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快傑ライオン丸(29) [ライオン丸・ドラマ3]

今回は、第37話《狙われた男 怪人トドカズラ・後編》を取りあげます。

【前回までの話は・・・ 額にキの字の傷痕を持つ木猿という男を探している獅子丸たちは、森の中で偶然声をかけた男の額にその傷跡を見つける。小助の病を治すため、男の山小屋に泊めてもらえることになった三人は、その晩沙織が額の傷痕について佐吉に訊ねてみた。だが、佐吉は、自分は違うと否定した。翌朝、獅子丸は木猿を探しに黒森山へ出かけて行き、途中で虎錠之介と出会う・・・】

◆『タイガージョー、推参!』
『ライオン丸、見参!』

タイガージョーは、今いる岩場から高く飛び上がると、滝の水が落ち始める崖の上にいた。そして、ライオン丸に向かって叫ぶ。

『行くぞ!タァーッ!』
『タァーッ!』

タイガージョーは、その位置からライオン丸目がけて急降下した。ライオン丸も、自分目がけて落下して来るタイガージョーに向かい、高く跳んだ。ふたりは空中でぶつかり合い、落下しながら滝の水の流れの中に消えた。ふたりは、滝つぼへ落ちて行った。

ふたりの姿が消えてしばらくすると、水の流れの静かな岩場に片手が見えた。滝つぼから上がってきたのは、ライオン丸であった。白いたてがみはズブ濡れになり、力尽きそうになりながら、彼はその強い意志の力で滝つぼから這い上がってきた。

『私は生きている。ゴースンを倒すまでは、絶対に死ねない。タイガージョー、お前も無事でいてくれ』

その頃、喜蔵は弥一を連れて、何も無かったかのように佐吉のいる畑に戻ってきていた。だが、とても険しい表情で、その場を離れて行く喜蔵。弥一を助けた時に飛んで来た矢文には、何が書かれてあったのか。

畑仕事の休憩時間に茶を入れるため、沙織は畑に来ていた。弥一は沙織を見て急に、「おねえちゃん、どこへも行っちゃいやだ!」と、佐吉のいる前でせがむのだった。そして、顔を上げて沙織の顔を見ながら、「おいらのかあちゃんになっちゃいなよ」と、欠けた前歯を見せて笑った。

無理を言う弥一を、佐吉は叱った。でも沙織には、母恋しい弥一の気持ちがよく解かるのだ。母の顔を知らずに自分も育ったことを、沙織は佐吉に話した。

沙織の心は、揺れ動いていた。血なまぐさい戦いなど止めて、沙織もこのまま平穏無事な生活をここでずっと送りたいと思う。しかし、ゴースンを倒すという大目的のために、これまで数々の試練をくぐり抜けてきたのだ。その使命を全うすると心に決めている沙織は、弥一に向かって優しく話かけた。

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『おねえさんも、本当はここにいたい。でもね、私達には大事な仕事があるの。それを果たすまでは、ね・・・』
『うん』

弥一は、大きな声でうなずいてくれた。沙織は、弥一を連れて山小屋へ先に戻ってきた。弥一と一緒に遊んでいると、そこへ獅子丸が黒森山から戻ってきた。手がかりは何も無かったと話す獅子丸は、弥一が布切れのようなものを左手に持っていることに気づいた。その布切れには、このように書かれていた。

木猿 一人で黒駒へ来い。さもなければ小屋へ押し入り、子供ともども叩き殺す 
                                   トドカズラ

「佐吉さんが危ない!」獅子丸の思考回路は瞬時にそう判断した。やはり額にキの字の傷がある佐吉が木猿だったのだと、獅子丸は思った。ところが、獅子丸が助けに向かおうと外へ出た時、玄関先に佐吉が畑仕事から戻って立っていたのである。不安そうな様子が無い佐吉の顔を見て、獅子丸の思考回路はすぐに切り替わった。

『喜蔵さんだ!喜蔵さんが、木猿なんだ!』

小助に天馬ヒカリ丸を呼ばせると、獅子丸は黒駒へ急いだ。その頃すでに、喜蔵はドクロ忍者たちを相手に吹き矢で戦いを始めていた。ジャラモンで修行をした喜蔵こと木猿には、ドクロ忍者など敵ではない。

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だが、高齢の木猿の身体は、病に侵されていた。木猿は、とても高齢とは思えぬ俊敏な身のこなしで衝きや蹴りを繰り出し、ドクロ忍者たちを次々と倒していった。十人ほどいたドクロ忍者は、あっという間に倒れた。ドクロ忍者が全員倒れるのを見計らって、怪人トドカズラが現れた。ムチの名手トドカズラは、病魔に侵された木猿の体力がもういっぱい一杯なことを見越して、出現したのだ。

木猿は、鋭い身のこなしでトドカズラに近づくと、怪人の首筋に吹き筒を衝き付けて、矢を吹こうとした。ところが、病魔がトドカズラに味方した。激しくせき込んだ木猿は、トドカズラに逆襲を許してしまうのだった。ムチで身体を強く殴られ、木猿は大きなダメージを受けてしまう。

そこへ、ヒカリ丸に乗って獅子丸が現れたため、トドカズラは木猿にとどめを刺すことなく、獅子丸に向かって行った。

『来たか!獅子丸』

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馬上の獅子丸に、トドカズラの「忍法カズラ縛り」が襲いかかった。トドカズラの鋭いムチが獅子丸の太刀を持つ右手首に巻き付き、ヒカリ丸の鞍から引きずりおろされてしまった。トドカズラの怪力で地面をズルズルと引っ張られていく獅子丸を見て、木猿は先程の戦いで受けたダメージを必死にこらえながら、岩陰から援護射撃の吹き矢を獅子丸の右手に巻き付いたムチに一発撃ち込んだ。すると、不思議なことに、ムチが枯れ枝になってしまったのだ。

弥一をドクロ忍者から救った時は、ただの木の枝を生きたヘビのごとく動かしたが、今度はムチをただの枯れ枝に変えてしまった。恐るべき妖術である。腕に巻き付いている枯れ枝を簡単に引きちぎると、獅子丸はこの機を逃さず、忍法獅子変化でライオン丸に変身した。

『ライオン丸、見参!』

吹き矢が当たった部分から先が枯れ枝になってしまったムチを見て、トドカズラは驚いた。さらに木猿は、ムチの枯れ枝の部分に等間隔に吹き矢を四本撃ち込んだ。すると、それは等間隔に切れた五本の短い枝となって、地面に落下し転がった。

ムチが使い物にならなくなった怪人は、自分の剣を抜くと、呪文によってムチに変化させると、ふたたびライオン丸に迫っていく。木猿は最後の力を振り絞って、五本の短い枝が落ちている場所まで懸命に這って行く。何をする気なのか、五本の枝を集めると、怪人の頭上目がけて投げ上げたのである。

そして、木猿の吹き矢はそれらを狙って、ヒュッヒュッと数回吹いた。驚いたことに、トドカズラの頭上で五本の枝が爆発をおこし、怪人の頭上に雨のような何かを降らせた。怪人がそれを嫌がって空中へ飛び上がったのをみたライオン丸は、この機を逃がさず、ライオン飛行返しでとどめを刺したのである。

沙織と佐吉、背中に背負った弥一の三人がこの戦場に着いたとき、喜蔵はもう虫の息であった。

『喜蔵!』(佐吉)
『喜蔵さん!』(沙織)

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ライオン丸、沙織、佐吉が見ている前で、仰向けの状態の喜蔵は、あごの辺りの皮膚を両手でめくり上げはじめた。髪の生え際までめくりあげると、額の中央にキの字の傷痕が現れた。

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『ワシが・・・木猿・・・ゴースンの正体は・・・その名を幽斎』

そう言うと、喜蔵は息を引き取った。これで覚書には、白垣幽斎ただ一人が残った。木猿が言った「ゴースンの名は幽斎」という言葉を胸に、獅子丸たちは白垣幽斎の居所を求めて、佐吉の山小屋をあとにした。

弥一が、あとから追ってくる。沙織を母のように慕って、大声で叫んでいる。涙が頬を伝って後ろ髪を引かれる思いの沙織は、振り返る。だが、ゴースンを倒すという大きな使命を考えると、心を鬼にして前へ進むことを選ぶ沙織であった。
(終わり)



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