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快傑ライオン丸(24) [ライオン丸・ドラマ3]

今回は、第31話《怨みの魔剣 オロチジュニア・後編》を取りあげます。


【前回までの話は・・・ 獅子丸、沙織、小助。三人の心はふたたび一つとなり、ゴースンを倒す手がかりを求めて故郷の飛騨へと帰って来た。今はまだ粗末な果心居士の墓に参ろうとした三人は、先に墓参りを済ませたらしい若い娘・由比と出会う。挨拶をする中で、由比の口から「果心覚書」の存在を聞いた三人。もっと詳しく話を聞くために、由比の居場所・円仁寺へと三人は向かう。だが、途中で三人は怪人オロチジュニアの襲撃を受け、獅子丸は由比の尾行を沙織と小助に任せると、ライオン丸に変身してオロチジュニアと戦った・・・】

◆何とかして由比を連れ出そうと、子供の小助を由比に会いに行かせたが、寺の使用人は頑として会うことを承諾してくれない。そこで獅子丸と沙織は一計を案じ、布と糸を売る行商人に化けて、注文の布と糸を持って来たと偽り、まんまと円仁寺へ潜入することに成功するのだった。

『今日は父が留守だからいいですが、もし見つかったらたいへんです。何しろ、私の父は人間嫌いで』

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奥の間へ通されてきた行商人が先程会った獅子丸と沙織だと知り、由比は笑顔で応対しながらも、無茶なことをする人達だと半分あきれていた。獅子丸は率直に、どうしても「果心覚書」を見せて欲しい一心で潜入したことを告げるのだった。

『私の父は普段は優しい人なのですが、私がその覚書を見つけた時の父の顔の怖かったこと。私は、見てはならない物を見てしまったのですね』
『中には、何と?』

獅子丸が訊ねると、その時はすぐに父に取り上げられてしまい、中を見てはいないと由比は言った。すると突然、下男の佐九郎が、障子の外から部屋の由比に向かって告げた。

『お由比殿、怪しい者が忍び入った様子。お気をつけください』
『はい。分かりました』

この佐九郎はせむし男で、由比はこの佐九郎を気味悪がって嫌っていた。由比の母が死んだあと、あのせむしの佐九郎がこの屋敷に住み始めてから、由比の周囲で気味の悪いことが起こるようになったと言う。

今日は佐九郎に見張られているように感じた由比は、明日ススキが原へ覚書を持っていくことを、獅子丸に約束するのだった。だが、その話の一部始終を、由比の部屋の真下へ忍び入った佐九郎が聞いていた。

『明日、ススキが原か・・・よし!』

せむしの佐九郎は、忍びのごとく早い身のこなしで林の中を進んで行った。だが、そのあとを追っていく数人の者がいた。ドクロ忍者であった。やがて、ドクロ忍者数人が佐九郎を取り囲み、争いになった。だが、佐九郎は思いのほか強く、木の上に飛びあがって、自分の正体を明かした。

佐九郎は、なんとドクロ仮面であった。ドクロ仮面は普通、ドクロ忍者たちをまとめる忍者の頭目だが、由比の屋敷へ単独で忍び込んでいたこの者を、ドクロ忍者たちは誰も知らなかったようである。

『オロチジュニアの所へ、案内しろ!』

佐九郎はドクロ忍者に案内されて、オロチジュニアの許へと向かった。オロチジュニアは、先の戦いで逃げられた獅子丸の行方を追って、情報を集めていた。

『獅子丸が、明日ススキが原に参ります。及ばずながら、私も加勢を!』
『黙れ!』

ドクロ仮面・佐九郎は、自分の手柄だと言わんばかりにその情報を怪人に告げたが、オロチジュニアは獅子丸の情報を手に入れるとドクロ仮面を斬り捨ててしまった。オロチジュニアは、自惚れの強い性格であった。ドクロ仮面・佐九郎は、出過ぎたマネをしてしまったようだ。

『身の程知らぬ奴。オロチジュニアに、加勢はいらぬわ!』

翌朝、予定の時刻に紫色の袱紗(ふくさ;物を包むのに用いる正方形に作った絹布)に包んだ「果心覚書」を持って由比がススキが原で待っていると、向こうからやって来る人影が見えた。遠くでまだよく見えないのだが、近づいてくるにつれてそれが人間で無いことが由比には分った。

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(向こうからオロチジュニアがやって来る)

由比が驚いた表情をしていると、由比の後ろから獅子丸が現れた。そして、向かってくるオロチジュニアに対し、獅子丸は由比を十分安全な位置まで下がらせると、ススキの中に身を隠させるのだった。

『獅子丸。今日こそ、決着をつけてやる!ノバ!』

思いのほか身軽なオロチジュニアは、三段跳びのように大きく地面を蹴りながら、獅子丸に近づいてきた。そして、半月刀をブーメランのように飛ばして、獅子丸を襲った。獅子丸の太刀がそれを弾くと、今度は獅子丸を焼き殺そうと口から火炎を吐いた。ススキに炎が燃え移り、危険を感じた獅子丸は、忍法獅子変化でライオン丸に変身した。

『ライオン丸、見参!』

上空へ飛んだオロチジュニアをみて、ライオン丸も上空へ飛び、飛行斬りを仕掛けた。だが、そこにオロチジュニアの姿は無かった。飛んだオロチジュニアは、まぼろしだったのだ。目標を失ったライオン丸は、地面に腹ばいに落下した。

『オロチまぼろし斬り!』

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墜落したライオン丸が振り返った時、ジュニアの投げた半月刀がライオン丸に突き刺さった・・・かのように見えた。地面に突き刺さったオロチジュニアの半月刀には当たった証の血が滴っていたものの、肝心のライオン丸の姿は無い。確かに半月刀がライオン丸を捕らえたはずだが、ライオン丸の姿は無く、ライオン丸のマントだけが宙を舞っている。

あの宙を舞うマントにライオン丸が隠れているものと睨んだオロチジュニアは、そのマント目がけて飛び上がり突っ込んでいった。だがマントは、ただのマントであった。そのままマントと一緒に地面へ墜落してくるジュニアの身体に、地中に隠れていたライオン丸の太刀が下から突き刺した。「ズブッ!」

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立ち上がり、半月刀を振り回しながらよろけて数歩歩くと、オロチジュニアは絶叫して果てた。

『ゴースン様!・・・オヤジ!』

安全な場所に隠れていた由比が安堵の表情で姿を現すと、その由比を後ろから呼ぶ声がした。父の比企衛門であった。獅子丸の前であいさつをする比企衛門。

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『私が、猪俣比企衛門です』
『獅子丸と申します。わけあって、果心覚書を見せていただきます』
『おお、果心覚書・・・どうぞご覧なさい』

由比は持っていた袱紗を獅子丸に渡すと、獅子丸は袱紗を開いて、中の冊子を開いてみた。すると、中は真っ白で何も書いていなかった。獅子丸は驚き、由比を見ると、由比もそれを見て、思わず声を出した。

『違うわ!』
『ハハハハ。獅子丸さん、一緒にお越しなさい。仔細をお話しましょう』

自宅へ招いて、獅子丸に詳細を話すという比企衛門の言葉に、獅子丸と由比は後を付いていくのだった。由比は、どうして白紙の覚書を持っていたのか。比企衛門が獅子丸に話そうとすることとは、いったい何か?

(ナレーション)果心覚書を隠しているというこの比企衛門とは、はたしていかなる人物であろうか?善か悪か?
(終わり)


★★★★★★★★★★★★
マントに隠れたと見せかけて、実は地中に隠れていたライオン丸。彼が使ったのは、変り身の術であろうか。手裏剣が当たって相手を倒したと思ったら、着物を着た枯れ大木だったという、忍者アニメで見かけるアレである。

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快傑ライオン丸(25) [ライオン丸・ドラマ3]

今回は、第32話《ガマウルフ 覚え書の秘密・前編》を取りあげます。

原作;うしおそうじ
脚本;馬嶋 満
企画;うしおそうじ 別所孝治
音楽;小林亜星
殺陣;渡辺高光
監督;石黒光一 


【前回までの話は・・・故郷・飛騨に帰ってきた獅子丸たち三人は、果心居士の墓参りに行き、そこで由比という娘に出会う。由比から、果心居士がインドで修行中に記したと思われる果心覚書の存在を聞かされ、由比は父に内緒でそれを見せることを獅子丸に約束した。翌日、約束の場所には由比と、獅子丸を仇と狙うオロチジュニアが現れ、ライオン丸は激闘の末に勝利する。そこへ由比の父・比企衛門が現れ、比企衛門の目前で獅子丸は果心覚書を見るが、中は白紙であった・・・】

◆比企衛門に連れられて円仁寺へ戻ってきた獅子丸は、沙織と小助も呼んで、比企衛門の話を聞くことにした。小助を由比の部屋で待たせて、比企衛門は獅子丸と沙織に次のような話をした。

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『お恥ずかしい話ですが、母親を亡くしてからどうもいけません。どこで果心居士さんの話を聞いたのでしょうか、それ以来、変なことを思い詰めるようになりましてな』
『それでは、「果心覚書」は・・・』
『そのようなものが、どうして我が家にありましょうか』

比企衛門の話では、「果心覚書」は由比の妄想の産物だというのである。沙織が、比企衛門に質問した。

『でも、ご主人はインドへ渡られたとか』
『ああ。昔、私が舟に乗っておったので・・・そんな風に言っておりましたか。いやはや、あなた方にはご迷惑をおかけしまして。どうか私に免じて、勘弁して下され』

一方、小助は由比の部屋から外へ出て、木の棒で素振りをしていた。すると、部屋から由比が縁側に出てきて、手鏡で太陽の光を反射させ、小助の顔に当ててイタズラをした。まぶしい顔をして小助が振り向くと、由比が笑っていた。素振りをやめて、小助は縁側の由比のとなりに座った。

『綺麗な手鏡だね』
『お母さまの形見なのよ』

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『へぇ、それで大事にしているんだね』
『小助チャンの大事なものって、何?』

『この笛さ!お師匠様の形見なんだ』

笛を吹いて聞かせてほしいと由比が頼むと、小助は次のように言った。

『滅多には吹けないんだ。だって、お師匠様の魂が込められているんだもの。でも、そのうちに、きっと吹いてあげるよ!』
『約束したわよ!』

そう言うと、由比は小助と小指どうしを引っかけて、指切りげんまんをした。獅子丸と沙織の話も済んだので、屋敷を出ていく三人。獅子丸から比企衛門の話の内容を聞いた小助は、由比とのやりとりを思い返して、不審に思うのだった。

『なんだか、おかしいな。あの由比姉ちゃんが、ウソを言っているなんて』

獅子丸の思いも、同じであった。昨日からの由比とのやりとりの中で、不審な点は一つも無い。獅子丸は、思う。

『由比さんのあの目。あの目は、ウソをついている目ではないが・・・』

獅子丸は、明日もう一度由比に会いに行こうと思うのだった。そう思いながら、獅子丸たちは比企衛門宅をあとにして歩いていると、辻斬り(刀剣の切れ味を試すため、街頭で往来の人を斬ること)と思われる屍骸を見つけた。浪人らしきふたりの人物の首が、素晴らしい程の切れ味で胴から切断されていたのだ。

『獅子丸兄ちゃん、こんなものが落ちていたよ』

ふたりの屍骸のすぐ近くに、きれいな装飾が施された印籠(いんろう)が落ちているのを、小助が見つけた。小助はそれを拾うと、懐(ふところ)にしまい込んだ。

夕暮れになり、比企衛門が外出先から帰ってきた。由比は比企衛門の外出着の着替えを手伝ったあと、その着物をしまおうとして、襟元に血を含んだ部分があるのを見つけてしまう。由比は、なぜか胸騒ぎをおぼえた。あの穏やかな父と襟元の血の跡とは、どういう関係があるのだろうか。不安な顔つきになる由比。

翌日、朝から邸内のどこにも由比の姿が見当たらないと言って、使用人たちに聞き回る比企衛門。どの使用人も、誰一人行き先を知らないのである。比企衛門が邸内を探し回っていると、ちょうど玄関先で獅子丸たち三人を見かけた。部屋へ通された獅子丸たちに、事情を話す比企衛門。

『家中を探しましたが、由比はどこにも見当たりません。まったく、困りました。人に怨みを買う覚えはないし・・・』

小助が時間を持て余して、昨日拾った印籠で遊び始めると、突然その印籠を指して比企衛門がこう言った。

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『おや、どこにありました?それは、私のです。昨日から探しておりました』

小助の手から印籠を取りあげると、何も言わずに自分の懐へ入れて、笑顔を見せる比企衛門。そして、「ゆっくりして行ってください」と言って、比企衛門は部屋を出て行くのだった。

比企衛門の不可解なこの発言に、三人は内心驚きながらも平静を装い、比企衛門が部屋を出て行くのを待った。

『獅子丸さん、なんだかつじつまの合わないことばかりじゃない?由比さんに、もしものことがあったら・・・』

なぜ昨日の辻斬り現場に、比企衛門の印籠が落ちていたのか?由比の消息は?そして、獅子丸たちが一番知りたいことは、由比がウソをついているのか、否か。

そこで獅子丸は考えた。比企衛門があの辻斬りとどう関係しているのか、調べてみる必要があると。沙織と小助に比企衛門を見張るように告げると、獅子丸は編み笠をかぶって顔を隠し、昨日の辻斬りの現場へと向かった。

すると、昨日と同じ現場にさしかかった所で、怪しい霧が突然発生し、何者かが獅子丸に斬りかかってきたのだ。瞬時に避けたため、獅子丸は編み笠の縁を斬られただけで済んだ。だが、周囲には誰も見当たらない。

『おのれ。辻斬りの正体は、貴様だな。姿を現せ!』
『ハハハハ、ガマウルフの毒霧だ。次第にお前の身体は、ガマの毒で麻痺してくる。ハハハハ・・・』

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獅子丸の目の前に大きく重そうな剣を持つ怪人が出現し、口から霧を吐きながら迫って来た。獅子丸は太刀を抜くと、霧を吸わぬよう腕で口を押えながら戦った。怪人ガマウルフの振り回す大きな剣は、太刀で受けるとその重さのために獅子丸は力負けしてしまう。獅子丸はライオン丸に変身して、この危機を乗り切ろうとした。

『ライオン丸、見参!』

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ライオン丸の腕力ならば、ガマウルフの剣にも太刀打ちできる。戦いは五分と五分の展開になった。すると、ガマウルフの口から再び毒霧が吐き出され、ライオン丸はそれを吸い込んでしまった。とっさに腕で口を覆ったが、すでにライオン丸の身体は麻痺が始まっていた。

ふらつくライオン丸を、その時援護する者が現れた。小助と沙織である。火薬を扱う小助は、得意の爆弾を数発投げてライオン丸を援護した。ガマウルフは不意の爆弾の雨に驚き、その場から姿を消してしまうのだった。

ガマウルフの姿が消えたことを確認したライオン丸は、その場でバタリと倒れてしまった。

『う、あぁぁぁ・・・』
(つづく)


★★★★★★★★★★★★
ゴースンの正体をめぐる新たなる展開、「果心覚書の秘密」の章がここから始まる。

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快傑ライオン丸(26) [ライオン丸・ドラマ3]

今回は、第32話《ガマウルフ 覚え書の秘密・後編》を取りあげます。


【前回までの話は・・・ 母親が死んだあとの由比の様子がおかしいと、獅子丸と沙織に説明する比企衛門。「果心覚書」は由比の妄想の産物ですと言って、比企衛門はその存在を否定するのだった。だが、由比と話をしたことのある獅子丸も小助も、比企衛門の説明に納得いかないものを感じていた。帰り途、三人は辻斬りの現場に出くわし、そこに落ちていた印籠が比企衛門の持ち物だとのちに分かったことから、三人の疑惑の目は比企衛門へ向いていく・・・】

◆『獅子丸兄ちゃん、しっかりして!オイラが分かるかい?』
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ある農家で、獅子丸は布団に寝かされていた。ガマウルフとの戦いのあと意識を失った獅子丸を、沙織と小助が近くの農家まで運び、頼み込んで休ませてもらっていたのだ。今ようやく目を開けた獅子丸は表情もしっかりしており、ゆっくりと口を開いた。

『どうしたんだ、俺は?』
『ガマウルフの毒に、やられちまったんだよ』

小助にそう言われ、獅子丸の記憶も徐々に戻ってきた。ガマウルフとの戦いで、怪人の口から吐く霧状の毒を吸った獅子丸は、身体の自由が利かなくなって倒れたのだ。

『それで、由比さんは?』
『まだ行方は、分らないわ』
『比企衛門さんは、どうだった?』
『あれから、獅子丸さんに言われたとおりに見張っていたんだけど・・・』

比企衛門が出かける支度をして庭へ降りたあと、姿が見えなくなったと沙織は言った。

『消えた?・・・』
『そうだ!あの時大きなヒキガエルが、庭石の方へ跳ねて行くのをオイラ見たんだ!』

遠くを見るように宙を見つめていた小助は、大声でそう叫んだ。まさか、比企衛門がガマウルフでは・・・という疑念が、三人の脳裏に浮かんだ。

『オイラ、ウソなんか言ってないよ!』
『そうだ。ウソを言っているのは、比企衛門だ!ヤツはゴースンの一味なんだ。由比さんの言う通り、果心覚書は必ずある!』

他にも何かを知っている由比が、屋敷にいては都合が悪くなるので、比企衛門がどこかに連れ去ったに違いないと、獅子丸は思った。

『自分の娘なのに、なぜ?』(沙織)
『たとえ自分の娘であろうと、都合が悪くなれば容赦はしない!』(獅子丸)

このままでは由比の命が危ないと、獅子丸も小助も思った。以前に由比と約束したとおり、小助は形見の笛を吹いてみることにした。農家を出て笛を吹いていると、山の方から光がキラキラと反射して光っているのが、小助の目に飛び込んできた。これは何かあると感じた小助は、すぐにこのことを獅子丸に知らせた。

『オイラの笛に合わせて、由比姉ちゃんが合図してくれたに違いないよ!』
『他に手がかりが無い以上、どんなことでも当たってみた方がいいと思うわ!』

すっかり体調が回復した獅子丸が山へ向かう支度をしていると、世話になった農家の婆さまがこんなことを言った。

『あの山には、バケモノが棲んでいるだよ』

そのバケモノとはガマウルフのことかもしれないと、三人は思った。道なき道を登って光の輝いた場所へ向かう三人は、途中で草木に隠れて張り巡らされている鳴子(なるこ)を見つけた。鳴子とは、敵の侵入を知らせる仕掛けである。ヒモを引っかけると、大きな音が鳴る仕掛けになっている。

山の中腹あたりで様子をうかがう三人は、見張りをしているドクロ忍者の姿を見つけた。やはり、この山のどこかに由比が捕まっているに違いないと、三人は確信した。獅子丸が囮になって騒ぎを起こすから、騒ぎのスキに、沙織と小助は裏から回って由比を助けるように作戦を立てる三人。

獅子丸がドクロ忍者たちに突っ込んでいくのを見て、沙織と小助は山の裏手に回っていく。だが、そちらにも数名のドクロ忍者たちが見張っていた。違う方向へ行こうとして、小助は足元の鳴子をひっかけてしまった。

鳴子の音を聞いて、ドクロ忍者たちが大勢集まってきた。沙織と小助のふたりに対し、ドクロ忍者は十数人、ふたりは必死に戦った。

その頃、ドクロ忍者たちをすべて片づけた獅子丸は、石の階段を駆け上がろうとして、階段の一番上に立っている比企衛門と対峙した。

『とうとう、来ましたね』
『比企衛門!いや。ゴースンの手下、怪人ガマウルフ!』
『ワタシの正体が、解ってしまった様ですね。お望みとあらば、相手もしよう』

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『果心覚書は、どこだ!』
『ハハハハ、これですよ。私もジャラモンで修行をした忍者の1人。そう簡単には渡しませんよ』

比企衛門は、懐から本物の「果心覚書」を出して獅子丸に見せた。そして、それを懐へしまうと、両手を組んで小声で呪文を唱え始めた。比企衛門の足元から霧が噴き出し、その姿は小さなヒキガエルになり、また霧が覆うと怪人ガマウルフへと変身した。

『来い、獅子丸!』
『風よ光よ!忍法獅子変化!』

互いに変身した姿で、太刀を交えるふたり。ガマウルフは毒霧を吐いて、霧にまぎれて姿を隠しながら、巨大な剣を振り回してライオン丸に襲いかかってきた。

その頃、中腹にある小さなお堂内に捕らわれていた由比を、沙織と小助は救い出していた。沙織が手を引いて走ろうとすると、由比はそれを拒んだ。由比は、自分の父が怪人ガマウルフだと知って、大きなショックを受けていた。そのことを沙織と小助に話す由比。すると、小助が言った。

『でも、お姉ちゃんは怪人じゃないよ』

今は、一刻も早く山を下りることが大切だと諭した沙織は、由比の手を引いて走り出した。山道をどんどん下って行くと、途中で三人は、ライオン丸とガマウルフの戦いの場に遭遇した。

ガマウルフが飛びあがった時、ライオン丸のいる側の後方から、こちらへ走ってくる由比の姿をガマウルフは目撃する。由比は、ふたりの戦いを止めに入ろうとしていた。

『由比!』
『やめて!』

ガマウルフは一瞬戦意を喪失して、スキができた。それを見逃さないライオン丸は、空中でホバリングしながら横一文字に斬るライオン飛行返しという技を使った。ガマウルフは空中で斬られ、その手から離れた剣は地上へ落下して、ふたりを止めに近くまで来ていた由比の胸に突き刺さった。

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『あ、あぁぁぁ』
『ばかめ、大事な立ち合いの・・・邪魔をしおって・・・由比』

倒れた由比は残りの力を振り絞り、胸にしまっていた母の手鏡を出して、小さな声で言った。

『お父さま、一緒にお母さまの所へ・・・』

事切れた由比の手鏡に映っていたガマウルフは、やがて比企衛門の姿に戻った。倒れたまま比企衛門は懐の「果心覚書」を獅子丸に差し出すと、由比と共に永遠の眠りに着くため、獅子丸に言った。

『獅子丸殿・・・頼む、ここを離れてくだされ』

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獅子丸は、比企衛門の手から「果心覚書」を受け取ると、言う通りにその場を離れた。力無く立ち上がった比企衛門が、両手を組んで呪文を唱えると、次の瞬間大爆発が起きた。

由比殿のおかげで「果心覚書」を手に入れることができましたと、獅子丸たち三人は果心居士の墓前で報告をするのだった。

(ナレーション)ようやく手にすることができた果心覚書。ゴースンの弱点を知るために、その手がかりを求めてふたたび故郷飛騨をあとにした三人の行く手には、幾多の困難が待ち受けている。
(終わり)


★★★★★★★★★★★★
比企衛門の比企は、ヒキガエルのヒキらしい。ドラマの中の果心覚書には、猪俣蟇衛門(いのまた・ひきえもん)と書かれているが、出演者の役名テロップは比企衛門となっている。

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