を出した。ライコウは、それを合意の握手だと思った。だが、次の瞬間、ライコウは不意を突かれて腹部を殴られてしまった。ライコウは意識を失った。
『オヤジさんの仇の源海龍は、俺の手で倒す。そう言ったはずだ』
戦うために、源海龍に少しずつ近づいて行く北見。だが、鉄クズに足を取られ、存在を知られてしまった。
『北見!仕事の邪魔だ、殺せ!』
北見は、武器を持つ十数名の赤覆面の男達に囲まれてしまった。多勢に無勢。最初は勢いよく動けても、やがて疲れがくる。拳銃を撃ちかけられ、急いで隠れようとする北見は左胸に一発食らってしまった。拳銃の音で目が覚めたライコウの目には、隠れている場所から真っ直ぐ先に胸を撃たれた北見が見えていた。彼を救おうと参戦するために、積まれた鉄パイプの上にライコウは姿を現した。ライコウの姿を見て、またしても作戦の邪魔をされた源海龍の怒りは爆発した。
『作戦の失敗は、やはりヤツだったのか!殺せ!』
『奴の始末は、このサターンにお任せを!』
そこへナイフを見せながら、左目に眼帯を付けた殺し屋サターンが現れた。逃げようとする源海龍に、力を振り絞って立ち向かう北見。だが、サターンのナイフが北見の心臓付近を貫いた。ライコウに群がる赤覆面達、源海龍は朱玉に付き添われて現場から逃げて行く。
赤覆面に囲まれて、ライコウは北見に近づけない。倒れている北見にサターンは近づき、北見の息の根を止めようとしている。ライコウは叫んだ。
『アイよーっ!』
(外道照身、霊波光線!)
(正体見たり!)
『外道照身、霊波光線!正体見たり!前世魔人ケラリン!』
『あぁ、バレタカァ~!』
姿を自在に消すことが出来るケラリンに、アイは手を焼いていた。アイのステッキ光線を、ケラリンは自慢のナイフではねかえしてしまう。倒れている北見のすぐ横に、アイと対峙するケラリンの右足がある。北見はアイを援護するために、右足をつかんだまま離さずにいた。ケラリンは脱出するために、ナイフで北見にとどめを刺したのだ。
アイはこの一瞬を逃さず、必殺ロイヤルパンチをケラリンの頭部へ撃ち込むのだった。北見は自分の命と引き換えに、ケラリンを倒したのだ。源海龍は悪霊界へ逃げてしまい、赤覆面達は全員ライコウが倒した。アイは北見の亡き骸に敬意を払い、ライコウに言った。
『愛と正義に献身して命を捧げた北見八郎。手厚く葬ってくれ』
『北見、見ていてくれ。源海龍は必ず倒す!』
北見の亡き骸を両手で抱えながら、ライコウは夕陽に向かって誓うのだった。
(終わり)
★★★★★★★★★★★★
テレビ放映では、「ケラリンにお任せください!」というべきところを、
「ケろリンに」と言っている部分がある。ケロリンとは、有名な頭痛薬の名前だ。
あんな魔人が出てきたら、ショックでどんな頭痛も治るだろうが(笑)
ダイヤモンド◇アイ(23) [ダイヤモンドアイ・ドラマ3]
今回は、第13話《キングコブラの大決戦!/ 前編》を取りあげます。
企画;衛藤公彦
原作;川内康範
脚本;伊東恒久
音楽;池多孝春
殺陣;渡辺高光
特技監督;真野田陽一
監督;六鹿英雄
【第12話の内容は・・・ハリケーン最終作戦と名付けて源海龍が狙うもの、それは大量殺人兵器だ。レーザー光線銃を使い、日本人の大量殺りくを計画するキングコブラ。源海龍はウルフに命じて、レーザー光線の開発者・湯浅博士を誘拐し、レーザー銃も手に入れた。だが、集光レンズが無ければ、殺人光線は発射されない。気転を利かせた湯浅博士は、誘拐される車中から集光レンズを投げ捨てることに成功した。
一方、大沢山京子は、働いていた「みどりの園」が閉園したため、父の遺産を使って小さな学園「子供たちの家」を開園した。預かっている子供は5名。ただ一人の男児・キャプテンは、偶然にも博士がタバコの空き箱に入れて捨てた集光レンズを拾ってしまう。綺麗な宝物として、誰にも内緒である所へ埋めておくのだった。実験中に誘拐したにも関わらず博士がレンズを持っていないことに怒る源海龍は、殺し屋ウルフをきつく問い詰めた。ウルフは、博士がタバコの空き箱を車外へ捨てたことを思い出した。そして、近くにいたキャプテンの顔も。
集光レンズを持つキャプテンを襲いにきたウルフ(正体はゲララチン)を、ライコウとダイヤモンド・アイは打ち倒した。キャプテンに集光レンズを見せられたライコウは、湯浅博士が行方不明であることから、源海龍に誘拐されたにちがいないと推測する・・・】
◆ライコウとダイヤモンド・アイによる度重なる作戦の妨害に、キングコブラは怒り心頭に発していた。キングコブラは片腕の朱玉を呼んで言った。
『これ以上、一日たりともアイめを生かしておくわけにはいかん。今度こそ奴を八つ裂きにして、地獄の底へ叩き込むのだ!』
普段は仕事ができる女性秘書の姿をしている朱玉だが、瞬時に醜い前世魔人ケロキャットに姿を変えると、キングコブラの期待に応える返事をするのだった。
『お任せくださいませ!これさえあれば、奴のロイヤルパンチなど通用いたしません!』
そう言ってケロキャットは、ロイヤルパンチ封じ用に左手で鋼鉄製の防護盾を持ち、右手には先端にトゲの付いた打撃用武器を持っていた。ハリケーン最終作戦を軌道に乗せるためには、絶対に集光レンズが必要なのだ。キングコブラがケロキャットに下した命令、それは集光レンズを奪え、であった。
キャプテンは、冒険好きな元気な男児だ。海賊船の船長を装って仲間の女児たち4人に命令を出す、そんな元気な男児なのだ。学園に程近い林の中で、海賊船の船長気取りで仲間と遊んでいたキャプテンは、突然現れた朱玉と赤覆面達によって捕まってしまった。
4人の女児たちから連絡を受けたライコウは、すぐにバイクでキャプテンを乗せた車の後を追いかけた。だが、朱玉の指示で待っていた赤覆面達に邪魔され、その車を見失ってしまうのだった。
一方、集光レンズの場所について口を割らない湯浅博士は、椅子に縛られて殴る蹴るの拷問を受けていた。そこへ、朱玉がキャプテンを連れて戻って来た。博士は、この男児がレンズを拾ったことを知らない。だが、目の前で殴られている男児を、博士は見て見ぬふりは出来ない。それに付け込んだ源海龍は男児を痛めつけておいて、集光レンズを新しく作るよう脅す作戦に切り替えた。博士にとっては、痛めつけられる男児を見ることの方が苦痛なのだ。
『博士、協力しちゃダメだよ!』
(博士(右端)の目の前で殴られるキャプテン)
(拳銃を無理やり握らせて・・・)
キャプテンは、必死に殴られる痛みと戦っていた。すると源海龍は、なかなか「協力する」と言わない博士に銃を握らせ、博士の手でキャプテンを処刑させようとする。さすがの博士も、協力せざるを得なくなった。博士は実験室に連れていかれ、新しい集光レンズ作りを始めるのだった。
ライコウは、キャプテンを乗せた車を追いかけていて赤覆面達に襲われた周辺のどこかに、奴らのアジトがあるものと睨んでいた。この岩山には隠れる場所が無い。それなのに赤覆面達が出て来たということは、秘密の出入り口があるに違いないと読んだのだ。岩山の頂上へ登った所で、手に触った倒木を偶然動かしたところ、入口らしき扉を発見するライコウ。そこにある縄バシゴを下りて行くと、そこはどうやらアジトのようであった。
だが、センサーが感知して、ライコウの潜入は源海龍の知るところとなった。アジト内で赤覆面数人の襲撃を受けたが、そのうちの一人にキャプテンの捕まっている場所を白状させるライコウ。ライコウが聞きだしたその部屋へ入って行くと、確かにキャプテンが縛られて捕まっていた。
『キャプテン、しっかりするんだ!』
『あっ、ライコウさん!』
だが、それは源海龍のワナだ。壁の隠しトビラが開いて源海龍と朱玉が顔を出し、ライコウ達を見ている。うれしそうに源海龍が告げた。
『ライコウ。うまくワナにかかったな!これで、アイも呼べまい』
源海龍は朱玉に命じて、室内を暗くしてから赤外線ライトを点灯させた。部屋は真っ暗だが、赤外線が見えるゴーグルを着けた源海龍には二人の様子がよく見える。ライコウは、手探りするように周りをうかがっている。光が無いのでアイを呼べないし、ライコウにはどこから攻撃してくるのか、相手の様子が一切分からない。源海龍は集光レンズが出来次第、ライコウとキャプテンをレーザーガンで処刑するつもりであった。
『ライコウ。我々のレーザーガンの人体実験第一号に選ばれたことを、光栄に思うのね』
出来上がった集光レンズを取り付けたレーザーガンを持ってくると、朱玉はニヤリと笑いながらゴーグルを着け、壁の隠しトビラから一発撃った。一発目はわざと外して、ライコウの頭上20センチ付近にレーザー光線が当たった。当たった場所が赤く焼け、「ボン!」と爆発音がして驚くライコウ。二発目もわざと外して、恐怖心をあおる朱玉。源海龍に言われた朱玉は、真っ暗な部屋の中へ入って来た。
『ゴーグルを着けていないお前は、めくら同然!今までの恨み、たっぷりお返しさせてもらうわ!』
『キャプテン、オレに捕まっていろ!』
何も見えないライコウはキャプテンの手を引きながらそう言い、ライコウの姿がよく見える朱玉は、ゆっくりと料理してやると言わんばかりにジワリジワリと狙いを定めて近寄って行く。危機一髪のライコウとキャプテン!
(つづく)
★★★★★★★★★★★★
企画;衛藤公彦
原作;川内康範
脚本;伊東恒久
音楽;池多孝春
殺陣;渡辺高光
特技監督;真野田陽一
監督;六鹿英雄
【第12話の内容は・・・ハリケーン最終作戦と名付けて源海龍が狙うもの、それは大量殺人兵器だ。レーザー光線銃を使い、日本人の大量殺りくを計画するキングコブラ。源海龍はウルフに命じて、レーザー光線の開発者・湯浅博士を誘拐し、レーザー銃も手に入れた。だが、集光レンズが無ければ、殺人光線は発射されない。気転を利かせた湯浅博士は、誘拐される車中から集光レンズを投げ捨てることに成功した。
一方、大沢山京子は、働いていた「みどりの園」が閉園したため、父の遺産を使って小さな学園「子供たちの家」を開園した。預かっている子供は5名。ただ一人の男児・キャプテンは、偶然にも博士がタバコの空き箱に入れて捨てた集光レンズを拾ってしまう。綺麗な宝物として、誰にも内緒である所へ埋めておくのだった。実験中に誘拐したにも関わらず博士がレンズを持っていないことに怒る源海龍は、殺し屋ウルフをきつく問い詰めた。ウルフは、博士がタバコの空き箱を車外へ捨てたことを思い出した。そして、近くにいたキャプテンの顔も。
集光レンズを持つキャプテンを襲いにきたウルフ(正体はゲララチン)を、ライコウとダイヤモンド・アイは打ち倒した。キャプテンに集光レンズを見せられたライコウは、湯浅博士が行方不明であることから、源海龍に誘拐されたにちがいないと推測する・・・】
◆ライコウとダイヤモンド・アイによる度重なる作戦の妨害に、キングコブラは怒り心頭に発していた。キングコブラは片腕の朱玉を呼んで言った。
『これ以上、一日たりともアイめを生かしておくわけにはいかん。今度こそ奴を八つ裂きにして、地獄の底へ叩き込むのだ!』
普段は仕事ができる女性秘書の姿をしている朱玉だが、瞬時に醜い前世魔人ケロキャットに姿を変えると、キングコブラの期待に応える返事をするのだった。
『お任せくださいませ!これさえあれば、奴のロイヤルパンチなど通用いたしません!』
そう言ってケロキャットは、ロイヤルパンチ封じ用に左手で鋼鉄製の防護盾を持ち、右手には先端にトゲの付いた打撃用武器を持っていた。ハリケーン最終作戦を軌道に乗せるためには、絶対に集光レンズが必要なのだ。キングコブラがケロキャットに下した命令、それは集光レンズを奪え、であった。
キャプテンは、冒険好きな元気な男児だ。海賊船の船長を装って仲間の女児たち4人に命令を出す、そんな元気な男児なのだ。学園に程近い林の中で、海賊船の船長気取りで仲間と遊んでいたキャプテンは、突然現れた朱玉と赤覆面達によって捕まってしまった。
4人の女児たちから連絡を受けたライコウは、すぐにバイクでキャプテンを乗せた車の後を追いかけた。だが、朱玉の指示で待っていた赤覆面達に邪魔され、その車を見失ってしまうのだった。
一方、集光レンズの場所について口を割らない湯浅博士は、椅子に縛られて殴る蹴るの拷問を受けていた。そこへ、朱玉がキャプテンを連れて戻って来た。博士は、この男児がレンズを拾ったことを知らない。だが、目の前で殴られている男児を、博士は見て見ぬふりは出来ない。それに付け込んだ源海龍は男児を痛めつけておいて、集光レンズを新しく作るよう脅す作戦に切り替えた。博士にとっては、痛めつけられる男児を見ることの方が苦痛なのだ。
『博士、協力しちゃダメだよ!』
(博士(右端)の目の前で殴られるキャプテン)
(拳銃を無理やり握らせて・・・)
キャプテンは、必死に殴られる痛みと戦っていた。すると源海龍は、なかなか「協力する」と言わない博士に銃を握らせ、博士の手でキャプテンを処刑させようとする。さすがの博士も、協力せざるを得なくなった。博士は実験室に連れていかれ、新しい集光レンズ作りを始めるのだった。
ライコウは、キャプテンを乗せた車を追いかけていて赤覆面達に襲われた周辺のどこかに、奴らのアジトがあるものと睨んでいた。この岩山には隠れる場所が無い。それなのに赤覆面達が出て来たということは、秘密の出入り口があるに違いないと読んだのだ。岩山の頂上へ登った所で、手に触った倒木を偶然動かしたところ、入口らしき扉を発見するライコウ。そこにある縄バシゴを下りて行くと、そこはどうやらアジトのようであった。
だが、センサーが感知して、ライコウの潜入は源海龍の知るところとなった。アジト内で赤覆面数人の襲撃を受けたが、そのうちの一人にキャプテンの捕まっている場所を白状させるライコウ。ライコウが聞きだしたその部屋へ入って行くと、確かにキャプテンが縛られて捕まっていた。
『キャプテン、しっかりするんだ!』
『あっ、ライコウさん!』
だが、それは源海龍のワナだ。壁の隠しトビラが開いて源海龍と朱玉が顔を出し、ライコウ達を見ている。うれしそうに源海龍が告げた。
『ライコウ。うまくワナにかかったな!これで、アイも呼べまい』
源海龍は朱玉に命じて、室内を暗くしてから赤外線ライトを点灯させた。部屋は真っ暗だが、赤外線が見えるゴーグルを着けた源海龍には二人の様子がよく見える。ライコウは、手探りするように周りをうかがっている。光が無いのでアイを呼べないし、ライコウにはどこから攻撃してくるのか、相手の様子が一切分からない。源海龍は集光レンズが出来次第、ライコウとキャプテンをレーザーガンで処刑するつもりであった。
『ライコウ。我々のレーザーガンの人体実験第一号に選ばれたことを、光栄に思うのね』
出来上がった集光レンズを取り付けたレーザーガンを持ってくると、朱玉はニヤリと笑いながらゴーグルを着け、壁の隠しトビラから一発撃った。一発目はわざと外して、ライコウの頭上20センチ付近にレーザー光線が当たった。当たった場所が赤く焼け、「ボン!」と爆発音がして驚くライコウ。二発目もわざと外して、恐怖心をあおる朱玉。源海龍に言われた朱玉は、真っ暗な部屋の中へ入って来た。
『ゴーグルを着けていないお前は、めくら同然!今までの恨み、たっぷりお返しさせてもらうわ!』
『キャプテン、オレに捕まっていろ!』
何も見えないライコウはキャプテンの手を引きながらそう言い、ライコウの姿がよく見える朱玉は、ゆっくりと料理してやると言わんばかりにジワリジワリと狙いを定めて近寄って行く。危機一髪のライコウとキャプテン!
(つづく)
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