快傑ライオン丸(30) [ライオン丸・ドラマ4]
今回は、第38話《ゴースンの秘密 怪人タツドロド・前編》を取りあげます。
原作;うしおそうじ
脚本;田村多津夫
企画;うしおそうじ 別所孝治
音楽;小林亜星
殺陣;渡辺高光
監督;中西源四郎
【前回までの話は・・・ 獅子丸たちは、額にキの字の傷痕がある佐吉という男と出会った。息子の弥一、老人の喜蔵と共に山小屋で平和に暮らす佐吉は、自分は木猿ではないと言った。吹き矢を自在に操るもう一人の喜蔵こそが、木猿であった。病を押して怪人と戦った喜蔵は、大きなダメージを受けてしまう。喜蔵を助けたライオン丸は怪人トドカズラを倒したが、佐吉や沙織が見守る中、「幽斎こそがゴースン」という言葉を残して、喜蔵は息を引き取った・・・】
◆(ナレーション;果心覚書に書かれた最後の名、白垣幽斎。彼こそ、ゴースンの秘密を握る最後の男であった。死んだ木猿は、幽斎こそゴースンそのものであると言った。今獅子丸たち三人は、幽斎を探して相模国に急いだ。幽斎は、相模の隠れ谷に住む「風一族」と呼ばれる忍者の首領であるというのだ)
すっかり元気になった小助は、相模国へ入った途端、腹の虫が騒ぎ出した。少し先にある御茶屋の蒸し饅頭にいち早く気付いた小助は、立ち寄って饅頭を食べようと獅子丸にせがむのだった。三人は、御茶屋で休憩をすることにした。そこで沙織は、風一族のことを茶汲み女(女店員)に訊ねてみた。
『隠れ谷という所は、まだ遠いのですか?私達は白垣幽斎という人を訪ねて、そこへ行きたいのだけど・・・』
『あなたたち、風一族の人ですか?』
自分達は風一族とは関わりは無いが、幽斎という人物に聞きたいことがあるのだと獅子丸が告げると、「それなら、止した方がいい」と茶汲み女は近づかないように勧めるのだった。
相模国では過去幾年もの間、郷士を中心とする村人たちと風一族との間に血なまぐさい戦いが続けられていたのである。風一族は、優れた忍者集団であった。それを知っているから、茶汲み女は近づかないように勧めたのだ。
『風一族だ、待て!誰か、そいつを捕まえてくれ!』
偶然にも、逃げる風一族の忍者とそれを追う十人ほどの郷士集団が、獅子丸たちが休んでいる御茶屋の前を通り過ぎようとしていた。腰掛台から立ち上がった獅子丸は、追われている男の前に立ちはだかった。
男は、獅子丸の姿を見て立ち止まったが、すぐに獅子丸に太刀を振りかざして逃げようとした。獅子丸は、太刀を持った男の手を払いのけると、簡単に男を倒してしまうのだった。あとから追ってきた郷士たちに男は捕まり、散々殴られたあと縛られて、近くの大木に吊るされてしまった。
獅子丸たちは御茶屋を出ると、しばらく様子をみるために近くの土手に座った。その場所から、男が吊るされている姿がよく見える。男は気を失っているのか、じっと静かにしていた。男を捕まえた郷士たちは、御茶屋で休憩を取っていた。
『風一族って、相当悪いことをしているのね』
風一族の男が追われていることから、沙織が獅子丸にそう話しかけた。獅子丸は、「うん」とうなずきながらも、状況がよく見えていないため、本当のところが知りたいと思った。するとどこからか、ウグイスの鳴き声が聞こえてきた。
『おかしいわ。こんな季節はずれに・・・』
『静かに。これは、忍者の使う忍び笛だ・・・』
(ナレーション;忍者の歯は、抜くと笛になっている。普通の人にはウグイスの鳴き声と聞かせておいて、忍び仲間には通じ合う言葉なのだ。この風一族の男は、獅子丸を優れた忍者とみて、話かけているのだった)
獅子丸は、ウグイスの鳴き声に隠された男の訴えを、頭の中で理解した。
(タノマレテクレ コノサキノハシのタモトニウメタ コドモノクスリダ カクレダニヘトドケテクレ ワタシノナハミカヅキ タノム)
休憩を終えた郷士たちが縛られてぐったりしている男の元へ行き、連行していく様子を獅子丸たちは見ていた。男は郷士たちに囲まれて歩きながら、獅子丸の方へ振り返った。そして、「よろしく頼みます」と訴えるように頭を下げた。それを見た獅子丸も、小さくうなずいた。獅子丸たちが男を見送っていると、十数メートル歩いた所で男は自爆し、郷士たちは全員吹き飛んでしまった。
獅子丸たちは、言われたとおりに橋のたもとを掘り返してみると、小助がそこで油紙に包まれた何かを見つけた。
『願っても無い機会だから、隠れ谷へ行ってみるよ』
獅子丸は沙織と小助にそう言うと、(男がウグイスの鳴き声で教えてくれたのだろう)ひとりで隠れ谷へ向かって行った。森の中を歩き、滝が流れる岩場を飛び越え、川を渡り、そびえたつ岩山の下まできた。
その岩山には、登れといわんばかりに金属で出来た足場が付いていた。それを登り、岩山の岩肌に沿って細い道を伝うように歩くと、前方が開けて赤い櫓(やぐら)が見えてきた。それは、風一族の物見台に違いなかった。
すると、突然獅子丸の左手首にヒモが巻き付き、引っ張る者がいた。すぐに右手首も同様にヒモが巻き付き、双方から引っ張られて、獅子丸は岩肌を背にして身動きができなくなってしまった。不審者を捕らえたとして、5人の風一族が獅子丸の前に現れた。
『風一族のミカヅキに頼まれて、薬を持って来た。案内しろ!』
何の警告も無く、いきなりひどい扱いを受けた獅子丸は、怒りを抑えながら幽斎の元へ案内するよう請うた。
その頃、沙織と小助は時間を持て余し、じゃんけんで負けた方が勝った方を背負うという遊びをしながら、時間を費やしていた。すると、前方に、虎錠之介が道草に寝転んでいるのが見えた。先に、タイガージョーとライオン丸は滝のある岩場で戦い、ふたりとも滝つぼへ落ちて行った。そしてライオン丸だけが、浮かび上がってきたのだ。タイガージョーも、やはり助かっていたのである。
『小僧、久しぶりだな!』
『この小助さまが、相手をしてくれる。来い!』
『アハハハ。今度会ったら、斬ると言ったはずだぞ。獅子丸はどうした、どこにいる?』
『かくれ・・・』
『何?かくれ?隠れ谷か!しまった!』
沙織が急いで小助の口をふさいだが、遅かった。錠之介は、獅子丸が隠れ谷へ向かったことを知った。錠之介は、なぜ「しまった!」と言ったのか。隠れ谷にいる風一族の統領・幽斎は、やはりゴースンその人なのか?
その頃、獅子丸は5人の忍者に導かれ、白垣幽斎と対面していた。中がどうなっているのかよく分からない暗い部屋にろうそく数本が灯され、その部屋の上座に座った獅子丸に、幽斎は丁重に礼を述べた。
『子供の命に関わる大事な薬。お届けいただいて、かたじけない。私は一族のかしら、白垣幽斎です』
そう言って顔を上げた幽斎は、眼光鋭く総白髪で、年の頃は60位と思しき男であった。
(つづく)
★★★★★★★★★★★★
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原作;うしおそうじ
脚本;田村多津夫
企画;うしおそうじ 別所孝治
音楽;小林亜星
殺陣;渡辺高光
監督;中西源四郎
【前回までの話は・・・ 獅子丸たちは、額にキの字の傷痕がある佐吉という男と出会った。息子の弥一、老人の喜蔵と共に山小屋で平和に暮らす佐吉は、自分は木猿ではないと言った。吹き矢を自在に操るもう一人の喜蔵こそが、木猿であった。病を押して怪人と戦った喜蔵は、大きなダメージを受けてしまう。喜蔵を助けたライオン丸は怪人トドカズラを倒したが、佐吉や沙織が見守る中、「幽斎こそがゴースン」という言葉を残して、喜蔵は息を引き取った・・・】
◆(ナレーション;果心覚書に書かれた最後の名、白垣幽斎。彼こそ、ゴースンの秘密を握る最後の男であった。死んだ木猿は、幽斎こそゴースンそのものであると言った。今獅子丸たち三人は、幽斎を探して相模国に急いだ。幽斎は、相模の隠れ谷に住む「風一族」と呼ばれる忍者の首領であるというのだ)
すっかり元気になった小助は、相模国へ入った途端、腹の虫が騒ぎ出した。少し先にある御茶屋の蒸し饅頭にいち早く気付いた小助は、立ち寄って饅頭を食べようと獅子丸にせがむのだった。三人は、御茶屋で休憩をすることにした。そこで沙織は、風一族のことを茶汲み女(女店員)に訊ねてみた。
『隠れ谷という所は、まだ遠いのですか?私達は白垣幽斎という人を訪ねて、そこへ行きたいのだけど・・・』
『あなたたち、風一族の人ですか?』
自分達は風一族とは関わりは無いが、幽斎という人物に聞きたいことがあるのだと獅子丸が告げると、「それなら、止した方がいい」と茶汲み女は近づかないように勧めるのだった。
相模国では過去幾年もの間、郷士を中心とする村人たちと風一族との間に血なまぐさい戦いが続けられていたのである。風一族は、優れた忍者集団であった。それを知っているから、茶汲み女は近づかないように勧めたのだ。
『風一族だ、待て!誰か、そいつを捕まえてくれ!』
偶然にも、逃げる風一族の忍者とそれを追う十人ほどの郷士集団が、獅子丸たちが休んでいる御茶屋の前を通り過ぎようとしていた。腰掛台から立ち上がった獅子丸は、追われている男の前に立ちはだかった。
男は、獅子丸の姿を見て立ち止まったが、すぐに獅子丸に太刀を振りかざして逃げようとした。獅子丸は、太刀を持った男の手を払いのけると、簡単に男を倒してしまうのだった。あとから追ってきた郷士たちに男は捕まり、散々殴られたあと縛られて、近くの大木に吊るされてしまった。
獅子丸たちは御茶屋を出ると、しばらく様子をみるために近くの土手に座った。その場所から、男が吊るされている姿がよく見える。男は気を失っているのか、じっと静かにしていた。男を捕まえた郷士たちは、御茶屋で休憩を取っていた。
『風一族って、相当悪いことをしているのね』
風一族の男が追われていることから、沙織が獅子丸にそう話しかけた。獅子丸は、「うん」とうなずきながらも、状況がよく見えていないため、本当のところが知りたいと思った。するとどこからか、ウグイスの鳴き声が聞こえてきた。
『おかしいわ。こんな季節はずれに・・・』
『静かに。これは、忍者の使う忍び笛だ・・・』
(ナレーション;忍者の歯は、抜くと笛になっている。普通の人にはウグイスの鳴き声と聞かせておいて、忍び仲間には通じ合う言葉なのだ。この風一族の男は、獅子丸を優れた忍者とみて、話かけているのだった)
獅子丸は、ウグイスの鳴き声に隠された男の訴えを、頭の中で理解した。
(タノマレテクレ コノサキノハシのタモトニウメタ コドモノクスリダ カクレダニヘトドケテクレ ワタシノナハミカヅキ タノム)
休憩を終えた郷士たちが縛られてぐったりしている男の元へ行き、連行していく様子を獅子丸たちは見ていた。男は郷士たちに囲まれて歩きながら、獅子丸の方へ振り返った。そして、「よろしく頼みます」と訴えるように頭を下げた。それを見た獅子丸も、小さくうなずいた。獅子丸たちが男を見送っていると、十数メートル歩いた所で男は自爆し、郷士たちは全員吹き飛んでしまった。
獅子丸たちは、言われたとおりに橋のたもとを掘り返してみると、小助がそこで油紙に包まれた何かを見つけた。
『願っても無い機会だから、隠れ谷へ行ってみるよ』
獅子丸は沙織と小助にそう言うと、(男がウグイスの鳴き声で教えてくれたのだろう)ひとりで隠れ谷へ向かって行った。森の中を歩き、滝が流れる岩場を飛び越え、川を渡り、そびえたつ岩山の下まできた。
その岩山には、登れといわんばかりに金属で出来た足場が付いていた。それを登り、岩山の岩肌に沿って細い道を伝うように歩くと、前方が開けて赤い櫓(やぐら)が見えてきた。それは、風一族の物見台に違いなかった。
すると、突然獅子丸の左手首にヒモが巻き付き、引っ張る者がいた。すぐに右手首も同様にヒモが巻き付き、双方から引っ張られて、獅子丸は岩肌を背にして身動きができなくなってしまった。不審者を捕らえたとして、5人の風一族が獅子丸の前に現れた。
『風一族のミカヅキに頼まれて、薬を持って来た。案内しろ!』
何の警告も無く、いきなりひどい扱いを受けた獅子丸は、怒りを抑えながら幽斎の元へ案内するよう請うた。
その頃、沙織と小助は時間を持て余し、じゃんけんで負けた方が勝った方を背負うという遊びをしながら、時間を費やしていた。すると、前方に、虎錠之介が道草に寝転んでいるのが見えた。先に、タイガージョーとライオン丸は滝のある岩場で戦い、ふたりとも滝つぼへ落ちて行った。そしてライオン丸だけが、浮かび上がってきたのだ。タイガージョーも、やはり助かっていたのである。
『小僧、久しぶりだな!』
『この小助さまが、相手をしてくれる。来い!』
『アハハハ。今度会ったら、斬ると言ったはずだぞ。獅子丸はどうした、どこにいる?』
『かくれ・・・』
『何?かくれ?隠れ谷か!しまった!』
沙織が急いで小助の口をふさいだが、遅かった。錠之介は、獅子丸が隠れ谷へ向かったことを知った。錠之介は、なぜ「しまった!」と言ったのか。隠れ谷にいる風一族の統領・幽斎は、やはりゴースンその人なのか?
その頃、獅子丸は5人の忍者に導かれ、白垣幽斎と対面していた。中がどうなっているのかよく分からない暗い部屋にろうそく数本が灯され、その部屋の上座に座った獅子丸に、幽斎は丁重に礼を述べた。
『子供の命に関わる大事な薬。お届けいただいて、かたじけない。私は一族のかしら、白垣幽斎です』
そう言って顔を上げた幽斎は、眼光鋭く総白髪で、年の頃は60位と思しき男であった。
(つづく)
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