快傑ライオン丸(18) [ライオン丸・ドラマ2]
今回は、第27話《大魔王ゴースン怒る!・後編》を取りあげます。
【前回までの話は・・・今、かなたにゴースン島を望む海岸に立つ獅子丸たち三人。カニ爆弾、ドクロ忍者の奇襲を突破した三人は二手に分かれ、舟を手配するために沙織と小助は近くの漁村へ向かい、獅子丸はゴースン島へ渡る船着き場を探しにでかけた。獅子丸はその途中で、宿命のライバルになる男と出会う・・・】
◆沙織と小助が手に入れた手漕ぎの舟を使い、ゴースン島へ向かって舟を漕ぎだす獅子丸。その様子を海岸から見つめる男がひとり、虎錠之介である。
『死に急ぐなよ、獅子丸』
周囲が切り立った崖になっているゴースン島へ上陸するにあたり、まず監視を倒さねばならない。沙織と小助を舟に隠して、獅子丸は太刀を1本持ち、フンドシ姿になって海へ潜ると、ゴースン島の岩場に近い水面からそっと顏を出した。
無人の怪しい舟が海面を漂っていることに気づいたのか、7人のドクロ忍者たちがどこからともなく現れて、海面近くの岩場まで降りてきた。獅子丸は、最初の1人に手裏剣を投げて倒すと、急いで岩場に登り、集まってきた残りのドクロ忍者たちを太刀で斬り捨てていった。
舟を着けられそうな場所を見つけた獅子丸は、沙織と小助に合図した。舟を浅瀬に乗り上げて隠すと、フンドシ姿の獅子丸は上衣を着け、乗り込む準備は完了だ。ゴースン島は不気味に静まりかえり、どこから何が出てくるか分らない。
上陸した三人は、岩肌が山のようにけわしく切り立ったこの島の一角に、綱が1本下がっているのを見つける。おそらく、ドクロ忍者たちが海を渡る際に、アジトから降りるために使う綱であろう。丈夫な綱であることを沙織が確認すると、三人はこの綱を上っていった。
1メートル程の高さの植物しか生えていないゴースン島では、隠れる場所が少ない。三人は獅子丸を先頭にして、一歩一歩危険が無いことを確かめながら、小助、沙織の順に進んでいった。
海面が下に小さく見えるほど登ってきた三人は、岩場を進んで行き、洞窟を発見した。真っ暗なその洞窟をしばらく進むと、前方に明かりが見える。だんだんとその明かりに近づいて行くと空間が開けて、その中央には祭壇があった。祭壇の台座の上に、不思議な形の像が置いてある。思わず、小助が叫んだ。
『あっ!なんだ、ありゃ?!』
獅子丸も沙織も、それを見たまましばらく絶句した。それは、黄金に輝く親指を立てた巨人の握りこぶしだった。突然、声が聞こえてきた。出所は黄金の握りこぶしの上、巨大な人のクチビル形をした岩石が上下に動いて、声を発していた。
『とうとう来たな、獅子丸!』
『(動くクチビルを見て、沙織と小助に)あれが、ゴースンだ!』
『我が手下どもを倒したお前の腕前は、褒めてやる。だが、このゴースンは、まだまだお前如きの敵では無い!』
獅子丸に促され、小助は作っておいた爆弾を、クチビルのような岩石に向けて、思い切り投げた。爆弾はクチビルに当り破裂したが、すぐに反撃の火炎放射がそのクチビルから吐き出された。その炎の熱さに、獅子丸たちは退却するしかなかった。
地震が起き、島全体が大きく揺れ出した。崖崩れがあちらこちらで起こり、足元が激しく揺れる中を、今来た道を必死に戻っていく獅子丸たち三人。
『おのれ、小僧!逃がしはせぬぞ!』
島の頂上が、噴火を始めたようだ。地震で揺れる中を、獅子丸たちはようやく舟の場所までたどり着いた。獅子丸が舟を押して海面に舟を乗せると、急いでゴースン島から脱出した。
ゴースン島の噴火は勢いを増し、獅子丸たちの舟は強風の中を舞う一枚の葉のように、荒れる海を必死に海岸へたどり着こうとしていた。放り出されないようにつかまっている沙織や小助たちにも、波しぶきは容赦なくかかり、ずぶ濡れになりながら、舟はようやく海岸にたどり着いた。
その頃、ゴースン島の噴火はかなり激しくなり、島周辺の海域は、飛んで来た溶岩弾のため沸騰するかのように湯気が出ていた。噴火の影響が、ゴースン島の頂上付近の形を変えていた。
獅子丸は舟を海岸へ着けて、沙織と小助を安全な場所へ移動させると、ゴースンと戦うためにライオン丸に変身した。
『ゴースンの奴め。風よ光よ!忍法獅子変化!』
ライオン丸がゴースン島を凝視していると、激しい噴火の中から何かが出て来ようとしているのが分かった。岩山を突き崩して中から出て来た物は、鎧をまとった巨大なゴースンであった。
『ライオン丸見参!』
『おのれ!』
一太刀浴びせようと、巨大ゴースンへ向かい飛行していくライオン丸に、雷雲を呼んだゴースンは飛行するライオン丸に落雷させた。そして、海へ落下していくライオン丸を見た巨大ゴースンは、笑い声を残し何処へと消え去ったのである。ライオン丸は気を失い、荒波にもまれながら海岸に漂着した。
沙織と小助は、安全な場所からその様子を見ていた。ライオン丸のピンチを知った沙織は、小助にヒカリ丸を呼ばせて、獅子丸の元へと走らせるのだった。ヒカリ丸の嘶き(いななき)を聞いた獅子丸は、意識を取り戻した。
一方、海岸で瞑想していた虎錠之介に、ゴースンの命令が下った。
『虎錠之介よ。タイガージョーとなれ!タイガージョーとなって、ライオン丸を倒せ!』
『ははっ!』
虎錠之介の近くに落雷し、そこにはゴースンが所有する「銀砂地の太刀」が置かれてあった。巨大ゴースンの前にまったく歯が立たなかった獅子丸は、波打ち際をヒカリ丸の背に揺られながら進んで行く。その表情は、敗者の疲れ切った表情であった。
だが、前門の虎、後門の狼。ヒカリ丸の前方には、あの男が腕を組んで立っていた。その姿が目に入った途端、疲れ切った身体に気合を入れるようにして、獅子丸はヒカリ丸の背から降り立った。
『もう一度、言う。正しい者が勝つんじゃない、強い者が勝つんだ!行くぞ!』
虎錠之介はそう言うと、腰の太刀を抜いて真っ向から獅子丸に挑んでいく。獅子丸もそれを受けて腰の太刀を抜くと、ふたりは水しぶきを上げながら、太刀を交えた。獅子丸が、背中の金砂地の太刀に変えて、ライオン丸に変身する。すると、虎錠之介も、背中の銀砂地の太刀で変身する。
『風よ光よ!忍法獅子変化!・・・ライオン丸見参!』
『ゴースン!タイガー!・・・タイガージョー推参!』
「白獅子」と「猛虎」の対決。砂浜でのふたりの戦いは、五分と五分であった。だが、タイガージョーが宙を飛んで攻撃しようとした時、それを見たライオン丸はタイミングを計る様にして、遅れて宙へ飛んだ。タイガージョーが宙返りをして顔が正面を向いた一瞬を捉えて、ライオン丸の太刀がタイガージョーの右目を貫いた。
『ぬううう。やるな、ライオン丸!だが、このままでは済まさぬぞ!』
出血多量の右目を左の手平で押さえ、苦痛に耐えてフラフラと歩きながら、タイガージョーはその場を去って行った。
(ナレーション)ゴースン島は、砕け散った。だが、大魔王ゴースンは、日本のどこかに必ずや悪の巣窟を造り上げるに違いない。
『沙織、小助。大魔王ゴースンは、想像を絶する恐ろしい敵だ!戦いは、まだこれからだぞ!』
ゴースンを撃ち果たすその日が来るまで、獅子丸たち三人の無事を、天国にいる師匠・果心居士に三人は並んで祈っていた。
(終わり)
★★★★★★★★★★★★
残念なことに、虎錠之介役の戸野広浩司(とのひろ こうじ)氏は、ロケの宿泊先で、不慮の事故のため死亡している。(享年25) 生きていたら、たくさんのロケ裏話を聞きたいものである。
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【前回までの話は・・・今、かなたにゴースン島を望む海岸に立つ獅子丸たち三人。カニ爆弾、ドクロ忍者の奇襲を突破した三人は二手に分かれ、舟を手配するために沙織と小助は近くの漁村へ向かい、獅子丸はゴースン島へ渡る船着き場を探しにでかけた。獅子丸はその途中で、宿命のライバルになる男と出会う・・・】
◆沙織と小助が手に入れた手漕ぎの舟を使い、ゴースン島へ向かって舟を漕ぎだす獅子丸。その様子を海岸から見つめる男がひとり、虎錠之介である。
『死に急ぐなよ、獅子丸』
周囲が切り立った崖になっているゴースン島へ上陸するにあたり、まず監視を倒さねばならない。沙織と小助を舟に隠して、獅子丸は太刀を1本持ち、フンドシ姿になって海へ潜ると、ゴースン島の岩場に近い水面からそっと顏を出した。
無人の怪しい舟が海面を漂っていることに気づいたのか、7人のドクロ忍者たちがどこからともなく現れて、海面近くの岩場まで降りてきた。獅子丸は、最初の1人に手裏剣を投げて倒すと、急いで岩場に登り、集まってきた残りのドクロ忍者たちを太刀で斬り捨てていった。
舟を着けられそうな場所を見つけた獅子丸は、沙織と小助に合図した。舟を浅瀬に乗り上げて隠すと、フンドシ姿の獅子丸は上衣を着け、乗り込む準備は完了だ。ゴースン島は不気味に静まりかえり、どこから何が出てくるか分らない。
上陸した三人は、岩肌が山のようにけわしく切り立ったこの島の一角に、綱が1本下がっているのを見つける。おそらく、ドクロ忍者たちが海を渡る際に、アジトから降りるために使う綱であろう。丈夫な綱であることを沙織が確認すると、三人はこの綱を上っていった。
1メートル程の高さの植物しか生えていないゴースン島では、隠れる場所が少ない。三人は獅子丸を先頭にして、一歩一歩危険が無いことを確かめながら、小助、沙織の順に進んでいった。
海面が下に小さく見えるほど登ってきた三人は、岩場を進んで行き、洞窟を発見した。真っ暗なその洞窟をしばらく進むと、前方に明かりが見える。だんだんとその明かりに近づいて行くと空間が開けて、その中央には祭壇があった。祭壇の台座の上に、不思議な形の像が置いてある。思わず、小助が叫んだ。
『あっ!なんだ、ありゃ?!』
獅子丸も沙織も、それを見たまましばらく絶句した。それは、黄金に輝く親指を立てた巨人の握りこぶしだった。突然、声が聞こえてきた。出所は黄金の握りこぶしの上、巨大な人のクチビル形をした岩石が上下に動いて、声を発していた。
『とうとう来たな、獅子丸!』
『(動くクチビルを見て、沙織と小助に)あれが、ゴースンだ!』
『我が手下どもを倒したお前の腕前は、褒めてやる。だが、このゴースンは、まだまだお前如きの敵では無い!』
獅子丸に促され、小助は作っておいた爆弾を、クチビルのような岩石に向けて、思い切り投げた。爆弾はクチビルに当り破裂したが、すぐに反撃の火炎放射がそのクチビルから吐き出された。その炎の熱さに、獅子丸たちは退却するしかなかった。
地震が起き、島全体が大きく揺れ出した。崖崩れがあちらこちらで起こり、足元が激しく揺れる中を、今来た道を必死に戻っていく獅子丸たち三人。
『おのれ、小僧!逃がしはせぬぞ!』
島の頂上が、噴火を始めたようだ。地震で揺れる中を、獅子丸たちはようやく舟の場所までたどり着いた。獅子丸が舟を押して海面に舟を乗せると、急いでゴースン島から脱出した。
ゴースン島の噴火は勢いを増し、獅子丸たちの舟は強風の中を舞う一枚の葉のように、荒れる海を必死に海岸へたどり着こうとしていた。放り出されないようにつかまっている沙織や小助たちにも、波しぶきは容赦なくかかり、ずぶ濡れになりながら、舟はようやく海岸にたどり着いた。
その頃、ゴースン島の噴火はかなり激しくなり、島周辺の海域は、飛んで来た溶岩弾のため沸騰するかのように湯気が出ていた。噴火の影響が、ゴースン島の頂上付近の形を変えていた。
獅子丸は舟を海岸へ着けて、沙織と小助を安全な場所へ移動させると、ゴースンと戦うためにライオン丸に変身した。
『ゴースンの奴め。風よ光よ!忍法獅子変化!』
ライオン丸がゴースン島を凝視していると、激しい噴火の中から何かが出て来ようとしているのが分かった。岩山を突き崩して中から出て来た物は、鎧をまとった巨大なゴースンであった。
『ライオン丸見参!』
『おのれ!』
一太刀浴びせようと、巨大ゴースンへ向かい飛行していくライオン丸に、雷雲を呼んだゴースンは飛行するライオン丸に落雷させた。そして、海へ落下していくライオン丸を見た巨大ゴースンは、笑い声を残し何処へと消え去ったのである。ライオン丸は気を失い、荒波にもまれながら海岸に漂着した。
沙織と小助は、安全な場所からその様子を見ていた。ライオン丸のピンチを知った沙織は、小助にヒカリ丸を呼ばせて、獅子丸の元へと走らせるのだった。ヒカリ丸の嘶き(いななき)を聞いた獅子丸は、意識を取り戻した。
一方、海岸で瞑想していた虎錠之介に、ゴースンの命令が下った。
『虎錠之介よ。タイガージョーとなれ!タイガージョーとなって、ライオン丸を倒せ!』
『ははっ!』
虎錠之介の近くに落雷し、そこにはゴースンが所有する「銀砂地の太刀」が置かれてあった。巨大ゴースンの前にまったく歯が立たなかった獅子丸は、波打ち際をヒカリ丸の背に揺られながら進んで行く。その表情は、敗者の疲れ切った表情であった。
だが、前門の虎、後門の狼。ヒカリ丸の前方には、あの男が腕を組んで立っていた。その姿が目に入った途端、疲れ切った身体に気合を入れるようにして、獅子丸はヒカリ丸の背から降り立った。
『もう一度、言う。正しい者が勝つんじゃない、強い者が勝つんだ!行くぞ!』
虎錠之介はそう言うと、腰の太刀を抜いて真っ向から獅子丸に挑んでいく。獅子丸もそれを受けて腰の太刀を抜くと、ふたりは水しぶきを上げながら、太刀を交えた。獅子丸が、背中の金砂地の太刀に変えて、ライオン丸に変身する。すると、虎錠之介も、背中の銀砂地の太刀で変身する。
『風よ光よ!忍法獅子変化!・・・ライオン丸見参!』
『ゴースン!タイガー!・・・タイガージョー推参!』
「白獅子」と「猛虎」の対決。砂浜でのふたりの戦いは、五分と五分であった。だが、タイガージョーが宙を飛んで攻撃しようとした時、それを見たライオン丸はタイミングを計る様にして、遅れて宙へ飛んだ。タイガージョーが宙返りをして顔が正面を向いた一瞬を捉えて、ライオン丸の太刀がタイガージョーの右目を貫いた。
『ぬううう。やるな、ライオン丸!だが、このままでは済まさぬぞ!』
出血多量の右目を左の手平で押さえ、苦痛に耐えてフラフラと歩きながら、タイガージョーはその場を去って行った。
(ナレーション)ゴースン島は、砕け散った。だが、大魔王ゴースンは、日本のどこかに必ずや悪の巣窟を造り上げるに違いない。
『沙織、小助。大魔王ゴースンは、想像を絶する恐ろしい敵だ!戦いは、まだこれからだぞ!』
ゴースンを撃ち果たすその日が来るまで、獅子丸たち三人の無事を、天国にいる師匠・果心居士に三人は並んで祈っていた。
(終わり)
★★★★★★★★★★★★
残念なことに、虎錠之介役の戸野広浩司(とのひろ こうじ)氏は、ロケの宿泊先で、不慮の事故のため死亡している。(享年25) 生きていたら、たくさんのロケ裏話を聞きたいものである。
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