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ジャンボーグA(21終) [ジャンボーグA・ドラマ]

第50・最終話『トウキョウ最後の日』を取り上げます。
 脚本;山浦弘靖  
 特殊技術;佐川和夫・吉村善之
 音楽;菊池俊輔
 監督;大木 淳
 怪獣デザイン;米谷佳晃


◆クリスマスも終わり、師走の忙しい時期を迎えた東京の夜の街。歳末商戦で賑わっている商店街で買い物をして歩く和也とナオキは、すでにたくさんの箱を抱えていた。ふと和也は、おもちゃをもう一つ買うつもりなのか、目の前のオモチャ屋さんへ入った。

荷物を抱えたナオキは、文句を言いながらも仕方なく店の奥へ入って行く和也の後を追った。しばらくして、店の外が騒がしくなったことに気づいたナオキは、店内から外の様子を見て驚く。外へ出てみると、空がまるで真昼の様に明るい。
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東京は真冬の夜だというのに気温が摂氏40度近くまで上昇し、猛烈な暑さになっていた。村上隊長はハンターQを月へ派遣して、原因調査をするよう指示をだした。しばらくして、月へ向かう熊井と安田から報告が入ってきた。

『月面ポイント239の地点から、強力な光線が地球へ向けて発射されています!』
『それで、地球上の目標は?』
『トウキョウです』
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村上隊長は、ふたりに発光物体の正体を突き止めるよう指示を出した。月面へ到着して飛行中のふたりが見たモノは、巨大な凹面鏡で太陽光線を集めて、それを地球へ送っている装置だった。

その頃東京では、気温が摂氏50度を超して猛烈な暑さとなり、それが原因で自然発火して、町のあちらこちらで火災が発生していた。ちょうど虫眼鏡で太陽光線を集めるように、東京を焼き払おうとするデモンゴーネの作戦であることを、村上隊長は看破した。

本部からの指示により、月面の巨大凹面鏡に攻撃を加えるハンターQ。だが、隠れていたデモンゴーネが現れ、ハンターQは撃墜されてしまう。何とか不時着したものの、飛行不能となったハンターQから連絡を受け、救出に向かわなければならない。
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残されたハンターQ内の空気は、約12時間分しかない。宇宙航行が可能なジェットコンドルに野村隊員を乗せ、村上隊長は月へ向かった。すぐ横でその様子を見ていたナオキも、ジャンボーグAで月面へ行く決心をする。

ジェットコンドルがハンターQの不時着ポイントへ近づこうとした時、隠れていたデモンゴーネが攻撃をしてきた。デモンゴーネの攻撃を巧みにかわすジェットコンドルだが、このままでは熊井と安田の救助が出来ない。

『デモンゴーネは、こっちが引き受けたぜ!』
ナオキはジャンボーグAで月面に降り立ち、デモンゴーネと激突した。ジャンボーグAがデモンゴーネと戦っている間に、ハンターQの救出作戦を行う村上隊長。

ハンターQの操縦席が脱出カプセルとなって上方へ発射されると、それを目がけてジェットコンドルから吸引装置を先端に付けたロープ2本が発射された。二つのカプセルをキャッチしたまま、地球へ向けてジェットコンドルは飛行していく。

月面での戦闘は、ジャンボーグAが有利に展開をしていた。キック、パンチ、飛行機投げを連発して追い詰めると、ベルトのバックルからジャン・サーベルを取り出して斬り捨てようとするジャンボーグA。だが・・・

『ああぁぁぁ・・・』
悲鳴をあげたのは、ジャンボーグAの方だった。デモンゴーネの念力は、巨大凹面鏡装置の向きをジャンボーグAへと向け変えた。
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太陽光線を集めたサンビームをまともに受けたジャンボーグAは、たちまち全身が炎に包まれてしまう。左目奥の操縦室内では操縦機器から火花が散り、火の手が上がり出した。

炎の中に沈んでいくジャンボーグAに、デモンゴーネはとどめの一撃を加えようとしていた。
『(女デモンゴーネの声)ワハハハハ・・・・』

勝ち誇って笑いが止まらないデモンゴーネは、鎮火して白煙に包まれているジャンボーグAを崖っぷちへ追い詰め、深いクレーターの底へ突き落してしまった。

クレーターの底で、もがくジャンボーグA。ナオキ自身ヤケドを負って、意識が朦朧(もうろう)としていた。どうしていいのか解からないナオキは、無意識にクレーターの底から飛び上がると、ありったけの力を振り絞って地球目指して飛行した。

『(女デモンゴーネの声)これで、ジャンボーグAは二度と戦えまい。残るは、ジャンボーグ9だけだ。ハハハハ・・・』
デモンゴーネは満足そうな様子で身体から出す紫煙の中へ、姿を消していった。

その頃東京では、引っ越しをする人々で町中がごった返していた。正午現在、都心の気温は摂氏3度。日中は真冬の気温である。だが、あと数時間もすれば、再び灼熱地獄の夜が来る。どうしたら、デモンゴーネに勝てるのだろうか。

『たとえ勝ち目が無くても、命を賭して戦うのがPAT魂だ。みんな、俺に命をくれ!』
村上隊長の決意に応える3名のPAT魂と共に、村上隊長は全滅を覚悟で、再び月へ向かおうとしていた。

一方、壊れかけたジャンボーグAでなんとか地球へ戻ってきたナオキは、瀕死の重傷を負いながらなんとかPAT基地内のスナックにたどり着いた。医務室で茂子の看病を受けたナオキは、意識を回復した。

死を覚悟で再度月へ出撃するPATのことを、医務室に戻ってきた和也から聞く、ベッドの上のナオキ。だが、ジャンボーグAはもう使えない程に傷つき、ジャンボーグ9は空を飛ぶことができない。

『チキショー!どうしてジャンボーグ9は、空を飛べないんだ。ナインが月へ行けたら、PATは死なずに済むのに・・・』
和也が悔しがって、思いを吐露した。

「ナインさえ、空を飛べたら・・・」、ベッドの上で頭をめぐらすナオキ。どうしたらナインは、空を飛べるのか。ふと思い出したのは、和也とおもちゃ屋へ入った時に、店頭で見たオモチャだった。

メリーゴーランドのように、1本の棒の周りを互いに追いかけるように回って飛ぶロケットのオモチャ。これと同様に、ジャンボーグ9に噴射装置を付ければ、月まで飛べるのではないか!

PAT基地には、観測用の大型宇宙ロケットがある。あのロケットを使えば・・・だが待てよ・・・ナオキは思う。月まで行けても、帰りは自力で地球へ帰って来られないではないか!
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ナオキは、ベッドの上で懸命に頭をめぐらせていた。すぐそばにいる茂子と和也には、ナオキが宙を見つめて何を考えているのかは分らない。

だが、ナオキは決断した。たとえ永久に地球へ帰れなくても、デモンゴーネを倒して兄貴(和也の父)の仇を討てるのなら、喜んで月で死んでやる、そう思った。

意を決したナオキは、すぐ行動に移した。
『ナオキさん、駄目よ、まだ動いたりしちゃ・・・』
『大丈夫だよ、義姉さん!』

トイレへ行くフリをして部屋を出たナオキは、茂子と和也の幸せを祈りながら医務室を後にした。そして、PAT基地のロケット発射センターへ潜入すると、ナオキは打ち上げ担当職員3人に殴りかかった。

ロケットの軌道を月へセットしてから、ジャンカーに飛び乗ったナオキ。観測用宇宙ロケットの発射まで、あと5分しかない!
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ジャンボーグ9は飛んで来るロケットに向かってジャンプすると、ロケットに飛びついてそのまま身体を固定した。空を飛べないジャンボーグ9は、こうして観測用ロケットを使って月へ向かうことに成功した。

ジェットコンドルとファイティングスターに2名ずつ分乗して月へ向かうPATを、あっという間に追い抜いていく観測用ロケット。そのロケットに身体を固定しているジャンボーグ9を、PATの全員が目撃した。

『隊長、あれを!』(野村隊員)
『ジャンボーグ9・・・』(村上隊長)
『さよならPAT、後は任せるぜ・・・さよなら』

東京では夕方が近づき、月が東の空から昇ろうとしていた。今度あの月が昇れば、東京は焼け野原と化してしまうだろう。月面に立つデモンゴーネが、ほくそ笑んで言う。
『(女デモンゴーネの声)あと1時間足らずで、東京は火の海さ・・・』

その頃、月に近づいたロケットからジャンボーグ9を離脱させたナオキは、デモンゴーネのいる月面に降り立っていた。

『デモンゴーネめ!今度こそ、息の根を止めてやる!』
『(女デモンゴーネの声)あっ、ジャンボーグ9・・・ウーム!それはこっちのセリフさ!覚悟をおし!』

デモンゴーネの光線技をうまく避けながら、接近戦に持ち込もうとするナイン。だがその時、デモンゴーネの念力が巨大凹面鏡装置をナインに向けた。強烈な熱を放つサンビームが、ナインに照射された。
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照射から必死に逃げる様に操縦するナオキだが、サンビームはナインを遂に捉えてしまう。だが、「どうせ捨てた命だ」、ナオキはひるむことなく、装置の中央部へ必殺光線クロスショットを撃ち込んだ。
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レンズガラスの割れる音が響き、凹面鏡装置は大爆発をおこしてサンビームは消えた。東京は、これで救われた。女顏から男顏へ変わり、怒りをあらわにするデモンゴーネ。

『(男デモンゴーネの声)ジャンボーグ9よ!お前のおかげで、私の全生命を賭けた作戦は失敗した!もはや私には、お前と刺し違えて死ぬしか道は無い!』

デモンゴーネは作戦失敗の責任を取り、生きてグロース星へ帰ることは出来ず、ナオキとナインもまた、自力で地球へは帰れない。どちらが勝っても、生きて故郷へ帰ることは出来ないのだ。

月世界で、1対1の決戦が行なわれていた。戦いの中で岩場に足を取られ仰向け状態に倒れたナインに、杖に仕込んだ剣を引き抜き、とどめを刺そうとするデモンゴーネ。

周囲は岩場のため、どの方向にも身体を動かすことができない。逃げ場を失ったナインに、デモンゴーネの剣が上から襲いかかろうとしていた。

その時、超低温になる月の夜が作った巨大な氷柱が、ナインの右手に触れた。とっさにナインはその氷柱をつかみ、両手で握り直して前へ突き出すと同時に、体をかがめた。すると、氷柱はデモンゴーネの心臓を貫いて背中へ抜けていた。
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『(男デモンゴーネの声)アアアァァァ、デモーン・・・デー・・・モーン・・・』
背中から口から緑色の血が激しく噴き出し、断末魔の叫び声を上げながら仰向けに倒れるデモンゴーネ。やがて肉体は消え失せ、あとには緑色の血の池だけが残った。

戦いは終わった。砂漠のような月世界から、寂しそうに地球を見上げるナインの姿。遂に兄の仇を討ったナオキだが、もう地球へは帰ることが出来ない。覚悟はしていたものの、その時が来ればやはりさみしい・・・

『オレはもう、二度と地球へは帰れないんだ・・・悲しくなんか、あるもんか』

誰もいない、何も聞こえない暗い月世界で、ナオキは茂子や和也、PATのメンバー達のことを思い出していた。すると突然、大きな振動がナインの体を襲った。

それは、PATのジェットコンドルとファイティングスターから発射された2本の吸引装置付きロープが、ナインの両肩に吸い付いた振動であった。ジャンボーグ9はそのまま引っ張られるようにして、地球まで曳行されていった。
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『ありがとう、PAT・・・』
ナオキは、心からPATチームに感謝した。

こうしてナオキとジャンボーグ9は、再び地球の大地を踏むことが出来た。地球にはふたたび平和が訪れ、人々には笑顔が戻った。PAT基地のスナックでは、正月を祝う隊員達とナオキ、和也、茂子が、楽しそうに餅つきをしている。
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だが、強風が吹き荒れる暗黒のグロース星では、4つの戦闘隊長達の墓前で新たな誓いを立てる声が・・・『我々は、いつか必ず地球を手に入れてみせる、必ず・・・』 (終わり)


★★★★★★★★★★★★
PAT(パット)は地球パトロール隊の通称で、Protective Association Troop の略である。隊長以下4名で構成され、野村せつ子隊員は女性ながら他番組の防衛チームに比べて、非常によく戦闘に参加している。また、この野村隊員と熊井隊員の2名が全50話を通してレギュラー出演した隊員であり、PATは他防衛チームに比べて殉職・異動が多かった。



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