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快傑ライオン丸(31) [ライオン丸・ドラマ4]

今回は、第38話《ゴースンの秘密 怪人タツドロド・後編》を取りあげます。

【前回までの話は・・・果心覚書に記された六名のうち、五名の人物を獅子丸たちは探し出した。そして、先に死んだ木猿から、最後に残った白垣幽斎こそがゴースンだという情報を得るのだった。三人は白垣幽斎と対面するため相模国へ入り、風一族の住む隠れ谷を探していた。偶然にも、三人が休憩した御茶屋で風一族の忍者と出会い、獅子丸は彼から子供の薬を隠れ谷へ届けるよう頼まれるのだった。風一族が住む隠れ谷へ、ひとり獅子丸は向かった・・・】

◆隠れ谷へ入った獅子丸は、薬の件を伝えるとすぐに一族の頭領である白垣幽斎の元へ通された。風屋敷の一室に通され、上座に座った獅子丸に幽斎は自己紹介すると、丁重に頭を下げて礼を述べるのだった。しかし、事が済むと、幽斎は次のように切り出した。

『何も聞かず、黙ってこの谷から出て行かれよ、獅子丸殿』
『私の名を・・・』

『一目見て、すぐ分かりました。背中の金砂地の太刀を。まさに、ジャラモン様が果心居士殿に渡した一振りに相違ない』
『それでは、あなたがゴースン?』

『何も聞かず、この谷から出て行かれよ。さもなければ、あなたの御命をいただかなければなりませぬ』

獅子丸は、どうして自分の命を奪うのかと、幽斎に訊ねた。話の様子では、幽斎はゴースンではなさそうであった。ゴースンならば、自分を獅子丸と知っていたら問答無用に斬りかかり、金砂地の太刀を奪うはずだからである。

『私は、ゴースンに味方する者です。お答えは、それで十分でしょう』
『いや、どうしても聞きたい。ゴースンの秘密を、あなたの口から聞きたい!』

しばらくの沈黙のあと、幽斎の口から出た言葉は・・・。

『獅子丸殿。私が倒せますかな!』

話し合いは決裂し、幽斎は獅子丸を倒す決意をした。幽斎の行動は素早い。獅子丸を招き入れたこの部屋は、ろうそく数本の炎が唯一の灯りであった。暗くてこの部屋の様子がよく解からない獅子丸は、下手に動けなかった。さっきまで隣にいた幽斎が、なぜか遠く離れていくように思えた。

幽斎は恐るべき妖術を使うつもりなのか、呪文を唱えているようであった。獅子丸は、自分の身体が金縛りにあったように動かなくなっていることに、今気がついた。すぐに変身しようとしたが、両腕が上がらなかった。

『とうとう、あなたの命をもらう羽目になってしまいましたね、フフフフ』

白髪を逆立て、龍のようにギラリとした眼で獅子丸を見つめる幽斎は、獅子丸に言った。

『冥途へのみやげに、あなたが聞きたがっていたゴースンの秘密とやらをお話しましょう』

ここからは、幽斎がインドの大聖人ジャラモンの下で修行をした当時の様子を述べている。

『私達七人のほかにも、ジャラモンの下で修行をしたふたりの日本人の兄弟がいた。そして、我々九人の修行は、日が昇りそれが月に替わるまで続けられたのだった。私は兄弟に誘われてヒマラヤに立てこもり、前にも増して厳しく激しい修行をしたのじゃ。そして、ある日。あの恐ろしい術を目撃してしまった・・・』

幽斎の見ている前で、弟は両手を広げて呪文を叫んでいた。それは、その弟が驚くべき術を身に付けた瞬間であった。黒雲を呼び、雷鳴が鳴り、稲妻が光った。

『ゴースン巨大身変化(きょだいしんへんげ)!』

『私はあまりの恐ろしさに、この兄弟から離れてしまったのじゃ。よく聞くのじゃ、獅子丸。この弟こそ、お前が知りたがっていた大魔王ゴースンなのじゃ!』

話は現在に戻る。意識が薄れて行く獅子丸に向かって、幽斎は言った。

『この巨大身変化を破らぬ限り、ゴースンに勝つことはできないのだ。そして、その秘密を知っているのは、ただふたり。その兄弟だけじゃ。兄は鷹取城にいる桃雲斎、弟はゴースンその人じゃ』

知らない間に、この部屋にあった香炉(香を焚く器)から毒煙が出ていた。獅子丸は、幽斎のワナに落ちていた。薄暗いこの部屋では香炉の存在に気づくわけも無く、臭いに気がついた時には手遅れであった。

獅子丸の身体は煙の毒が回って全身がしびれ、幽斎の話を遠くで聞きながら、ついに意識を失ってバタリと倒れてしまった。

その頃、獅子丸が隠れ谷へ向かったことを沙織と小助から聞きつけた虎錠之介は、自分も隠れ谷へと急いだ。獅子丸が幽斎と戦ったら、負けるかもしれないと錠之介は思うのだった。幽斎は手強い。獅子丸を倒すのは自分だと決めている錠之介にとって、そのようなことがあっては断じてならないのだ。

錠之介のあとを少し離れて、沙織と小助も歩いていた。錠之介は隠れ谷の入口に近い場所で停まると、沙織と小助にここで待つように命じた。

『オレが様子を見てくる』

錠之介はそう言うと、草むらの中を走って行き、沙織と小助の前から姿を消した。

風屋敷に入った錠之介は、幽斎と向かい合って座っていた。二人は仲間である。錠之介は、獅子丸がどうなったのかを早く知りたかった。

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『幽斎殿、獅子丸は?・・・幽斎殿・・・』
『遅かったな、錠之介』

『なんと?』
『獅子丸は死んだ、立った今』
『たった今、死んだ・・・』
『死んだ』

『死んだ?獅子丸が死んだ?そんなバカな』
『毒煙での・・・』
『バカなヤツ・・・なぜ俺と・・・(怒りの声で)なぜ俺と立ち合わなんだ!』

生涯の敵・獅子丸を幽斎に殺されてしまった錠之介の失望感は大きかった。目的を失った錠之介は、心に大きな穴が空いてしまったかのようになった。

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風屋敷内をあてども無く歩いているうちに、錠之介は透明な箱に入れられた獅子丸を見つけた。それは、後ろ手に縛られて立ち姿のまま眠っているように見えた。それを見つけた瞬間、錠之介のつぶれていない左目がカッと見開き、近くに寄ってよく見る錠之介。

この透明な箱に手を突いて獅子丸を見ているうちに、この箱が持ち上がることに錠之介は気づいた。このような場所に、獅子丸を置いておくわけにはいかぬ。両腕の力でこの箱を持ち上げた錠之介は、獅子丸を助けだそうと考えていた。

そのとき、巡視していた風一族の者に声をかけられた錠之介は、立ち姿の獅子丸から透明な箱を取り去ったあと、素早く姿を消した。

獅子丸を囲っていた透明な箱が取り去られているのを見た二人の忍者は、警戒した。だが、獅子丸はこの機会を逃さず、蘇生した。

『我に、仮死の術あり!』

(ナレーション;仮死の術とは、毒や水などを飲まないために、自分で呼吸を止める難しい術である)

獅子丸は、後ろ手に縛られた縄を相手の振り下ろした刀で斬ると、集まってきた風一族の忍者たちを振り切って逃げた。

一方、沙織と小助は、待てと言ったまま戻って来ない錠之介を無視し、自分達も風屋敷へ乗り込んでいくことにした。すると、風一族の屋敷入口付近に潜入した時、逃げてくる獅子丸とそれを追う忍者たちを発見するのだった。

風屋敷のある部屋へ潜入した小助は、ふすまを少しだけ開けて覗き込んだその暗い部屋の中に、外からの光にくっきりと浮かび上がった金砂地の太刀を見つけた。

金砂地の太刀を部屋から持ちだした小助は、風屋敷の中庭で戦う獅子丸と、そこへ合流した沙織の元へ急いだ。そして、身軽な小助は大木に登ると、獅子丸へ金砂地の太刀を放り投げた。

『お兄ちゃん!』

獅子丸が金砂地の太刀を受け取った時、もう一つある大木の影から幽斎が現れた。空へ跳んだ幽斎は、呪文を唱えながらクルクルと回転する。

『ゴースン忍法、龍落し!』

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不気味な怪人タツドロドに変身した幽斎を見て、獅子丸も忍法獅子変化でライオン丸へと変身した。

『ライオン丸、見参!』

雷雲を操り、雷と風を自在に使って攻撃してくるタツドロドに、ライオン丸は苦戦する。相手は雷を操る怪人だ。刀身に雷が落ちれば感電死は免れないライオン丸は、一度太刀を地面に刺して捨てざるを得なかった。ライオン丸の立っている位置に、タツドロドは落雷させた。

雷鳴と共にドーンと大きな音がして地面から煙が立ち上り、そこにライオン丸の姿は無い。一瞬早くライオン丸は空へ跳んで逃げ、自分の太刀を刺した辺りに着地した。そして、地面から太刀を引き抜くと、タツドロドへ投げつけた。金砂地の太刀の刀身がタツドロドのヤリを弾き飛ばし、太刀とヤリは同時に空へ弾んでから地面へ落下した。

ライオン丸が太刀をつかむのが速いか、それともタツドロドがヤリをつかむのが速いか。先に太刀をつかんだライオン丸が、ヤリをつかもうとしていたタツドロドの脳天を、一瞬早く斬り裂いていた。

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タツドロドは幽斎の姿に戻ると、額から一筋の血を流していた。足元がふらつき、つかんだヤリを手放して仰向けにバタリと倒れると、大爆発した。幽斎の死と共に、今まであった風屋敷もひとかけらも無く消え去っていた。

こうして、果心覚書をめぐる戦いは終わった。ゴースンの正体は意外にも、覚書の中に書かれた人物では無かった。また、虎錠之介が生きていたことを沙織と小助から聞き、獅子丸は喜んだ。

『錠之介、生きていてくれたか・・・』
『獅子丸兄ちゃん。あいつ、どこへ消えちゃったんだろう』

その三人が歩いている姿を、錠之介は少し小高い丘の上から見送っていた。

『獅子丸。これからだぜ、俺とお前の戦いは』
(終わり)


★★★★★★★★★★★★
長くなってしまいました。お読みいただき、ありがとうございました。



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