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快傑ライオン丸(19) [ライオン丸・ドラマ2]

今回は、第28話《悪の剣士タイガージョー・前編》を取りあげます。

原作;うしおそうじ
脚本;田村多津夫
企画;うしおそうじ 別所孝治
音楽;小林亜星
殺陣;渡辺高光
監督;石黒光一


【前回までの話は・・・舟でゴースン島へ上陸した獅子丸たちは、祭壇に祭られたゴースンと対面し、その異様さに驚く。さらに島が崩壊し始めた為、命からがら脱出した三人は、島を突き破って現れた巨大なゴースンの姿に唖然とする。一撃を食らわせようとライオン丸に変身した獅子丸だが、巨大なゴースンの前に簡単にねじ伏せられてしまう。そして、あの男がタイガージョーと名乗り、再び獅子丸に挑戦してきたが、ライオン丸の太刀はタイガージョーの右目を貫いていた・・・】

◆獅子丸は、立ち直れないほどの衝撃を心に受け、表情は沈んでいた。沙織と小助が少し離れた所で彼を見守っているが、腰かけた同じ姿勢のまま、もう随分時が経つ。

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あの巨大ゴースンとの戦いは、獅子丸の完敗であった。太刀で一撃を食らわせるどころか、ゴースンが呼び寄せた雷雲から稲妻の直撃を受け、ライオン丸は気を失って海へ落下してしまったのだから。


『獅子丸さん・・・飛騨の山へ帰りましょうか・・・獅子丸さんがそうしていると、私も小助ちゃんも、どうしていいか分らなくなっちゃうのよ』

小助と相談した沙織は、飛騨の山へ一度帰ろうと獅子丸に提案した。だが、獅子丸は、自分に誓っていた。

『必ずゴースンを倒すと。飛騨へ帰るのは、それからだよ。すまない・・・』

(ナレーション)果心居士を亡くし、飛騨を旅立ってから半年が過ぎる。この半年の月日を無駄には出来ないと、獅子丸は思った。ゴースンを倒す手立てを一刻も早くつかまなければ、果心居士に対して申し訳が立たないと思うのであった。

沙織は獅子丸の気持ちを察して、しばらくひとりにしておこうと思うのだった。その間に小助と一緒に村へ行き、着物を新調してくることにした。帰り途、沙織は新調した着物を獅子丸に褒めてもらいたいと心の中で思ってはみたが、今の獅子丸の気持ちを考えたら、とても言い出せない。

新しい色の着物を着て笑顔のふたりが戻ってみると、そこに獅子丸の姿は無く、書き置きが一通あるだけだった。【山に行く 飛騨へ帰って、時を待て 獅子丸】 ゴースンに完敗したことで、獅子丸は自信を失いかけていた。ひとりで考え、何かを会得しようともがいていた。

『獅子丸兄ちゃん・・・冷たいよ』

今までどんなに苦しい時でも、三人は協力して一緒にやってきた。それなのに、と小助は思うと涙があふれ出た。

その頃、どこをどう歩いてきたのか、山を越え草原を渡り、獅子丸はひたすら歩いていた。陽が傾いてヒグラシの声が聞こえるようになった時刻に、ある山寺の古い山門の前に獅子丸は立っていた。すると、後ろから声をかける者がいた。

『何を探しておられる?』
『あなたは?』
『ハハハハ。ワシは、この寺の坊主じゃよ』

殺気だった獅子丸の様子を見て、その住職は気を休めた方が良いと言って、寺へ招き入れてくれた。住職は獅子丸を部屋へ通し、湯呑を差し出した。一口飲んだ獅子丸は、ハッと思った。

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『これは・・・』
『ハハハハ、酒は百薬の長。それに、人の心を和ませる・・・身体も休まるぞ』

酒がキライで無ければ飲むよう、住職は獅子丸に勧めるのであった。だが、獅子丸は言う。

『誓い事が叶うまでは、身体を休めるつもりはありません』

住職は、獅子丸の誓い事の内容について訊ねた。仇討ちと聞き、続けて住職は訊いた。

『お主の腕では、勝てぬ相手か?』
『はい。大魔王ゴースンは、恐るべき相手です!』
『何?大魔王!若い衆。よかったら、こんな坊主にでも、話をしてみないか?』
『はい』

住職に心の内をさらけ出して、ゴースンを倒す手立てを、きっかけでもいいからつかみたいと、獅子丸は思った。ゴースンとの顛末を、獅子丸はこの住職に話した。ヒグラシの声が響く林の中を、住職が先に、少し距離をおいて獅子丸が歩いていく。

『なるほど。今まで負けたことを知らぬお主が、巨大な敵に会って初めて敗れたわけか』
『はい』
『若いのう。一度敗れたことを、それほど悔やむとは。お主、自分の強さを知らぬな?』
『はっ?』
『負けを知らぬ者は、己の力をも知り得ない。剣の道は心の道、とか言うではないか、な?』

生ぐさ坊主の言うことだから、笑って聞き流してほしいと、獅子丸の生真面目さをみて、この住職は諭した。獅子丸には、まだこの住職の言う意味がよく呑み込めていないようであった。そこで、住職は、近くにある大木を見上げて、こんなことを言った。

『獅子丸殿。ヒマつぶしに、あの小枝を斬ってくださらぬか?ただし、葉を落とさぬようにな』

続けて、住職は言う。

『獅子丸殿。正義の剣は、必ず勝つ。そのためには負けを恐れず、道を求められよ。おぬしの選んだ道を、な。これはまた、説教じみたことを(言ってしまった)・・・ハハハハ』

去って行く住職のうしろ姿に一礼した獅子丸は、今住職が話したことを早速、実践してみた。イチョウの大木の枝に枯れ葉が数枚付いている。その枯れ葉の付いた小枝を、葉を落とすこと無く斬ってみせよと、住職は言った。

獅子丸は高く飛び上がって、太刀で小枝だけを斬ったつもりであったが、小枝と一緒に枯れ葉も落ちてしまう。小枝を斬る時の振動で、枝から取れかかっている枯れ葉が落ちてしまうのだ。獅子丸の顔に、焦りが浮かんだ。どうすれば、葉を落とさずに小枝だけを斬ることができるのか。

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その頃、ゴースン島を破壊してどこかへ姿を消した大魔王ゴースンは、今度は北国の山中に巨大なゴースン山を造り上げていた。ふたりの木こりが昼食時に大きな地震に襲われ、治まってみると今まで何も無かった場所に、巨大で不気味な山が姿を現していたのだ。ここを悪の巣窟として、ゴースンはまず虎錠之助に命令を下した。

『虎錠之助は、何をしている!殺せ!早く、獅子丸を殺すのだ!』

その頃、獅子丸との決闘で右目を潰された虎錠之助は、傷ついた右目を隠すように顔面に布を巻いて歩いていた。痛みをこらえるように右目を押さえながら、その傷を癒すために澤湯(さわゆ)という土地へ向かう途中であった。

ところが、前方から娘がひとり走って来て、虎錠之助に助けを求めるのである。遅れて、その娘のあとを追いかけてくる浪人連れが三人。錠之助の後ろに隠れた娘をめぐって、もめ事が起きようとしていた。

三人の浪人者は、娘を渡すよう錠之助に話しかけるのだが、錠之助はただ三人を睨んでいるだけであった。すると、浪人の一人が錠之助に斬りかかってきた。錠之助はスルスルと後ろへ下がると、赤い鞘ごと太刀を腰から外すと、柄(つか)を握ったまま太刀を空高く放った。

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そうすると赤い鞘だけが飛んで行き、驚いた浪人たちの目が飛んで行く赤い鞘を追っている数秒間に、錠之助の刀は三人を斬り捨てていた。鞘はやがて、三人目を斬ったその場所に放物線を描いて落ちてくるので、錠之助は刀身を上へ向けて待っていると、落ちてきた鞘はピタリと収まるのだった。そして、錠之助は言った。

『娘、澤湯はまだ遠いか?』
(つづく)


★★★★★★★★★★★★
ギターの伴奏にのせて口笛がメロディを奏でる「虎錠之介のテーマ」というべき曲が、秀逸である。孤独、さすらい、悲しみ、強さが、曲から感じ取れる。さすがは、スキスキソングの小林亜星先生である!



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